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委員長記者会見要旨(令和3年12月14日

令和3年12月14日(火)14:00~14:17
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道モード合わせて2件ありました。
 航空モードは、11月27日に埼玉県内の妻沼滑空場で発生した、小型機が着陸した際、左主翼の翼端が地面に接触した重大インシデントの1件です。
 鉄道モードは、11月23日に発生した近畿日本鉄道名古屋線を走行中の列車の旅客用扉が開いた重大インシデントの1件です。

 このうち、近畿日本鉄道の重大インシデントについて、当委員会は翌24日に鉄道事故調査官2名を現地に派遣し、扉の構造及び車両の状況、乗務員からの聞き取りなどの調査を行いました。これまでの調査において、当該扉の折戸と駆動装置を接続する部品が損傷していたことが判明しております。今後、検査・保守の実施状況など所要の調査を進め、これまでの調査で得られた情報とともに分析を行い、扉が開いた原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料をご覧ください。

2.令和3年を振り返って    

 さて、本日は、本年最後の定例記者会見となりますので、この1年を振り返ってみたいと思います。初めに、事故等調査報告書の公表について、これは11月までの件数になりますが、本年は、航空モードが23件、鉄道が12件、船舶の重大案件が10件で計45件の事故等調査報告書を公表しました。

 各モードの報告書について紹介させていただきますと、航空モードでは公表した23件のうち、超軽量動力機や滑空機などの事故等が8件でした。こうした個人の運航する小型機の事案についても、一つ一つを丁寧に調査して事故等の原因を明らかにし、同種事故等の防止に有益な情報を提供して再発防止を図ることにより、レジャー航空を安全に楽しめるようにすることも、航空分野の安全に寄与するうえで重要であると考えています。

 鉄道では、2月に、令和元年6月に横浜シーサイドライン新杉田駅構内で発生した鉄道人身障害事故について報告書を公表し、「運転士等が乗務しない自動運転」の車両等の設計及び製造並びに改造にあたっては、システムインテグレーションを実施する設計体制を構築した上で、設計前に危険な事象につながる条件を欠落なく抽出・評価し、設計後等に安全性の検証を十分に行うべきものと考えられるとして、国土交通大臣に勧告と意見を述べました。
 なお、当委員会の調査対象である第3種、第4種踏切道における死亡事故等に関連してですが、先月総務省の行政評価局の「第4種踏切道の安全確保に関する実態調査」に基づく、国土交通省に対する勧告がありました。この勧告は、あくまでも行政評価によるものであり、運輸安全委員会が行う勧告とは目的が異なるものであるため、同列に扱うことはできませんので、その内容等について、コメントする立場にはございません。
 そこで、本日は折角の機会ですので、事故調査を行う私共運輸安全委員会の第3種、第4種踏切道における死亡事故の調査等に関して、改めて一言御説明させて頂きます。
 当委員会では、踏切事故が発生するたびごとに事故調査報告書等を通じ、再発防止の観点から第4種踏切道の廃止や第1種化等について提言を行ってきたところです。本年も3件の踏切事故の調査報告書を公表しております。また、本年2月よりホームページに「踏切事故を起こさないために」と題する項目を設け、調査によって得られた情報とともに、第3種、第4種踏切道の廃止や第1種踏切道への変更の取り組み例を掲載しています。
 当委員会としては、今後とも、踏切事故の防止と事故等が発生した場合における被害の軽減に寄与するため、科学的・客観的な事故調査に基づく事故原因の究明と、再発防止の提言を行うとともに、これらの調査報告書の公表は当然として、先ほどのホームページの充実なども含め、情報発信に努めて参ります。

 船舶では、これも2月に平成31年3月に東京湾の京浜港横浜第5区において発生した外国籍のコンテナ船3隻が関わる衝突事故の報告書を公表し、原因関係者に対して、狭隘な錨地の航行時における事故を防止するために必要な事項について安全勧告を行いました。本件の調査においては、関係者の口述という主観的なエビデンスとともに、関係船舶のAIS(自動船舶識別装置)の記録に基づく定量的な衝突リスク解析・評価手法を用いて原因の究明を行いました。今後とも、より科学的な調査の充実の観点から、定量的解析の積極的な活用も進めていきたいと考えています。
 また、当委員会の8つの地方事務所では、合わせて745件の船舶事故等調査報告書を公表しております。プレジャーボートなどのマリンレジャーに関する事故は継続的に発生しており、地方事務所の調査結果を活用して、事故予防に資する取り組みを続けたいと考えています。

 いずれの事案につきましても、報告書としてまとめた調査結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じて、同種の事故等を防止していただきたいと考えています。

 次に、今年発生し当委員会が調査対象とした事故等についてです。昨日までの件数になりますが、航空は事故が11件、重大インシデントが9件の計20件、鉄道は事故が8件、重大インシデントが1件の計9件、船舶は重大案件としての事故が7件でインシデントはありません。全モード合わせて36件が発生しています。

 航空では、10月7日に神奈川県の秦野市内の草地に小型の回転翼航空機が墜落して、操縦していた方が亡くなる事故が発生しました。また、10月12日には、北海道の美瑛町で動力滑空機が墜落し、乗員2名が亡くなる事故が発生しています。

 鉄道では、10月7日に日暮里・舎人ライナーの舎人公園駅構内において、列車脱線事故が発生しています。この事故は、都内において震度5強が記録された地震の際に、緊急地震速報を感知して非常停止操作が行われ、当該列車が分岐部を走行中に脱線したものです。当委員会としましては、脱線と地震との因果関係や緊急ブレーキ操作の影響等について調査・分析を進めているところです。

 船舶では、5月27日に、愛媛県今治市沖で日本の貨物船白虎とマーシャル諸島船籍のケミカルタンカーULSAN PIONEERが衝突して白虎が沈没し、乗組員2名が亡くなり、船長が行方不明となる事故が発生しました。また、8月にはパナマ籍の貨物船CRIMSON POLARISが青森県八戸港内で乗り揚げ、その後、船体が二つに分断する事故が発生しています。

 運輸安全委員会といたしましては、いずれの事案についても丁寧かつ的確な調査・分析を重ねて原因を明らかにし、同種事故の防止に必要な措置について提言を行うとともに、ひとつひとつの事故等調査から得られた教訓や知見を蓄積し、それを関係者に分かりやすく発信するなどの地道な積み重ねも行い、運輸の安全に寄与してまいりたいと考えています。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

3.質疑応答

(モーリシャス座礁事故関係)

問: モーリシャス沖の座礁事故についてお伺いいたします。現在も撤去作業が予定より大幅に遅れながら継続しておりますが、調査の進捗や報告書の現状ですとか、本年最後の会見というところで、新たに判明したことや今後の目途についてご見解をお願いいたします。
答: 昨年7月にモーリシャス共和国で発生した、ばら積み貨物船WAKASHIOの乗揚事故につきましては、引き続き収集した情報や資料の精査、分析等を進めているところです。7月の会見でご報告しましたとおり、現在、経過報告の公表に向けて作業を進めているところですが、時期について、現時点で申し上げることはできません。経過報告に時間がかかっていることは認識していますが、事故の概要、事故調査の経過及びそれまでに確認された事実情報等について、国土交通大臣に報告するとともに公表するものであります。内容については、十分精査する必要があり、そのため、時間を要することもございますが、早期に公表できるよう努力しているところです。

(博多港で発生した貨物船乗揚事故関係)

問: 11月28日に福岡市の博多港の方でパナマ船籍の貨物船が防波堤に乗り揚げる事故があったのですが、先ほどの新しく調査対象となった事故に入っていないのですが、入っていない理由について教えてください。
答: 運輸安全委員会の門司事務所の方で調査を進めております。

(島田市で発生したヘリコプター墜落事故関係)

問: 静岡県島田市で昨年末に起きたヘリコプターの墜落事故の件で、まもなく発生から1年を迎えるのですが、現状の調査の進捗状況などを教えていただけますでしょうか。
答: 本件は令和2年12月30日、伊勢湾ヘリポートから離陸した小型ヘリコプターが静岡県島田市大代付近の山林に墜落し、機長1名がお亡くなりになった事故です。改めて、この事故でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆様にお見舞い申し上げます。
 本事故については、これまでに、機体の詳細調査、目撃者からの口述聴取、エンジン運転記録装置等の記録の解析、気象データの解析、機体の設計・製造者からの情報収集などを機体の設計・製造国である米国の航空事故調査機関(NTSB)の協力も得ながら行いました。現時点では、これまでの調査で得られた情報をもとに、さらに事実の確認や分析を進めているところです。今後、報告書のとりまとめを行うとともに原因関係者から意見聴取を行う必要があるため、発生から1年以内に事故調査を終えることが困難ですので、経過報告を行いたいと考えています。
問: 完全な報告書の完成というのは、まだ全然先と言いますか来年度中とか、それは分かるのですか。
答: いつとは申し上げられないのですが、早期に調査報告書が公表できるよう努力して参ります。

資料

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