令和3年11月16日(火)14:00~14:13
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、11月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空モードの3件です。
7月5日に長野市で発生した自作航空機がジャンプ飛行(わずかに空中に浮きあがる程度の飛行)中に滑走路から逸脱した重大インシデント(11月5日航空局より通報)、11月3日に北海道石狩郡新篠津村で発生した離陸のため曳航中の滑空機が地面に落下し搭乗者が負傷した事故、11月7日に山口市内で発生した超軽量動力機が離陸直後に落下し搭乗者が負傷した事故の3件です。
なお、10月26日に鉄道の踏切障害事故2件について調査官の派遣をお知らせしましたが、いずれの事案も、その後警察により自殺が原因と判断されたことから、当委員会の調査の対象ではなくなりましたので、調査を終了しております。詳細については広報室にお尋ね下さい。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、地方事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。
当委員会の那覇事務所では、本年6月に台風(島言葉でカジフチ)に対する安全啓発資料を公表したところですが、今回は、冬の北風(島言葉でニシブチ)に対する安全啓発資料を本日公表しました。
夏のイメージの強い沖縄ですが、那覇事務所管轄における月別の船舶事故発生件数をみると、台風シーズンよりも12月に事故が多く発生しています。
また、北風が関与した事故の内、約7割が小型の漁船やプレジャーボートの事故であり、その多くは乗揚や転覆に至っています。
冬の沖縄では、北風が長時間吹き続けることがあり、それにより発達したうねりが、水深の浅いリーフ付近で急激に高い波になるなどして小型船舶の船内に打ち込み、転覆などに至っている事例が多いと考えられます。
このようなことから、特にリーフの近くで釣りやダイビングなどを楽しむ小型船舶の関係者におかれましては、晴れていてもリーフ付近の波の状況に常に注意する必要があることを理解していただき、気象や海象の情報収集を十分に行って出航の可否を判断するなど、事故防止に努めていただきたいと思っております。
本日、私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 日本航空のボーイング777型機のエンジンが損傷した重大インシデントが、発生から間もなく1年経ちますけれども、現在の調査状況を教えてください。
答: 本件は令和2年12月4日、日本航空ボーイング777-200型機が那覇空港を離陸し上昇中に左エンジンが損傷した重大インシデントです。なお、本件で負傷された方はおられませんでした。本重大インシデントについては、これまでに関係者からの口述聴取、破損したエンジンの詳細調査、機体の詳細調査、飛行記録装置等の記録の解析、エンジンの設計・製造会社施設においてファンブレード破断面の詳細調査及び点検要領等の調査などを、機体の設計・製造国である米国の航空事故調査機関(NTSB)の協力も得ながら連携して行いました。
これまでの調査において判明した事実としては、15番ファンブレードは中程から、16番ファンブレードは根元付近から破損していました。16番ファンブレードの破断面には疲労破壊の特徴である貝殻状の模様(ビーチマーク)及び放射状の模様(ラジアルマーク)を認めました。その他、左側エンジン、カウリング、左側水平尾翼、胴体左側等に損傷が認められました。これらの損傷の状況については、令和2年12月28日、航空局に対し情報提供を行っております。
現在は、これまでの調査で得られた情報をもとに、さらに事実の確認や分析を進めているところですが、今後報告書のとりまとめを行い原因関係者からの意見聴取を行うことが必要です。これらのために一定の期間が必要であることから、発生から1年以内に事故調査を終えることは困難ですので、経過報告を行いたいと考えています。
問: 今の質問に関連してなのですが、米国のNTSB自体の調査も今はまだ進行中ということなのですか。
答: そうです。今年2月20日(現地時間)にコロラド州のデンバーで発生した、ユナイテッド航空機のエンジン損傷事案についてはNTSBが現在も調査を進めています。
NTSBは、2018年2月13日(現地時間)に発生した、サンフランシスコからホノルルに向かうユナイテッド航空のファンブレードの破断した事案について報告書を公表しています。
デンバーの事案もファンブレードが破断していますので、当委員会としてもこの2件には注目しており、引き続きNTSBと連携しながらJAL機のインシデントの調査を進めることとしています。