令和2年11月24日(火)14:00~14:10
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、11月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、各モード合わせて4件ありました。
航空モードは、11月3日に北海道北見市で発生した超軽量動力機による重大インシデントの1件です。
鉄道モードは、11月15日にえちぜん鉄道三国芦原線で発生した踏切障害事故及び昨日23日の夜に阪急電鉄神戸本線の踏切で発生した列車が自動車と衝突して脱線した事故の2件です。
船舶モードは、11月19日に香川県坂出市与島沖で発生した旅客船が浸水し沈没した事故の1件です。
このうち、昨夜発生した阪急電鉄の列車脱線事故につきましては、2名の鉄道事故調査官を現地に派遣して調査を開始しております。
また、19日に発生した坂出沖の旅客船事故では、修学旅行中の児童52人を含む60人の乗客の方が被害に遭われました。楽しいはずの修学旅行で、乗っていた船が沈むという事態に遭遇したお子さんたちの衝撃と恐怖は、いかばかりであったかと心配しております。事故に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
当委員会では、事故翌日20日に船舶事故調査官3名を派遣して調査を開始し、当時の状況などについて関係者から聞き取りを行うなどしております。
今後、追加調査を実施するとともに収集した情報の分析を進め、原因を究明して参ります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、小型航空機の安全啓発資料の公表についてご報告します。本日「運輸安全委員会ダイジェスト34号」として、航空事故分析集「VFR機の雲中飛行等に関する事故」を公表しました。お手元の資料2をご覧下さい。
航空機の飛行方式には、計器飛行方式(IFR)と、操縦士が実際に周辺を目視して飛行する、有視界飛行方式(VFR)の2つがあります。
このうち、VFRでは、地表や雲、障害物から距離を保ちながら飛行する必要があるため、航空法の規定により、すべての行程においてVMCと呼ばれる有視界気象状態の維持が必要です。
しかし、過去30年間にVFR機の雲中飛行等に関係する事故が、41件発生しています。
こうした事故は、件数自体は多くありませんが、ひとたび発生すると搭乗者が亡くなる場合が多いこと(41件中、31件が死亡事故)から、今回、その発生状況や事故の背景などを精査し事故防止の注意点などをとりまとめることとしたものです。
分析の結果、雲中飛行等に関する事故では、死亡事故に至る割合が高いことに加え山地での発生が多いこと、ほぼ半数の事故が離陸後比較的早い段階で発生していることなどが分かりました。
また、いずれの事故においても、「飛行の継続」や「引き返し判断の遅れ」などの、操縦士の判断が事故の発生に関与した可能性が指摘されていました。
VFR機が、VMCを維持できない状況で飛行することは禁止されています。しかし、こうした事故の防止においては、法律で禁止されているということだけでなく、VFR機が視覚目標を失うことが如何に危険であり、結果として悲惨な事故が起きていることを多くの方々に知っていただくことが大切だと思っています。
本分析の結果、ほぼ半数の事故が離陸後比較的早い段階で発生していることを踏まえ、これまでにも提言して参りましたとおり、
・最新の気象情報に基づいて、飛行予定のすべての経路でVMCが維持され、飛行が可能と判断した場合のみ出発すること
・気象変化が予想される場合の、代替案の検討や飛行中の継続的な気象情報の収集を行うこと
・予期しない気象状態の変化があった場合の引き返しや代替地への着陸を、速やかに判断すること
が、このような事故を未然に防ぐ方策であることを、広く周知して参りたいと考えております。
本日、私からは、以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 今日発表されたこのダイジェストは、VFR機の雲中飛行に関する事故としては初めて集計された内容になるのでしょうか。
答: 今までもヘリコプターを含め小型機に関する分析は行っていますが、VFR機の雲中飛行等に特定して分析したものは今回が初めてとなります。
問: モーリシャスの油流出の件で、運輸安全委員会が派遣されたと思うのですけれども、その後の調査の進捗状況とか報告書の目途なりございましたら教えてください。
答: 先月の会見でお話しした以上のことはありませんが、初動調査の報告を委員会として受けましたので、今後どのような検討が必要かというところをやっているところです。
問: 検討というのは、関係各国と、ということですか。
答: モーリシャス共和国、パナマ共和国の協力が必要ですので、その辺りは慎重に進めているところです。