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委員長記者会見要旨(令和2年10月27日

令和2年10月27日(火)14:00~14:19
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。

 本日私からは、委員の異動ほか4点について報告させていただきます。
 航空分野の非常勤委員を担当していただきました、宮沢与和氏が9月30日をもって退任され、後任の方として津田宏果氏が10月1日に任命されました。
 津田委員は、現在、JAXAの航空技術部門飛行技術研究ユニットの主任研究開発員として活躍されています。当委員会においては航空部会に所属していただき、特にご専門分野である飛行シミュレーション技術や航空力学などの知見を生かして、航空事故等の分析及び原因究明に貢献していただけるものと期待しております。
 また、海事分野担当の佐藤雄二委員と田村兼吉委員、岡本滿喜子委員についても10月1日に再任されております。

1.事故等調査の進捗状況  

 次に、事故等調査の進捗についてご報告します。前月の定例会見から新たに調査対象になった事故は、航空と鉄道モード合わせて3件ありました。
 航空モードは、10月23日に福江空港で発生したオリエンタルエアブリッジ機の機体損傷事故の1件です。
 鉄道モードは、10月4日にWILLER TRAINSの宮津線で発生した鉄道重大インシデント、10月18日に山口県光市内のJR山陽線で発生した踏切障害事故の2件です。
 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

 また、併せてばら積み貨物船WAKASHIOの乗揚事故についてご報告します。
 モーリシャス共和国に派遣されておりました、佐藤雄二団長率いる調査団は、9月21日にモーリシャスに入国した後、隔離期間を含めて約1か月滞在し、WAKASHIOの船長及び一等航海士を含む乗組員からの口述聴取、船体の調査、モーリシャスの調査機関であるブルーエコノミー省海運局、環境省、沿岸警備隊、サルベージ会社等の関係者からの聞取調査、口述聴取、資料収集等を行い、10月22日に帰国いたしました。現在、2週間の隔離のため自宅にて待機しております。
 モーリシャスでは、同国政府、在モーリシャス日本国大使館等の関係者の皆様の多大なるご協力を得まして、当初予定しておりました調査を実施することができました。この場を借りまして関係の皆様に御礼申し上げます。
 今後、モーリシャス共和国、パナマ共和国と協力しながら、収集した情報や資料を精査、分析するなどして原因を究明し、再発防止策を策定して参りたいと考えております。

2.ITSA(国際運輸安全連合)ウェブ会合   

 2点目として、今年度第2回目の国際運輸安全連合(ITSA)委員長会議についてご報告します。
 ITSA会議は、例年は年1回、米国、フランス、オーストラリア等17の国・地域の事故調査機関の委員長級メンバーが集まって、航空や鉄道、船舶など複数の輸送モードについて、事故調査から得られた様々な教訓や現在の取組課題等の情報を共有し、意見交換を行うことにより、運輸の安全性を向上させることを主な目的として開催されているものです。
 今年度の会議は、当初オーストラリアのシドニーで開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、5月4日に15の国・地域が参加するウェブ会合の形で行われました。

 今回の第2回目の会議は、その時の好評を受けて議長国オーストラリアから提案があったもので、昨日10月26日、14の国・地域が参加してウェブ会合の形で開催されました。
 本会議では、新型コロナに関して、各国の事故調査への影響や対応状況などについて情報交換が行われ、私からは、緊急事態宣言の解除後も引き続き感染予防のために、テレワークの積極的な活用により業務管理や情報共有に努めていることや、3月以降25件の事故等が発生している中、感染予防措置を取りながら調査官はこれら全ての現場調査を行い、部会審議も再開している状況を説明しました。
 更に、各国からの近況報告について、私からは、モーリシャス沖で発生した貨物船WAKASHIOの座礁事故について報告いたしました。
 発表内容としては、我が国の商船隊に起因する海難事故の原因究明と再発防止を図ることを目的として、国際ルール(IMO「事故調査コード」)に従って旗国のパナマと沿岸国のモーリシャスの両国から合意を得た上で調査を開始したこと、また、現地に調査団5名を派遣したこと、当委員会にとって他国の沿岸で発生した事故であって日本船籍以外の船舶事故を調査するのは初めての経験であること等を説明しました。
 その他、来年度の開催国は、引き続きオーストラリア、2022年度の開催国はフィンランドとすること等について話し合いました。

 今年度はウェブによる会合となりましたが、今後もこうした国際会議に積極的に参加し、関係国の調査機関の委員長との情報共有、意見交換等に努め、より密接な協力関係を構築することにより参加各国の運輸の安全の向上を図って参ります。

3.インド鉄道安全能力強化プロジェクト  

 3点目は、鉄道モードの国際協力「インド鉄道安全能力強化プロジェクト」の経過についてのご報告です。
 以前よりお知らせしているこのプロジェクトは、インドからの要請を受けて2018年に国際協力機構(JICA)により立ち上げられたもので、当委員会は当初から鉄道事故調査の分野で参画しております。
 昨年7月には、我が国で鉄道事故調査の研修が開催され、インドの鉄道省や鉄道安全委員会などの幹部10名が参加し、研修参加者は訪日研修の成果として自国において鉄道事故調査のノウハウを定着させるための「アクション・プラン」を作成しております。
 そして本年1月、この「アクション・プラン」に基づく活動状況を確認するため、インドで全体会合が開催され、当委員会から奥村鉄道部会長と鉄道事故調査官を派遣し進捗状況の確認を行って参りました。

 今般10月19日全体会合がウェブ形式で開催され、当委員会から奥村委員と鉄道事故調査官が参加しました。
 会合では、コロナの影響を踏まえた本プロジェクトの事業期間の延長と今後の進め方について話し合いが行われ、当初本年10月までとされていた事業期間が、来年12月まで延長されることとなりました。
 今後は、引き続き「アクション・プラン」の進捗状況をモニタリングしながらノウハウ定着化に向けて課題を抽出し、アドバイスを行っていくこととなりました。

 当委員会としては、本プロジェクトが進展し、インドにおいて鉄道事故調査のノウハウの定着が着実に展開されるよう引き続き支援を行い、インドにおける鉄道の安全性向上に積極的に取り組んで参ります。

4.小型漁船に関する安全啓発資料の公表  

 最後に、小型漁船に関する安全啓発資料の公表についてご報告します。当委員会では、全国8カ所の地方事務所が、管内の特徴的な事象やタイムリーなテーマについて分析し、とりまとめた安全啓発資料を発行しております。
 本日、仙台事務所が中心となって作成した小型漁船に関する安全啓発資料をホームページ上に公表しました。お手元の資料2をご覧下さい。

 漁船からの落水事故は、全国で毎年約40件程度発生しており、残念なことに亡くなられる方や行方不明になる方がおられます。
 そこで、小型の漁船であっても、一度落水すると同乗者がいたとしても船上に復帰するのは難しいことを分かりやすく解説し、縄ばしごの装備を呼びかけています。
 全国の小型漁船に関係する皆様方にホームページをご覧いただき、落水による死亡、行方不明事故の防止に役立てていただけることを期待しております。
 1ページ目の事例は、私が委員長に就任してすぐに発生した事故のもので、ご家族3人が乗り組みの小型漁船からお二人が落水し、残ったお一人では助け上げられなかったという悲しい事故でした。この事故の調査をはじめ仙台事務所が類似の事例を調べたり自ら検証を行うなどして作成したものですので、縄梯子があれば自力で船に登れる可能性があるということを全国的に知っていただきたいと思います。

 本日、私からは、以上です。
 何か質問があればお受けします。

5.質疑応答

(モーリシャス座礁事故関係)

問: 予定の調査はモーリシャス政府の協力もあってできたということだったかと思うのですが、報告書は運輸安全委員会としてまとめられるのか、それともそれぞれの政府として一つの報告書にされるのかということと、まとめる時期とか目途がありましたらお願いします。
答: 報告書のまとめ方等はまだ決まっておらず、これから両政府と調整して参りますが、なるべく早く結論を出したいと思います。

(小型漁船に関する安全啓発資料関係)

問: 今日ご紹介いただいた仙台事務所の例なのですが、全国を調べるとか、そういうことをする予定はないのですか。
答: 地方事務所の安全啓発資料は、各事務所が管内の特徴的な事故等について分析し作成しており、今回、仙台事務所は資料冒頭の事例など過去の同種事故に着目して分析し、この資料をとりまとめました。そうした意味で、全国を調べるのであれば他の視点の分析も検討していくことになると思います。簡易な縄梯子は自分でも安価で作製できますので、1人乗り組みのときは落水しても下から引き下ろせるような工夫は船毎に必要だと思いますが、こうした提案をしていくことは重要だと思っています。当委員会は、小さな漁船の再発防止も非常に重要だと考えており、丁寧に調査を行っていますので、それをちゃんと活かして参りたいと思います。

(踏切障害事故関係)

問: 鉄道安全に尽力したいということだったのでお尋ねしたいのですが、これまでの鉄道事故調査報告書を見ますと、高齢の方の踏切障害事故が多くてですね、結局のところは亡くなられたのでよくわからないと。耳が遠かったり、目が悪かったんじゃないかとか言われていて、その対策が、塗装を塗り直したとか分かり易くしたという至極当然やっていて当然だと思われるようなものであります。毎回このような高齢の方の死亡事故を取り上げないといけないということになりますと、踏切事故における高齢者に対する認識は割と軽いものだなという気がするのですけれども、委員長の受け止めをお願いします。
答: それは、私も非常に心を痛めているところです。今のお尋ねは、ご高齢の方でしたけれども、お子さんの事故も時々ありますので、その辺を例えばお子さんの視点、それからご高齢の方の視点、そういったものをさらに分析するなど、どうすれば安全性が保てるかということを提言していけるようにしたいと思っています。

資料

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