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委員長記者会見要旨(令和2年6月23日

令和2年6月23日(火)14:00~14:14
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、事故等調査の状況について報告いたします。前回3月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、各モード合わせて12件ありました。

 航空モードは、6月9日に佐賀県白石町で発生した超軽量動力機の機体が損傷し、操縦していた方が亡くなった事故などの航空事故が5件、また、4月17日に航空大学校の訓練機が帯広空港に着陸した際、前脚を損傷した事案などの航空重大インシデントが2件です。
 鉄道モードは、6月12日に京成電鉄の青砥駅構内で発生した列車脱線事故など3件です。
 船舶モードは、6月16日に横浜港大さん橋に着岸中の飛鳥Ⅱで火災が発生した事故など2件です。

 事故等調査の進捗状況については、資料をご覧下さい。

2.ITSA(国際運輸安全連合)ウェブ会合について   

 次に、今年度の国際運輸安全連合(ITSA)委員長会議について報告いたします。

 ITSAは、米国、フランス、オーストラリア等17の国・地域の事故調査機関の委員長級をメンバーとし、航空、鉄道や船舶など複数の輸送モードをカバーする国際的な組織です。

 主な活動目的は、毎年、各国機関の代表メンバーが集まる会議において、事故調査から得られた様々な教訓や現在の取組課題等の情報を共有し、意見交換を行うことにより、運輸の安全性を向上させることにあります。

 今年度の委員長会議は、5月3日から5日までオーストラリアのシドニーで開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴い、現地開催は見合わされ、5月4日に15の国・地域が参加してウェブ会合が行われました。

 会合では今般の感染拡大の事故調査への影響や、対応状況などについて情報交換が行われ、私からは当委員会の状況について、緊急事態宣言が発令される中、政府の方針(最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す)に従った勤務体制をとるとともに、テレワークの積極的な活用により業務管理や情報共有に努めていることを説明しました。

 また、部会審議や一部調査の延期を余儀なくされる中、調査の遅れが最小限となるよう、従来よりも広く電話やメールによる情報の収集を行うことなどにより、計画的な事故等調査を実施し、活動を継続している状況を説明しました。

 一方、日本よりも厳しい外出禁止令が発令されている国もあり、現場派遣への強い制限や全職員への在宅勤務が求められる中、情報収集が既に完了している案件への注力や、オンライン会議の活用など、様々な工夫をして活動を継続していることを確認しました。

 このほか、前回会議後の1年間の各国の活動や、次回開催地を、今年開催予定であったオーストラリアとすることなどについて話し合いました。

 当委員会が行う事故調査の多くは、関係国の事故調査機関との連携・協力関係の上で成り立っていることから、そうした機関の委員長同士で顔を合わせる機会は、ウェブ会合であっても大変貴重です。

 今回のウェブ会合が好評でしたので、秋にも再度開催することになっています。オーストラリアで開催される次回会議はもちろん、今後も積極的に参加して情報共有、意見交換等に努め、関係国と密接な協力関係を構築して参ります。

3.勧告に基づき講じられた措置について   

 続きまして、当委員会の勧告に基づき原因関係者により講じられた安全対策について報告いたします。

 当委員会は、平成30年9月4日に発生した油タンカー宝運丸の関西国際空港連絡橋への衝突事故調査報告書において、当該船舶の運航者である鶴見サンマリン株式会社に対して、非常に強い台風時の走錨による事故防止対策を船長に周知徹底すること、及び、異常な気象及び海象により危険を生じるおそれがある場合に、運航中の船舶への安全支援体制を強化するよう勧告しました。

 今般、当該事業者において、当委員会が提供した事故防止対策を船長へ周知徹底したことや、社内の安全支援体制を強化して、昨年、甚大な被害をもたらした台風19号が日本に接近・上陸した際には、当該事業者の運航中の船長と台風情報を共有し、各船舶の避難場所、避難方法について確認を行うなど、必要な安全措置を講じたことの報告がありました。

 当委員会としましては、特に7月から10月にかけて日本に接近、上陸する台風が多くなりますので、引き続き当委員会が提供した「非常に強い台風時の走錨による事故防止対策」を関係者間で活用していただき、同種事故の再発防止に努めていただきたいと考えております。

 先ほどお知らせしたITSAウェブ会合におきましても、この走錨による事故防止対策について紹介しています。厳しい気象条件に対応する運輸の安全確保に関して我々の有する知見を会合に参加した皆さんにお伝えしたところです。

4.「遮断機のない踏切道」における事故調査のフォローアップについて   

 最後に、「遮断機のない踏切道」における事故調査のフォローアップに関して報告いたします。

 当委員会では、踏切の種別上、第3種踏切及び第4種踏切と呼ばれている遮断機のない踏切道における死亡事故39件の調査報告書の分析集を、平成31年2月に「運輸安全委員会ダイジェスト」として発行しました。

 事故調査の対象となったこれらの踏切道について、鉄道局及び関係事業者の方々にご協力をいただき、繰り返して発生する可能性が高く、かつ社会的な関心が高い事項として、その後の安全対策の取り組み状況などのフォローアップを行いました。今般、この結果をとりまとめ、7月1日から3日にかけて開催される日本学術会議主催の安全工学シンポジウム2020において、村田首席鉄道事故調査官がウェブ講演を行う予定になっております。

 このウェブ講演の一般聴講は、インターネットサイトからの事前申し込みになっていますので、私どものフォローアップの内容をお知りになりたい方は、ウェブ講演をご覧いただきたいと思っております。また、個別の取材にもお答えしますので、広報室へお問い合わせ願います。

 本日、私からは、以上です。
 何か質問があればお受けします。

5.質疑応答

(京成電鉄列車脱線事故関係)

問: 京成電鉄の脱線事故について、まだ原因は調査中だと思いますが、こうした事故が無くならないということを考えると、報告書の公表まで待たず、運輸安全委員会として経過報告などを行ったほうが良いと思いますが、どのようにお考えですか。
答: 本事故については、これまでに、8両編成の当該列車の7両目後ろ側の台車全2軸が進行方向右側に脱線していたこと、当該台車の側ばりに亀裂があったことなどを確認しております。当委員会としましては、本事故の調査・分析を進めているところであり、可能な限り早期に報告書をとりまとめ、調査結果を明らかにして参りたいと考えております。

資料

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