平成31年2月26日(火)14:00~14:12
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、2月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、委員の異動について、ご報告します。
まず、私でありますが、平成28年から3年にわたり委員長の職務を務めて参りましたが、3月31日をもって退任となります。
併せて、航空・鉄道・船舶分野の法制関係を担当しております石川敏行委員、航空分野を担当しております田中敬司委員が、私と同様、3月31日をもって退任されます。
新任の方は、新委員長に武田展雄氏、新任の委員として柿嶋美子氏、宮沢与和氏、再任の方は、宮下徹委員、中西美和委員について国会の同意が得られました。
次に、前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントはありませんでしたので、事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
最後に、本日は、運輸安全委員会ダイジェスト第31号として、遮断機のない踏切における事故をテーマとした鉄道事故分析集を発行し、当委員会のホームページで公表しましたので、ご報告します。資料2をご覧ください。
運輸安全委員会では、平成26年4月に、遮断機のない踏切における死亡事故を調査対象に追加してから5年を迎えることを契機に、これまで公表した事故調査報告書34件の分析等を行い、事故防止のための「対策事例」などを取りまとめました。
遮断機のない踏切での事故をなくすためには、踏切の廃止、又は、遮断機等の整備を行うことが必要であり、特に、「踏切から列車の見通しが悪い」、「列車の速度が速い」など、危険性の高い踏切では早急に対策を講じる必要があります。
そのためには、鉄道事業者、道路管理者、地域住民等の関係者が協力して、踏切の廃止又は遮断機等の整備に向けた協議を促進することが必要です。
本ダイジェストでは、踏切の廃止に結びついた具体的な事例を紹介しています。
また、踏切の見通し状況や列車の速度などを把握している鉄道事業者が、積極的に関係者に働きかけて協議を進展させることにより、踏切の廃止や遮断機等の整備の早期実施につなげることも重要だと考えます。
例えば、時速100キロで走行する列車は200m先から7秒ほどで踏切に到達します。
このような高速で列車が走行する路線においても遮断機がない踏切が存在しており、高速道路で信号のない横断歩道を渡るようなものだと感じるところですが、列車はブレーキをかけてから停止するまでの距離が自動車の数倍も必要であることを考えると、高速道路よりも危険だと言えるかと思います。
本日、私からは、以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 今回、第3種・第4種踏切における事故が調査対象となった平成26年からの5年間分をまとめられたとのことですが、そのポイントについて教えてください。
答: これまで、34件の調査報告書を公表しています。調査を続けている中で、第3種・第4種踏切道の安全性を高めなければならないという考えから、どのようにすれば事故を減らせるかについて、関係者に情報提供をして改善を促そうというものです。
問: これまでの事業者の取組状況について、安全対策が十分に取られているという考えですか。また、課題があるとすればどのあたりでしょうか。
答: 遮断機のない第3種・第4種踏切は危険であり、地域住民や道路管理者等と協議を重ねているようですが、ここ数年、第3種・第4種踏切道の数は減っていないのが現状です。また、事故というのは、様々な条件が重なって起きてしまう事故と、もう少し努力すれば防げたような事故の2種類があり、第3種・第4種の踏切事故は、改善により、かなり防げるのではないかと考えます。そのようなものに対して、委員会として積極的に情報を発信していくべきと考えています。
問: 第3種・第4種踏切道数が近年横ばいになっている理由を教えてください。
答: 踏切というのは、地域住民が生活する上で、非常に重要なものです。事業者は廃止を進めたいと考えていますが、地域住民や道路管理者の了解を得なければいけないことになっており、利便性の問題等から廃止協議がなかなか進展していないとのことです。
問: 第4種踏切道数の減少数を見ると廃止が多く、第1種化が少ない状況です。踏切をなくせば、確かに踏切事故はなくなりますが、例えば、踏切ではないところを横断したりする人が増えたり、今後、高齢化社会が進み、車がある人はいいけれども、歩行者は遠回りができなくなるということが想像されます。今後の踏切対策として、単に廃止ではなく、もう少し違う模索の仕方があるように思いますが、如何でしょうか。
答: 勝手踏切と呼ばれるような、踏切のないところを横断する例も多々あると聞いています。単に踏切を廃止するということだけではなく、第1種化を含めた様々な方法で、地域住民と事業者が協議をしなければならないと思います。現状では、その協議がなかなか進展しないことから、協議を促す材料として、このダイジェストを活用していただければと思っています。
問: 第1種化を進めるような施策の強化が必要ということですか。
答: 可能であるならば第1種化が良いかと思います。ただ第1種化をするためには設置コストのほか、メンテナンス費用も必要となることから、なかなか協議が進展しませんが、高速の列車が結構な頻度で通るような踏切については、早急に第1種化を実現していただきたいと思っています。
問: 遮断機・警報機のない踏切について、こういう形で発信されることは、関係者にとっても有意義なことであると思います。これは、運輸安全委員会の委員長として言及しにくいことかもしれませんが、国としてこのように関わっていって欲しいというような見解がありましたらお願いします。
答: 踏切道の安全対策は、基本的に鉄道局の管轄となりますが、運輸安全委員会として、事故調査を通じ、踏切の危険性などを情報発信していくことで、地域住民との協議を促すことが重要だと考えています。
問: 今後の対応は。
答: 今回のダイジェストをベースに調査研究を進め、更に情報提供を行っていきたいと考えています。