平成30年12月18日(火)14:00~14:10
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。
最初に、前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントは、航空と鉄道モード合わせて2件です。
航空モードは、12月9日に妻沼滑空場で発生したグライダー事故1件です。鉄道モードは、12月12日にJR四国予讃線で発生した第4種踏切道の踏切障害事故1件です。
その他の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、本日は、今年最後の定例記者会見ですので、この1年を振り返ってみたいと思います。
始めに、今年は運輸安全委員会が発足してから10年目にあたる節目の年でした。
それを記念して10月5日にヒューマンファクターを主なテーマとするシンポジウムを開催したところ、航空、鉄道、船舶、各分野の事業者や団体、行政機関から300名を超える多くの関係者にご出席をいただきました。
シンポジウムの後に回収したアンケートなどによりますと、当委員会の活動や考え方について理解が進んだというご意見のほか、事故調査に関する意見交換の場をもっと増やしてほしいとのご意見を数多くいただいております。
運輸安全委員会と致しましては、ヒューマンファクターの課題のみならず、運輸の安全技術に関する知見を高めて事故調査における分析力をさらに強化し、且つ安全に関する情報発信力を高めていきたいと考えている次第です。
さて、委員長に就任して3年目のこの1年を振り返りまして、特に「適時適切な情報発信」に努力してきたと思っております。
具体的には、調査途中に判明した運輸の安全のために有益な事実情報として、今年は6件の情報提供を行ったほか、関西国際空港連絡橋の衝突事案など、調査の進捗状況について資料を作成、お配りして説明させていただきました。
また、過去の事故や安全対策を分析しました「運輸安全委員会ダイジェスト」については、定例の発行時期にこだわることなく、調査報告書や意見の公表に合わせて関連するテーマのダイジェストを発行しております。
今後とも報道機関及び運輸に関係する皆様に活用していただけるよう工夫して参りますので、この種の情報提供に関するご要望などがありましたら広報室へお知らせいただければと思います。
次に、事故等調査報告書の公表についてです。
11月までの件数になりますが、本年は、航空が35件、鉄道が15件、船舶の重大案件が11件の計61件の事故等調査報告書を作成し、公表しております。
主な報告書を紹介させていただきますと、航空では、8月に平成29年6月に発生した立山連峰での小型飛行機墜落事故の報告書を公表、併せて、国土交通大臣に対し、自家用小型機の安全性向上策に関する勧告を行いました。
また、10月には、平成29年3月に発生した長野県消防防災ヘリコプター墜落事故の報告書を公表、併せて、国土交通大臣へ航空身体検査証明制度の適正な運用について意見を行っております。
鉄道では、平成29年5月に発生したわたらせ渓谷鐵道の列車脱線事故の報告書を6月に公表するとともに、軌間拡大による列車脱線事故4件の分析から得られた知見をもとに、地域鉄道等における軌間拡大による同種事故防止のために、国土交通大臣へ意見を行いました。
また、同月には、平成29年12月に発生したJR西日本新幹線重大インシデントの台車亀裂に関して経過報告を行うとともに、再発防止に向けた取り組むべき事項を国土交通大臣へ意見として提出しております。
船舶では、2月に平成28年12月に発生した瀬渡船春日丸釣り客死亡事故の報告書を公表、併せて遊漁船業を所管する水産庁長官に対し、適正な業務の執行について意見を行いました。
いずれの事案におきましても、報告書としてまとめた調査結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じて、同種事故の再発を防止していただくことを期待しているところです。
次に、今年発生した事故等についてです。
昨日までの件数になりますが、航空は事故が14件、重大インシデントが12件の計26件、鉄道は事故が10件、重大インシデントが2件の計12件、船舶は重大案件としての事故が17件、インシデントが1件の計18件、各モード合わせて56件発生しました。
航空では、事故・重大インシデントの件数は昨年から減っておりますが、8月には群馬県防災ヘリの墜落事故が発生しており、昨年の長野県消防防災ヘリの墜落事故に続き、多くの死亡者を出す痛ましい事故が発生しております。
鉄道では、今年発生し調査の対象となった事故10件の内、第3種及び第4種踏切道での事故が8件となっております。こうした踏切遮断機が設置されていない踏切道における死亡事故については、調査対象となった平成26年度から38件発生しておりますので、これまでの調査結果を踏まえ、事故の傾向・問題点・防止策の分析を進め、再発防止につなげていきたいと考えております。
船舶では、9月に油タンカー宝運丸が関西国際空港の連絡橋に衝突、また、10月にマルタ船籍の貨物船エルナ・オルデンドルフが山口県の大島大橋に衝突する事故が発生しております。いずれの事故においても、橋梁等に損傷を与え、その後の国民生活に大きな影響が出ております。
運輸安全委員会といたしましては、いずれの事案も早期に報告書を取りまとめるほか、安全上必要な情報は随時提供するなどして再発防止に寄与して参りたいと考えているところです。。
最後に、国際協力に関する業務について、この4月に事務局の組織改編を行い、総務課に「国際渉外室」を新設しております。
国際渉外室の新設は、国産ジェット旅客機MRJの展開に伴って、日本が設計・製造国として、事故調査分野の国際安全基準の議論に積極的に加わっていくことが主な目的ではありますが、鉄道分野についても昨年から準備を進めてきたインドの鉄道安全に関する技術協力が具体的に始まるなど、国際協力の重要性は高まっています。
引き続き国際的な取り組みも強化して参りたいと考えているところです。
以上、簡単ではありますが、この1年を振り返ってみました。
本日、私からは、以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 今年、発生したライオン・エアの旅客機墜落事故で、インドネシア当局は報告書を早々に公表しておりますが、仮に国内で同様の事故が起きた場合、運輸安全委員会として同様のスピードで公表できるものなのでしょうか。
答: 報告書については、できるだけ早く公表できるよう努力しているところです。早期に周知が必要な安全情報などは情報提供を行っており、本年は、航空モードで2件、発生から早い段階で航空局へ情報提供を行い、安全対策が行われているところです。また、経過報告についても適宜行っております。
ライオン・エアの件については、まだ調査中であるかと思いますが、分かっている事実だけでも先に公表しようということで公表されたものと考えております。