平成30年11月27日(火)14:00~14:10
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、11月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、事故調査の進捗状況、インドの鉄道安全に関する国際協力及び船舶事故等情報のデータ提供開始について、ご報告します。
はじめに、事故調査の進捗状況について、ご報告します。
前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントは、各モード合わせて5件ありました。
航空モードは、10月27日に羽田空港で発生したビジネスジェット機の重大インシデント、及び今月3日に茨城県行方市で、また、11日に熊本県阿蘇郡で発生した超軽量動力機の墜落事故2件の合わせて3件です。鉄道モードは、今月9日にJR千歳線新札幌駅構内で発生した重大インシデント1件。船舶モードは、今月8日に倉敷市水島港で発生した貨物船衝突事故の1件です。
次に主な案件の調査状況について、2つご報告します。
1つ目は、10月22日0時27分頃、大畠瀬戸を東進中のマルタ船籍貨物船エルナ・オルデンドルフが、山口県の柳井市と周防大島町を結ぶ大島大橋に衝突した事故についてです。
運輸安全委員会は、船舶事故調査官3名を現地に派遣し、これまでに、船体及び大島大橋の損傷状況の確認、船長、航海士等からの聞き取りなどの調査を行いました。
本事故は、社会的影響の大きな事故ですので、これまでの調査で得られました事実情報について、その内容をご説明します。
お手元の資料1の1ページをご覧ください。本事故当時、本船の船橋には、船長、二等航海士及び甲板手の計3名が配置されていました。また、大島大橋を通過するルートを含む本船の航海計画には、船長及び二等航海士の10月20日付の署名が確認されております。なお、船長は本事故の6日前の10月16日から本船に乗船しております。
本船の一般配置図等から確認できました本事故当時の喫水線からクレーン及びマストの頂きまでの高さは、船首側から順に、No.1及びNo.2のクレーンは34~35m、No.3及びNo.4のクレーンは35~36m、船橋上部にあるマストはアンテナを含めて約42mであったと考えられます。
次に2ページをご覧ください。本事故当時の大島大橋の高さは、橋の図面と当時の潮位から、約33mであったと考えられます。なお、写真のとおり、水道管などが橋桁の下に設置されております。
次に3ページをご覧ください。民間情報会社が受信した船舶自動識別装置(AIS)による本船の位置情報を示しております。今後、解析が必要ですが、おおよそ0時27分頃本船の船首部が大島大橋と重なっていることが確認できます。
次に4ページをご覧ください。本船の損傷状況については、No.1、3、4のクレーンの頂部付近に損傷が認められ、また、マストが折損しておりました。No.1のクレーンの下には、大島大橋から脱落した部品が散乱しておりました。なお、No.2のクレーンには明らかな損傷は認められておりません。
次に5ページをご覧ください。大島大橋の損傷状況については、写真のとおり、橋桁が損傷するとともに、橋桁の下に設置されていた水道管などがなくなっております。
今後、これまでの調査で得られた事実情報に加え、航海情報記録装置(VDR)の解析のほか、安全管理体制など必要な調査を実施して、早急な原因究明に努めて参ります。
2つ目は、今月9日12時40分頃、JR千歳線新札幌駅構内で、信号機が線路内に倒壊し、列車が約15m手前で停止した重大インシデントについてです。
運輸安全委員会では、発生の翌日11月10日から鉄道事故調査官2名を派遣して調査を開始したところです。これまでに、倒壊した信号機の土台を固定していたボルト等の調査により、コンクリートの穴に固定されているべきアンカーがすべて抜けていることなどが確認されたことから、11月14日に国土交通省鉄道局に情報提供を行いました。
運輸安全委員会としましては、引き続き、同種事案の再発防止のため、原因究明を早急に行うよう努めて参ります。
その他の進捗状況については、資料2をご覧ください。
次に、インドの鉄道安全に関する国際協力について、ご説明します。
当委員会では、昨年10月に、奥村鉄道部会長及び鉄道事故調査官をデリーに派遣し、インド鉄道省や鉄道事故調査機関などを対象とする鉄道安全セミナーにおいて、日本の事故調査の現状を基に事故の原因究明に必要な体制や調査手続きを説明するなど、インドの鉄道の安全性向上にむけて協力を行ってきたところです。
このたび、インド政府から要請を受けまして、国際協力機構(JICA)の技術協力として立ち上げられた「鉄道安全能力強化プロジェクト」のスタートとなる会議が、デリーで開催されることになりました。この会議に出席するため、当委員会の奥村鉄道部会長及び鉄道事故調査官を、12月3日から8日までデリーへ派遣します。
当委員会では、これから始まるこの技術協力プロジェクトに積極的に参画して、日本の鉄道事故の調査手法などを提供し、インドの鉄道の安全性向上に貢献して参ります。
最後に、船舶事故等情報のデータ提供について報告します。お手元の資料3をご覧下さい。
運輸安全委員会では、船舶事故等について、これまでホームページの「船舶事故ハザードマップ」に発生場所等を表示し、航行上の参考にしていただいておりましたが、11月28日からこれらの位置情報などを電子データ形式で提供します。
これにより、例えば、小型船舶向けの航行支援スマホアプリなどにおいて、事故等の位置情報などを表示できるようになりますので、私どもが提供している情報を一層安全のために活用していただけるものと考えています。
本日、私からご報告するものは、以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 資料3の船舶事故等情報のデータ提供開始について、事故発生後の状況変化など随時情報が更新されるものなのでしょうか。
答: この情報は、事故名・事故種類・発生日時・発生場所等の報告書に記載された情報だけを提供するもので、状況変化などの更新はいたしません。
問: 昨今、パイロットの飲酒問題が相次いでいます。安全に直接影響を与える事象だと思いますが、委員長はどのように受け止められていますか。
答: 現在、航空局の方で飲酒基準などを検討中と承知しておりますが、酒気帯び状態での操縦は決してあってはならないものと考えております。