運輸安全委員会トップページ > 報道・会見 > 委員長記者会見 > 委員長記者会見要旨(平成30年8月28日)

委員長記者会見要旨(平成30年8月28日)

平成30年8月28日(火)14:00~14:20
国土交通省会見室
中橋和博委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
 ただいまより、8月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、事故調査の進捗状況、意見の提出に基づき講じられた施策及び情報の提供について、ご報告します。

1.事故調査の進捗状況報告

 はじめに、事故調査の進捗状況についてご報告します。
 前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントについて、航空モードでは4件、鉄道モードでは1件、船舶モードでは3件、合わせて8件あり、調査を始めております。

 この内、群馬県防災航空隊所属のヘリコプターが群馬県吾妻郡中之条町の山中に墜落した航空事故の調査状況について、ご報告します。

 最初に、亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族、関係者の方々に心よりお悔やみ申し上げます。

 運輸安全委員会は、事故発生当日の8月10日に事故調査官3名を現地に派遣して、これまでに、墜落現場の確認、機体の損壊状況の確認、関係者である群馬県防災航空隊及び東邦航空の職員並びに目撃者からの聞き取り、同機に搭載されていた動態管理システムのタブレット、搭乗者が撮影していたビデオカメラ、運航及び整備関係書類等の入手などの調査を行っております。

 引き続き、気象データ等の収集、ドローンを使用した墜落現場の詳細な確認、機体回収が行われた後に機体の詳細な調査、タブレットのデータやビデオ映像の解析など必要な調査を実施して早急な原因究明に努めてまいります。

 その他の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.意見に基づき講じられた施策

 次に、意見に基づき講じられた措置について、、関係者から通知が3件ありましたので、ご報告します。

 1件目は、軌間拡大による列車脱線事故の防止についてです。資料2をご覧ください。

 平成28年10月から平成29年5月までの間に発生した5件の軌間拡大による列車脱線事故の調査により得られた知見をもとに、本年6月、国土交通大臣に対して、軌間拡大による列車脱線事故の防止に係る意見を述べたところです。

 当委員会の意見を踏まえ、国土交通省鉄道局では、直ちに、鉄軌道事業者に対し、当委員会の意見などを周知したほか、地域鉄道事業者に対し、自社のまくらぎ等の管理について確認を行い、公的助成制度を活用したコンクリート製まくらぎへの交換を行うなど必要な取組を行うよう指導を行いました。
 さらに、今後も軌間拡大による列車脱線事故の防止に向けた取組が定着するよう、指導を継続することとしています。

 国土交通省において、迅速な対応が行われたことは、同種事故の防止に向けて有意義なことと評価しております。

 今後、地域鉄道事業者において軌間拡大防止に係る必要な取り組みが確実、かつ、速やかに実施されること、及び国土交通省が継続して指導を行っていくことが、重要であると考えております。

 2件目は、東海道新幹線の重大インシデントについてです。資料3をご覧ください。

 平成29年12月に東海道新幹線において発生した西日本旅客鉄道株式会社所属車両の鉄道重大インシデントについて、今年6月に調査の経過報告を行い、国土交通大臣に対して意見を述べたところです。

 国土交通省鉄道局は、直ちに、運輸安全委員会の経過報告及び意見を鉄道事業者、車両メーカー等に周知しました。
 また、「鉄道の輸送トラブルに関する対策のあり方検討会」において、当委員会の意見も踏まえて台車枠の亀裂対策について検討を行い、7月27日に検討会のとりまとめを公表するとともに、7月30日には、とりまとめの内容をもとに、対策の検討及び実施に努めるよう鉄道事業者、車両メーカー等に指導を行いました。

 鉄道の輸送トラブルに関する対策のあり方検討会」において当委員会の意見についても検討が行われ、とりまとめに反映されたことは、評価しております。

 今後、この検討会のとりまとめを踏まえて、国土交通省と鉄道事業者、車両メーカー等が、台車亀裂の防止に向けた具体的な取組を速やかに進めていただきたいと思います。

 なお、本重大インシデントの原因究明に向けた調査は、台車の亀裂の発生、及び運行の経過について、引き続き必要な情報の収集及び分析を進めているところです。
 できるだけ早期に調査報告書を公表できるよう調査の進捗に努めてまいります。

 3件目は、遊漁船の衝突事故の防止についてです。資料4をご覧ください。

 先月24日、当委員会は、水産庁長官に対し、遊漁船の衝突事故の防止に関する意見を述べました。

 遊漁船、つまり釣り船では、船舶同士の衝突事故の割合が大きい状況が続いていることから、過去10年間の衝突事故176件を分析し、その結果から、遊漁船業適正化法を所管する水産庁長官が、都道府県知事に対して、遊漁船の船長等が衝突事故防止のための措置を講じるよう助言するとともに、その措置を確実に実施させるための手段を検討するべきであるとした内容です。

 この意見を受け、水産庁は8月7日付けで、各都道府県に対し、遊漁船業者等に対して見張りの励行や利用者の安全確保などを指導するよう助言を行い、また、遊漁船業務主任者講習の実施者に対して、同講習において意見の内容を周知するよう要請を行った旨の通知がありました。

 遊漁船の衝突事故は、9月から11月にかけて増加する傾向がありますので、水産庁において迅速に施策が講じられたことは、時宜にかなったものと考えております。

 遊漁船では、多くの場合、船長が遊漁船業務主任者を兼ねておりますので、講習会等を通じて事故調査、分析の結果が、船長等に直接周知されることは、事故防止に有効であると考えております。

 都道府県等からは、資料の提供依頼や講習会等への講師の依頼なども受けており、当委員会としてもこうした取組に対して協力してまいりたいと考えております。

3.情報提供

 次に、走錨事故等の防止に向けて、関係機関に情報提供を行いましたので、ご報告します。
 資料5をご覧ください。

 「走錨」とは、錨泊中の船舶が風や波などを受け、流されることです。

 昨年8月に、瀬戸内海で大型貨物船が荒れた天候の中で走錨し、液化ガスばら積船と衝突する事故が発生しました。
 幸い、被害は船体の凹み程度でしたが、重大な事故につながる可能性もありましたので、本件事故の調査を進めるとともに、過去に走錨が関係した事故の分析を行いました。
 本日、その結果を、国土交通省海事局、海上保安庁交通部、船主協会等の関連団体に情報提供しました。

 平成20年10月から先月末までに当委員会が公表した事故等で、普通の内航船に相当する総トン数100トン以上の船舶が走錨した事故等は68隻でした。
 走錨した船舶は、一般的に必要とされている錨の鎖の長さよりも短かったうえ、装備していた2つの錨のうち1つの錨のみを使用する「単錨泊」であったものが、68隻中51隻であることが分かりました。
 また、走錨時に迅速に対応するための当直員配置がなかったと確認された船舶は23隻あり、全てが内航船でした。

 対策としては、気象・海象に応じて、錨の鎖を必要とされている長さまで確実に十分伸ばすとともに、2つの錨を使用するなど適切な錨泊方法をとること及び錨泊中の当直員を配置することが重要であると考えております。
 また、こうした対策を船舶に備え付けられている安全管理マニュアル等に具体的に走錨対策として記載することも必要と考えております。

 これらの情報を、海運会社の安全講習等で周知し、同種事故の再発防止を図っていただきたいと思います。

 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(群馬県防災ヘリコプター墜落事故関係)

問: 群馬県防災ヘリの墜落事故について、これまでに何か分かったことなどがあれば教えていただければと思います。
答: 先程、申しましたとおり、初動調査において各種情報を取得しています。更に今後必要な情報として、ドローンでの正確な現場の確認、あるいは機体が回収された後の調査を行います。

問: 昨年、長野県でも防災ヘリの事故が起きました。2009年には岐阜県、2010年には埼玉県でも事故が起きています。これだけ防災ヘリの事故が相次いで起こっていることについて、運航のあり方や安全対策について、何かお考えがあればお願いします。
答: 長野県の消防防災ヘリの事故については、現在、調査報告書案ができあがり、意見照会のための手続きを進めているところです。一方、群馬県の防災ヘリの事故については、初動調査が終わり、データ分析等を進めているところです。従いまして、現時点では、今回の事故と昨年の事故との間に共通する具体的な課題があったかどうかについては、まだ申し上げられる状況ではありません。なお、長野県では、昨年の事故を踏まえ、ダブルパイロット制の導入や操縦士等隊員の育成計画の作成など消防防災航空の安全確保のための対策に取り組まれていると承知しています。また、消防庁では、「消防防災ヘリコプターの安全性向上・充実強化に関する検討会」を設置し、諸課題の実施について、自治体の消防機関に対して要請されていると承知しています。運輸安全委員会としましても、こうした安全性向上の取組が着実に実施されることで、ヘリコプターの安全が更に確保されていくと考えています。

問: 搭乗者のビデオカメラについて、詳しく教えていただけますか。
答: 隊員のヘルメットに付けられていたウエアラブルタイプのカメラが2台、ハンディタイプのカメラが1台です。現在、映像を解析中です。

問: ビデオカメラの映像について、事故調査を行ううえで、かなり有効な判断ができる可能性のある映像と言えるものなのでしょうか。
答: 機内、機外の状況がある程度それで分かりますので、かなり有効な内容だと考えています。

問: 映像の内容について、具体的に教えていただけますでしょうか。
答: 現在、解析中ですので、内容は控えさせていただきます。

問: 3台とも映像と音声が入っているのという理解でよろしいですか。
答: はい。機体の音などが入っています。今後、解析を進めていきたいと考えています。

資料

このページのトップへ