平成30年7月24日(火)14:02~14:09
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、7月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、事故調査の進捗状況、遊漁船の衝突事故の防止に関する意見及び運輸安全委員会ダイジェスト第29号の発行について、ご報告します。
はじめに、事故調査の進捗状況について、ご報告します。
前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントは6件です。
航空モードでは、5件発生し、そのうち事故が2件、重大インシデントが3件でした。
事故の2件は、7月8日に千葉県柏市で発生したヘリコプターの横転、7月14日に茨城県水戸市で発生した超軽量動力機の墜落です。
重大インシデントの3件は、6月29日に成田空港で発生した大韓航空機の右主脚損傷、7月8日に発生した中華航空機の燃料不足による緊急着陸、7月9日に富山空港で発生した点検中滑走路へのヘリコプターの着陸です。
船舶モードでは、インシデントが1件、7月12日に高松港沖合で発生した「フェリーこんぴら2」の運航不能事案です。
次に、主な案件の調査状況について、ご報告します。
お手元の資料1をご覧ください。
6月29日、ソウル発成田行き大韓航空703便 ボーイング式777-300型が成田国際空港に着陸後、地上走行中に右主脚の損傷により誘導路上に停止し、自力走行ができなくなった重大インシデントが発生しました。
運輸安全委員会は、航空事故調査官4名を現地に派遣し、機体の損傷状況の調査、機長、副操縦士、客室乗務員からの聞き取り、フライト・データ・レコーダー及びコックピット・ボイス・レコーダーの回収、管制官からの聞き取りなどの調査を行いました。
これまでの調査で、右主脚の3本の車軸のうち、後方の車軸が折損していたこと及び折損部の破面の一部が黒く変色していたことが確認されています。
このため、本日、航空局に対してこの情報を提供しています。
今後、折損した右主脚についての詳細な調査、フライト・データ・レコーダー及びコックピット・ボイス・レコーダーの解析や、調査で得られた各種データについて分析を進め、早急な原因究明に努めてまいります。
詳細は後ほど事務方から説明させます。
その他の進捗状況については、資料2をご覧ください。
次に、本日、遊漁船の衝突事故の防止に関する意見を水産庁長官に提出しています。
資料3をご覧ください。
平成20年10月から平成30年3月までに運輸安全委員会が公表しました事故調査報告書において、遊漁船(釣り船)の衝突事故は176件ありました。
これらを分析したところ、事故防止のため講ずべき措置について有益な結果が得られましたので、ご報告します。
主な結果としましては、事故を起こした航行中の遊漁船の多くは、前方をよく見ないで航行し、相手の船に気付いていなかったのに対し、釣りをして漂泊あるいは錨泊中の遊漁船の多くは、接近する相手の船が自分の船に気付いて避けてくれるものと思い、互いに衝突を避けることができていなかったというものです。
このため、当委員会は、遊漁船を利用される釣り客の皆様の安全が確保されるよう、遊漁船業の適正化に関する法律を所管する水産庁長官に対して、遊漁船の船長が適切な見張りを行うなど、安全に運航を行う措置を講ずるよう都道府県知事に助言し、事業者がそれらの措置を確実に実施するための手段を検討していただくことを主な内容として意見を提出しました。
この意見を踏まえた措置が講じられることを期待しております。
また、資料4をご覧ください。意見の提出とともに運輸安全委員会ダイジェスト第29号として「船舶事故分析集 遊漁船の衝突事故防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しています。
本号では、先ほどご説明しました遊漁船の衝突事故176件について、事故の発生状況や要因を整理し、事故当時の航行状態ごとに注意すべき点を取りまとめています。
本号は、安全講習会やメールマガジンなどでも、遊漁船の事業者や乗組員の方々に周知することで、同種事故の再発防止に資することを期待しています。
本日、私からご報告するものは、以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 先月の大韓航空機の重大インシデントの関係について、折損部の破面の一部が黒く変色していたことが分かったということですが、これによって推定されることなど、もう少し詳しく教えていただければと思います。
答: 黒く変色していた部分は、本件重大インシデント以前からひび割れが存在していたという可能性が考えられるところです。今後、詳細な調査を行って確認する必要があります。