平成30年5月29日(火)14:00~14:13
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、5月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、事故調査の進捗状況及びITSA委員長会議の概要についてご報告します。
はじめに、事故調査の進捗状況についてご報告します。
前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントは、各モード合わせて3件です。
1件目は、5月15日に西日本鉄道天神大牟田線において発生した、走行中の列車の扉が開いた重大インシデントについてです。
運輸安全委員会は、5月16、17日の両日、鉄道事故調査官2名を派遣し、列車の乗務員からの聞き取り調査及び車両の扉の調査を実施しております。
今後、得られた情報の分析や車両の動作記録の解析などを進めてまいります。
2件目は、5月4日に阪神港神戸区の神戸六甲アイランド東水路付近において、コンテナ船NYK VENUSとコンテナ船SITC OSAKAが衝突した事故についてです。
NYK VENUSは船首部が、SITC OSAKAは船尾居住区等が損傷しましたが、乗組員に負傷はありませんでした。
運輸安全委員会は、事故発生の通知を受けて、5月8、9日の両日、船舶事故調査官7名を船舶等へ派遣し、船体調査、航海情報記録装置(VDR)データの収集、関係者からの聞き取り調査などを行いました。
今後は、運航マニュアル、ブリッジ・リソース・マネージメント(BRM)の状況等の調査やVDRデータなどの解析も進めてまいります。
3件目は、5月24日、熊本空港発羽田空港行き日本航空632便、ボーイング式767-300型が離陸上昇中、左側第1エンジンが損傷し、熊本空港に引き返した重大インシデントについてです。
運輸安全委員会は、重大インシデント発生の通知を受けて、5月25、26日の両日、航空事故調査官3名を熊本に派遣し、機体及びエンジンの外部、内部の損傷状況の調査、部品落下現場及び被害状況の確認、落下部品の回収、フライト・データ・レコーダー(FDR)及びコックピット・ボイス・レコーダー(CVR)の回収、関係者からの聞き取りなどを行いました。
また、昨日5月28日には乗務員からの聞き取りを行いました。引き続き、エンジンの整備状況等の調査及び管制交信記録、レーダー航跡記録等の入手を行うことにしています。
さらに、米国の航空事故調査機関(NTSB)及びエンジン製造者であるゼネラル・エレクトリック社(GE)の協力も得つつ、エンジンの分解調査を実施することにしています。こうした調査から得られたデータの解析等を実施して、エンジンが損傷した原因について究明してまいります。
その他の進捗状況については、お手元の資料をご覧ください。
次に、先月紹介した国際運輸安全連合(ITSA)の委員長会議に出席しましたので、その概要をご報告します。
今年の委員長会議は、5月13日から16日までアゼルバイジャンのバクーで開催され、米国、フランス、オーストラリアの事故調査機関など、合計12の機関から22名が参加して行われました。
会議では、各国から近況報告のほか、「事故現場派遣時の安全確保」、「職員の採用及び労務管理」、「事故調査における医療情報収集」などをテーマとする議論を行い、各国の事故調査機関が取り組んでいる最近の状況や問題意識を共有し、事故調査の高度化について率直な意見交換を行いました。
当委員会からは、「航空機からの非常脱出に関する安全意識普及の取り組み」など航空、鉄道、船舶の3モードにおける主要な事故調査について説明しております。
また、鉄道では、地震による新幹線脱線事故とその対策についてプレゼンテーションしたところ、イギリスから、イギリス鉄道事故調査機関が最近公表した脱線事故調査報告書において、日本の知見が役に立っているとのコメントがあったほか、ニュージーランドからも、新幹線のような高速鉄道はないものの、同国でも地震による被害が生じうることから、今後、参考にしていきたいとのコメントがありました。
このような国際会議への参加を通じ、海外の関係者とも積極的に情報共有や意見交換を行い、我が国の運輸の安全性向上に取り組むとともに、我が国のノウハウの情報発信に努めてまいります。
本日、私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 先日、熊本で発生した日本航空機のエンジントラブルについて、日本航空の説明では、エンジン内のタービンに何らかの不具合が発生した可能性があるとのことでした。これまでの調査状況を踏まえ、現時点でどのような原因が考えられるのでしょうか。
答: エンジンについては、整備点検用の内視鏡を使用してエンジン内部を調べたところ、複数段のタービンブレードが破損、破断しているのが確認されています。また、タービンブレードの破片が当たって生じたと考えられる点状の損傷が左側の補助翼(エルロン)、フラップ及び水平安定板の表面に確認されています。さらに、エンジンケースに長さ約9センチ、幅約2センチの裂けたような穴が空いているのも確認されています。
エンジン内部の損傷状況については、今後、分解調査を実施して詳しく調べることにしています。
問: 報告書は、1年後を目処に公表する予定でしょうか。
答: できるだけ早期に報告書を公表できるよう進めてまいります。
問: 複数段のタービンブレードが損傷していたということですが、ロープレッシャータービンが複数段、あるいは、ハイプレッシャータービンの方でも何段かの破損があったのでしょうか。
答: 今回のCF6-80エンジン内部のタービンは高圧段が2段、低圧段が5段の計7段で構成されており、内視鏡で調べたところでは、高圧側の2段目のところから低圧側にかけてタービンブレードの破損や破断が確認されています。
どこが起点かということはこれからの調査によります。
問: 日本航空の説明では、このエンジンの飛行時間は7万時間で1993年にメーカーから受領したとのことでしたが、7万時間という飛行時間と今回の損傷とは、何らかの関連性があるとお考えでしょうか。
答: 航空機本体あるいはエンジンについては、定期的に点検しており、必要な部品交換は行っています。したがいまして、7万時間の飛行が直接関係しているとは、今のところは考えていません。今後、そのあたりも調査をしていくところです。
問: 専門家の中には、可能性の一つとして金属疲労を指摘する声もありますが、委員長の見解としてはいかがでしょうか。
答: 一般論として、このようなタービンブレードの破損は、金属疲労によるものもありますけれども、それ以外の理由もありますので、今のところ予断を持って、何が原因かということは差し控えさせていただきます。
問: 昨年6月3日、富山県の北アルプスに小型機が墜落した事故から間もなく1年を迎えます。これまでの調査内容、何か分かったこと、公表時期の見通しを教えて下さい。
答:本事故は、昨年の6月3日に発生したもので、新中央航空が所有する小型飛行機が、富山県立山町の北アルプス立山連峰の山中に墜落し、搭乗していた4名全員が死亡した航空事故です。現在、意見照会の段階まで進んでおり、できるだけ早く調査報告書を公表できるよう進めています。具体的な調査内容については、差し控えさせていただきます。
報告書案については、現在、関係国である米国事故調査機関(NTSB)に意見照会を行うところで、意見があれば、再度、審議を行いますので、もう少し時間がかかる見込みです。
問: 特に意見がない場合、一般的に何ヶ月程度かかるものなのでしょうか。
答: 意見照会への回答は、60日以内にすることとされていますが、公表時期については、今のところ具体的には何とも言えない状況です。