平成29年6月27日(火)14:00~14:25
国土交通省会見室
中橋和博委員長
運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、事故調査の進捗状況、2017年版運輸安全委員会年報及び運輸安全委員会ダイジェストの発行についてご報告いたします。
はじめに、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、説明は省略させていただきますので、詳細は資料1をご覧ください。
次に、最近発生した主な案件について、2件ご報告いたします。
1件目は、6月3日午後2時50分ごろ、新中央航空が所有する小型飛行機が、富山県立山町の北アルプス・立山連峰の山中に墜落し、同機に搭乗していた4名全員が死亡したものです。
運輸安全委員会におきましては、事故発生翌日の4日から6日まで、及び12日から15日にかけて、それぞれ航空事故調査官2名を現地に派遣し、
・墜落現場及び周辺の状況を上空から確認
・機体の損壊状況の確認
・救助関係者からの聞き取り
等の調査を行いました。
今後、機体を回収して調べるとともに、気象状況及び各種データの収集等を行って、得られたデータの解析を実施し、早急な原因究明に努めて参ります。
2件目は、6月17日午前1時30分頃、静岡県下田市沖を航行中の米艦船とフィリピン籍コンテナ船が衝突し、米艦船の乗組員7名が死亡、3名が負傷したものです。
運輸安全委員会では、事故発生当日の17日から、船舶事故調査官3名を派遣し、フィリピン籍コンテナ船について、
・船体の損傷状況の確認
・VDR等各種データの収集 (VDR:航海情報記録装置)
・関係者からの聞き取り
等の調査を行いました。
米国コーストガードからは、コンテナ船に対する事故調査の協力要請があり、その要請に運輸安全委員会として応えられるところを応えて参ります。また、運輸安全委員会としても、米国コーストガードに対して米軍艦船への調査を実施できるよう協力要請をしているところです。
なお、現時点で要請に対する回答は得られておりませんが、引き続き、必要な調査を実施して、早急な原因究明に努めてまいります。
続きまして、本日、「運輸安全委員会年報2017」を公表しております。
お手元に配布しておりますので、ご覧ください。
本年報は、昨年1年間の当委員会の活動状況の全般を簡潔に取りまとめたものです。
2017年版の内容ですが、平成28年に発生した航空、鉄道、船舶の事故等の調査状況や公表した報告書の概要、調査結果に基づき発した勧告などについて紹介しております。
平成28年に新たに調査対象となりました事故、インシデントについて、全体で、事故とインシデントの合計で、前年比48件減の903件となっております。
内訳について申しますと、
航空分野では、前年比13件減となって23件。減った理由としましては、平成27年は小型機とグライダー併せて17件の事故があったのに対し、それが平成28年は8件に減ったためです。
鉄道分野では、前年比9件増の合計25件となっています。主な原因としましては踏切障害事故が、平成27年は4件であったのが、平成28年は15件と大幅に増えたということです。
船舶分野では、前年比44件減の855件となっています。貨物船事故等が38件減ったこと、漁船事故等14件が減ったということです。
一方、平成28年に公表した事故等調査報告書の件数は、合計で938件となっています。
この中で、勧告については、「沖縄県粟国空港第一航空機滑走路逸脱事故」において、第一航空株式会社に対して発出しています。
また、安全勧告については、3件発出しており、具体的には、広島空港で起きました「アシアナ航空機事故」において、韓国国土交通部に対して、「貨物船FUKUKAWA漁船津の峯丸衝突事故」において、船舶管理会社に対して、「貨物船MING GUAN沈没事故」において、船舶管理会社及びカンボジア王国当局に対して、安全勧告を出しています。
以上の内容について、掲載しておりますのでご覧下さい。また、ホームページにも掲載していますので、あわせてご案内申し上げます。
最後に、「運輸安全委員会ダイジェスト第25号」として「船舶事故分析集 プレジャーボートの安全運航のために」を発行しました。
お手元に配付しておりますので、ご覧ください。
本号は、プレジャーボートの事故等が年間200件強発生しており、過去5年間ほぼ横ばいの状況であること、また、これから夏にかけましてマリンレジャーシーズンにあたるということから、今回、この時期に発行することにしました。
本号では、プレジャーボートの事故等のうち、特にユーザーがメンテナンスや発航前の点検を適切に行うことで防止が期待できるような、例えば「機関故障」や「燃料不足」、あるいは「バッテリー過放電」などの事故等について、過去の調査事例の結果から、ユーザーに知っておいていただきたいポイントなどを紹介しております。
本号は、内容を簡潔にまとめたリーフレットとあわせて、ホームページで公表するほか、メールマガジンや関係団体、関係機関などを通じて、広くプレジャーボートユーザーの皆様に周知して参りますので、是非活用していただき、マリンレジャーを安全に楽しんでいただくことを期待しております。
本日、私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: フライトレコーダーが搭載されていないことから、難しい調査になるかと思いますが、現在の進捗状況を教えていただけますか。
答: フライトレコーダーのデータはありませんが、気象データ、管制レーダー記録、管制機関との交信記録、機体の損傷状況、それから関係者の聞き取り等の情報が得られています。これらのデータを基に調査を進めて参ります
問: 機体の回収は、相当困難と思われますが、回収の時期や方法など目処が立っていれば教えていただけますか。
答: 現時点でまだ残雪もあり、天候もあまりよくないようですので、まだ決まっておりません。
問: 機体回収の見通しは、今のところ立っていないとのことですが、現場では、機体が元あった位置からずれて、当時とだいぶ変わってきているとの指摘があります。いつまでに回収をしなければならないかを伺えますか。
答: 出来るだけ早く回収して、機材の調査を実施したいところです。現場での調査官の安全を担保しながら、機体所有会社とも連携して進めていきたいと思っています。
問: 当該機は、トランスポンダを搭載しておりましたので、どういう航跡をたどったか分かるかと思いますが、トランスポンダというのは機体を回収をしなければ、分析することができないものなのでしょうか。
答: トランスポンダは、基本的に地上からのレーダーの電波に応答する装置で、レーダーの航跡は地上で確認ができます。レーダー航跡は管制機関が持っておりますので、データを入手することで確認できます。
問: 現在、レーダー航跡の分析作業に入っていますか。
答: 現在、データを入手中です。
問: 現在、機体の回収が済んで、詳細調査に入っていると思いますが、進捗状況を教えていただけますか。
答: 機体等の調査からは、墜落以前に大きな不具合があったという可能性を示すような状況は、今のところ確認できておりません。これから先さらに調査を詳しく進めていきたいと思っております。
問: 機体の詳細調査といった場合、エンジンを分解して調査をするのでしょうか。また、その予定はありますか。
答: エンジンの分解調査については、必要性があれば設計・製造国と連携して行いますが、今の段階ではまだ、そこまでは至っておりません。機体やエンジンの不具合が原因であるということがある程度分かってくれば、分解調査も必要になってきますが、今の段階ではその様な状況を確認できておりません。
問: 委員会として、墜落につながるような機体の不具合とかは見つかっていないということでよろしいですか。
答: 今のところは、見つかっていないということです。
問: 米国コーストガードからの協力要請について、応えられる範囲での対応とのことですが、具体的にはどのような要請があったのでしょうか。
答: 米国コーストガードからは、コンテナ船に対する事故調査への協力要請がありました。調査はそれぞれが独自で実施しておりますので、それ以外のできる範囲で協力していきたいと思っています。
問: VDRなどコンテナ船データの提供ということですか。
答: 各種データは、運輸安全委員会から提供しているのではなく、コーストガードが直接入手している状況です。運輸安全委員会からは、機器の扱い方等の技術的な支援を行っているところです。
問: 運輸安全委員会から米海軍に対し、どのような形で協力要請が行われているのか教えていただけますか。
答: 米国コーストガードを通じて、米海軍と調整をしている状況です。
問: 過去、米軍が絡んだ事故を見ると、彼らが調査に協力する見通しはないと思いますが、協力がなくても報告書はできるものなのですか。コンテナ船側からの調査である程度できるものなのか教えていただけますか。
答: それにつきましては、まだ調査を始めた段階ですので分かりません。情報の集まり具合によると思います。
問: 運輸安全委員会として、コーストガードを通じて、米海軍に協力要請をしたという認識でよろしいですか。
答: はい。
問: 協力要請はいつしたのか、また、要請内容を教えてください。
答: 6月24日、コーストガードに対し、口頭で協力要請を行いました。要請内容は、乗組員からの事情聴取、各種データの収集、船体状況の確認です。
問: 各種データとは、例えばどんなものですか。
答: 軍艦ですので、具体的にどのような計器があるのか把握できていませんが、航海に関するデータです。
問: 過去の事案について、米海軍と日本の船舶の衝突事案は何件あったかは分かりますか。
答: 平成21年2月に米国駆逐艦ラッセンと個人所有のモーターボートが横須賀沖で衝突した事案があります。これにつきましては、米国の協力が得られなかったために、米駆逐艦の調査を行うことができず、原因究明に至りませんでした。
問: その時の状況について、今回と同様に協力要請をしたけれども、協力は得られなかったという理解でよろしいでしょうか。また、その事案以外に過去に同様な事案というのは把握していますか。
答: 直接米海軍に協力要請をしたけれども、協力が得られなかったということです。現在把握しているのはその1件です。
問: 前回、協力要請が得られず、原因究明に至らなかったということですけれども、今回も協力要請が得られるかどうか、非常に不透明なのですが、協力が得られなかった場合、原因究明というのは非常に難しいとお考えでしょうか。
答: 今回得られた情報をまだ解析しておりませんので、現時点で何とも言えないところです。できる限り究明していきたいと考えています。
問: 協力要請というのはいわゆる日米地位協定に基づく要請になるのでしょうか。それともそれに関係なくコーストガードに要請しているのでしょうか。
答: 日米地位協定は関係ありません。
問: 24日にコーストガードを通じて、海軍側に正式要請をされたとのことですが、海軍側はそれに対してなんと回答してきていますか。
答: 今のところ、何もありません。
問: 米海軍側に関する調査は今のところ全くできていないということですか。
答: その通りです。
問: フィリピン船側の調査は、どこまで進んでいるのか、教えていただけますか。
答: フィリピン船側につきましては、乗組員からの口述聴取、VDR等のデータの収集、損傷状況と船体の状況確認を行っています。
問: 事故の発生時刻について、海上保安庁の方で最初、2時20分頃という話があって、その後、1時半と修正されました。米海軍側は2時20分と言っており、発生時刻に関してずれがありますが、運輸安全委員会としてどのようにお考えですか。
答: AISの航跡の記録等を突き合わせて、1時半頃であろうと認識していますが、現在、調査中です。
問: フィリピン船はイージス艦に衝突する、どれぐらい前に気づいていたのか分かりますか。少なくとも衝突前には、気づいていたのでしょうか。
答: 現在、調査中です。