平成28年1月26日(火)14:00~14:24
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、本年最初の会見でありますので、所感の一端を述べさせて頂きます。
本年も、当委員会の活動が運輸安全の一層の向上につながりますよう、事故等の調査に全力で取り組んでまいりたいと存じます。
昨年発生し、当委員会の調査対象となった事故等の件数は、航空では36件、鉄道では16件、船舶では東京で取り扱う重大な船舶事故が8件でありました。特に、前回の会見でもお話ししましたが、航空の小型飛行機(10件)及び滑空機(8件)の事故等が多い年でありました。
社会的に関心の高い事故も発生しており、それぞれ事故等の調査を進めておりますが、早期の原因究明、再発防止策の提言に努めてまいりたいと存じます。
当委員会は、適確な事故調査により事故及びその被害の原因究明を徹底して行い、勧告や意見の発出、事実情報の提供などの情報発信を通じて必要な施策又は措置の実施を求めることにより、事故の防止及び被害の軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させ、人々の生命と暮らしを守ることを使命としております。
国民にとって真に必要とされる事故調査を実現するため、「適確な事故調査の実施」、「適時適切な情報発信」、「被害者への配慮」、「組織基盤の充実」を行動指針の下取り組んでおりますが、今後とも、運輸の安全性向上のため、組織一丸となって取り組んでまいりますので、ご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。
本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故調査の進捗状況一覧と、安全勧告に基づき講じられた措置として1件についてご報告いたします。
先月の会見で御報告したとおり、調布市で墜落した小型機のエンジン及びプロペラ等については、米国ライカミング社において1月12日及び13日の両日、当初予定していた
・米国の国家運輸安全委員会(NTSB)、
・米国連邦航空局(FAA)、
・エンジン・メーカーのライカミング社(Lycoming)、
・プロペラ・メーカーのハーツェル社(Hartzell)
に加えて、機体メーカーのパイパー社も立会いに参加して、分解調査が実施されました。
本調査には当委員会の調査官も立会い、激しく焼損していた中での作業でしたが、分解した状態を見た範囲において外観上の異常は見受けられなかったとのことですが、現在も引き続き、オイル分析及び一部の焼損部品の金属解析を行っております。
最終的な見解については、立会ったメーカーが報告をまとめ、NTSBを通じて提出される予定ですので、その報告を待ちたいと思います。
引き続き、必要な調査等を実施し、早急な原因究明に努めてまいります。
続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料1をご覧ください。
次に、安全勧告に基づく措置の状況について、ご紹介いたします。
平成21年3月23日に成田国際空港で発生したフェデラルエクスプレスコーポレーション所属マクドネル・ダグラス式MD-11F型機N526FEの火災事故についてでございます。資料2をご覧ください。
本事故の概要ですが、着陸の際にバウンドを繰り返し、左主翼が破断し、機体が炎上しながら左にロールして裏返しとなり、滑走路西側の草地に停止し、機長及び副操縦士の計2名が死亡しました。
本事故の影響として直後にA滑走路は閉鎖され、翌日午前9時10分までの約26時間の閉鎖となり、B滑走路が大型機の離着陸や、長距離便の離陸には使用できないことから、欠航や羽田空港、新千歳空港、中部国際空港などへのダイバートを余儀なくされました。
本事故の調査結果につきましては、平成25年4月26日に調査報告書を公表するとともに、関係国である米国連邦航空局(FAA)に対して安全勧告を行いました。
裏面ですがFAAから、安全勧告に基づく措置の状況について、今般、3回目となる最終通知がありましたので、報告させていただきます。
最下枠に今回の通知がありますが、FAAは、バウンドを表示する視覚表示装置を設計し承認する方向に賛成し、また、ボーイング社は、機体が接地しているか否かを表示するシステムの開発に着手していたということでありましたが、今般、当該装置をFAAが承認したことを通知してきたものであります。
今回の通知によって、最終的な措置がとられたということで、JTSBとしても空の安全に大きな成果があったものと考えております。
本日、私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 調布の事故の関係で、先程、ご説明がありましたが、激しく焼損とはどの程度なのか、外観上は異常が見受けられなかったとはどの範囲のことを示しているのか、また、金属解析というのは具体的にどういったことをやられるのか、この点についてもう少し詳しく説明をして頂きたいと思います。
答: ライカミング社で調べたことですが、エンジン本体、プロペラ本体及びエンジン周辺に取り付けられている装備品について、それらを構成する子部品の範囲にまで分解し、目視により異常な点がないかについて調査を行いました。分解した状態を確認した結果から、焼けたことによる影響はありましたが、部品の歪みや欠損するなどの外観上の異常は見受けられなかったものの、現地においては、引き続き、エンジンから抜き取ったオイルの分析及び一部の焼損部品の金属解析を行っております。金属は熱をおびると変形しますが、これは墜落してからの焼損の影響によるものか、それともその前の段階で焼損の事態が起こりエンジンに影響を与えたのかなどの点について調べているところです。
問: 確認ですが、見た目上は解体した部品に欠損やへこみ歪みはなく、焼損している部品が一部あるので、それがいつ燃えたものなのか調べているということですか。例えば焼損している部品というものは何があるのですか。
答: エンジンの中を構成する部品については、先程もお話ししましたが変形や欠損などはなかったのですが、焼損していたのはエンジンの外側に付いているマグネトやターボチャージャーの一部ですとかの外側はかなり焼けていましたので、そういった焼け残った金属解析を行っています。後はエンジン内部にオイルがあり、オイルの品質についてエンジンの外側が火災にあっていますので、その影響で変質したものなのか、フライト中のエンジンが回っている間に変質したものなのか、場合によってはエンジンオイルの中に何か混ざっているのか、そういったところまで現在、解析を進めているところです。
エンジンの調査については、ライカミング社及びハーツェル社からの調査報告の提出を待って、更に検討していきたいと考えています。これと並行して、国内において、これまで収集してきた調査データ等を基に、メーカー各社等の協力を得て飛行状況の解析を行うことを検討しています。運輸安全委員会として、必要な調査を実施し、早急な原因究明に努めてまいります。どのような解析かと申しますと、一部、映像が残っていたりしますので離陸滑走の状況、飛行の高度、速度及び機体姿勢、飛行機の形態に異常がなかったか、収録した音からの解析などを行っていますし、まだ実施していないものについては、今後、実施していくことを計画しています。
問: 調布の件で、外観上の異常は見受けられなかったとは、どのように受け止めたらいいのですか。もし外観上の異常が仮にあれば事故原因の1つに考えられるかもしれないが、外観上から何ら事故原因にはたどり着けなかったということですか。
答: 今のところそのように考えておりますが、実はそれだけでなく金属調査を行うのは調べて熱の影響がどうであったのか、どこから熱が発生し、どのように燃え広がったのかを分析、解析しなければなりません。それを今やっています。見ただけではどこからどう焼けたのかわからないということです。
問: 外観上異常がないことで何かがわかったということではないのですか。
答: 外観上は異常なものはありませんでした。エンジンに何かがあったのかは、詳しく調べてみないとわかりませんのでこれからの解析によります。
問: エンジンの中は欠損や歪みがなかったということですが、焼けているのにどうやって分けているのですか。焼けているので、歪んでなかったとかいう線は必ずしも引けないのではないですか。
答: そこは金属解析でそういうところを含めて、これから解析するということです。エンジンを見ただけではよく分かりません。エンジンに何か異常があったかどうかは、構造解析、それから部品の金属解析をやってどのように熱が伝わって、どこがどのようになっていったのか、これから分析を行うということです。
問: エンジンメーカーとプロペラメーカーからNTSBをとおして報告がくる目処はどのくらいか。
答: エンジンの調査が終わってから1、2ヶ月はかかるようです。調べた結果、この辺の金属に異常な状態を示しているとか、焼けた過程がよく分からなかったなどの場合は、さらに実験を追加して行う可能性もありますので、目処というのは難しい。
問: エンジンとプロペラに関してですか。
答: はい。
問: 飛行状況の解析はいつごろからどのような目的で行うのですか。
答: それは国内でいろんな資料は掴んでいますので、すでにはじめています。
問: かかる目処は。
答: 飛んでいる映像などご覧になっていると思うが、低空飛行であったようなので、上昇できなかったのはなぜか、というところから始めています。低空を飛んでいる間に何をしようとしていたのかを状況から判断しなければなりません。
問: 飛行状況の解析は通常の航空事故の調査では行われることですか。
答: もちろんです。
問: 乗っていた人から話は聞いているのですか。
答: 同乗して助かった3名からは話を聞いております。
問: いつ頃ですか。
答: 昨年の9月か10月の会見のときにお伝えしたかと記憶しています。
問: 何とおっしゃいましたか。
答: 三者三様でありますが、当時の話では飛行機に詳しい方はいらっしゃらなく、また外は見ていなかったし、操縦操作もあまり見ていなかったというようなことをおっしゃっていたと思います。離陸して気がついたら落ちていたというような内容でお話ししたかと思います。
問: 昨年7月に北海道苫小牧沖でありましたフェリーだいせつの調査の進捗状況を教えて頂きたいのですが、調査が難航しているのか、難航しているとすればどの点が難しいのかの2点についてお願いします。
答: 火災発生の翌日の8月1日から調査官5名を現地苫小牧に派遣して初動調査を開始し、乗組員や乗客から口述聴取、関係資料の収集などを行い、鎮火後の8月12日から、だいせつの船内の状況、積載されていた車両の調査を行いました。だいせつが函館の造船所において修理中、9月、10月にも調査官を函館に派遣するなど、現在も、船内や車両等について追加調査を継続して行っています。また、昨年12月より専門委員に調査に参加いただき、これまでの調査結果、収集した情報などについて、検討及び分析を行っています。今後は、これまでに収集した情報の整理を行っているところでありますが、出火元の特定及び出火原因の究明については、実験の実施など含め、更に検討が必要と考えております。今後、専門委員に調査に参加していただいておりますので、実験の実施、出火元の特定及び出火原因の究明に向けて調査を進めてまいります。12月から専門委員に参加していただき、これまでに収集した船内の状況、積載車両の焼損状況、乗組員及び乗客の口述、その他各種入手資料の確認をしていただいているところです。その確認の上でどのような実験ができるかを専門委員からのアドバイス、知見をいただきながら進めてまいります。どのような実験が出火元の特定に効果的であるのかを検討している段階であり、今このような実験を行いますということは言える段階ではありません。