平成27年11月24日(火)14:00~14:18
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、11月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、11月22日午前10時57分頃、東京ヘリポートを出発し、小諸に向かっていた個人ヘリが、群馬県安中市松井田町に墜落、搭乗者2名が死亡する航空事故が発生しました。
運輸安全委員会としては、23日から航空事故調査官2名を現地に派遣し、調査を開始しており、昨日に続き本日も調査を行っております。
調査状況については、現地において、
・事故機の墜落状況、機体の損壊状況の確認
・関係者からの聞き取り
等を行っています。
引き続き、必要な調査を実施し、早急な原因究明に努めてまいります。
また、先月の会見で、調布飛行場での事故機のエンジンを分解調査するため、エンジン・メーカーである米国ライカミング社に発送したことを報告しましたが、エンジンは現地に11月4日に到着いたしました。
エンジンの分解調査には、当初予定していた米国の国家運輸安全委員会(NTSB)及びライカミング社に加えて、米国連邦航空局(FAA)及びプロペラ・メーカーのハーツェル社(Hartzell)も立会うこととなりました。
これは、本事故調査には、エンジン本体のみならずプロペラについても異常の有無を確認する必要があり、また、エンジンとプロペラを含めた機体全体の安全性についての責任を有する航空当局FAAにも立会ってもらうこととしたためです。
先月の会見では、エンジン分解調査は最速の場合には11月末ぐらいとの見通しをお答え致しましたが、当初の予定より立会いを行う関係者が増え、プロペラの分解調査も併せて行うこととしたことから、現時点では当初の見込みより調査完了には更に時間を要するものと見込んでおります。
続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料をご覧ください。
本日、私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 調布の小型機墜落事故について、現在、エンジン分解調査はどこまで進捗していますか。分かっている範囲でかまいませんので、不具合など見つかっていたら教えてください。それからプロペラ調査ですが、どうして今回調査することになったのですか。
答: エンジンの分解調査ですが、当初予定していた米国の国家運輸安全委員会(NTSB)及びライカミング社に加えて、機体全体の安全性について責任を有する米国連邦航空局(FAA)及びエンジンに取り付けているプロペラを確認するためプロペラ・メーカーであるハーツェル社にも立会ってもらうこととなりました。運輸安全委員会としましては、できる限り早急に分解調査を行うよう関係者に働きかけておりますが、関係者が多いことから調整に時間を要しておりまして、当初の見込みよりは遅くなることが考えられます。当委員会として、いつまでに完了するとの確実なことを申し上げられないことを御理解いただきたいと考えております。
問: 分解調査は始まっていないということですか。
答: もうそろそろ始まると思いますが、具体的にどうなるかはしばらく様子を見てからでないとわかりません。日本からも必要な人員を派遣する予定ですので、そういう派遣の予定も踏まえて今後分解調査はいつになるか、検討が始まります。少し時間がかかります。
問: プロペラはどうして調査されることになったのですか。
答: エンジンにプロペラが付いているわけですから、プロペラとエンジンとの合体としてどの程度の推進力が出ていたのかを調べなければなりません。そういう面からエンジンだけではなくプロペラに欠陥がなかったか、プロペラの回転数に異常はなかったか、プロペラの取り付けは正常であったかなどを含め推力を出すすべての関係を調査します。
問: 調布の件ですが、エンジン分解に時間がかかるということで、なかなか時期については申し上げられないとのことですが、大体の目処というのはないのでしょうか。
答: 当委員会としましては、いつまでに完了するという確実なところはなかなか申し上げられないことをご理解頂きたい。エンジンの調査はアメリカでやってもらっているわけですが、今後、運輸安全委員会としていろいろ調査することがあります。これは前回も申し上げたとおりですが、1つには機体の更なる詳細調査、それから局地的な気象情報の収集と分析を行います。これは気象が影響していたのかどうかです。それから飛行状況の解析可能性の検討を行います。一部映像が残っていたりしますので、そういうものが使えるかどうかです。更にパイパー社との機体関係の技術的な調整などを中心に行っていく予定です。
問: 群馬県のヘリ墜落事故で、FDRのような手がかりがないわけで、同乗者の方もお二人亡くなられていまして、目撃者もずっと見ていた人もおそらくいないでしょうから、手がかりが少ないわけです。昨日、現場の調査官もGPSは確認できなかったとおっしゃっているようですけれど、その中で調査のポイントと言いますか、どのようなお考えで、どういうふうに調査を進めていくのが望ましいのか、教えていただけますか。
答: 現地の調査官の言うとおりでありまして、彼らが掴んだ情報をまとめて何を調査していくかをこれから判断すべきだと思います。今現在申し上げることはありません。
問: どういうところがポイントになるかを教えていただけませんか。
答: それが問題です。それを調べるために調査に行っているわけです。仮説を言うことはできるかもしれませんけれど、ここでは申し上げることはできません。我々も調査の内容については報告を受けていない段階です。少し時間がかかるとご了承ください。
問: 調査は始まったばかりですが、天候について、当時、どのような状況であったと認識されていますか。それがどのように運航に影響があったと考えられますか。
答: 気象についてはいろんなことを言われていますが、確実な気象情報、近くの気象台や測候所などから気象データを調査官が集めることとしています。まだ総合的に分析を行うまでは気象がどうだったのか、原因に影響したのかなど確定的なことは申し上げられません。
問: 事故が起きたばかりですが、一般論でもよいので運輸安全委員会として手がかりが少ない中でどのように調査を進めていくか調査のポイントを説明頂けないでしょうか。
答: 大変、難しいところです。先程、質問があった気象の点があります。それからどういう飛行をしていたのか誰が掴んでいるのか、ヘリコプター自体に欠陥がなかったのかも調べなければいけません。それから気象というのは風も含めてですが、どのような状況にあったのか、きちんと把握しなければなりません。それから操縦の状況についても、操縦者の経歴を含めて調べなくてはなりません。いろんな角度から調べる要点がありますので、そこを絞ってと言われるとなかなか難しい。かえって絞ると危ないこともありますので。我々の調査というものは全面的に調べて、それで要点を洗い出していくことが必要なやりかたです。これはと絞ってやることはなかなかできません。偏見があると大体、間違えますので、そうしないように努力しています。ロビンソンのヘリは2枚羽根のシングルローターですが、そういう点で操縦性等に問題がなかったのかどうか、そういう点を含めて調べないといけません。大変、多岐に渡ると思います。搭乗者が亡くなられていますので、レスポンスがなかなか聞けないと思います。搭乗者が日頃、どのようなところで飛んでいたのか、それで仲間がおられたのか、その方たちの判断はどうかということも調べなくてはいけません。少し時間がかかるということはご理解願いたい。
問: MRJが初飛行に成功しましたが、今後型式証明を取って営業飛行に向けて試験調査を行いますが、万が一事故が起きた場合、運輸安全委員会が調査を行うと思いますが、そんな中で人員の増員など検討されていますか。MRJが今後営業飛行に入っていくにつれて、運輸安全委員会の体制への影響とかありますか。
答: MRJについてはこの前初飛行に成功し、試験飛行は順調に続けていると思われますが、今後アメリカへいって試験飛行を行うようです。我々としては故障など期待していませんが、何が起こるかわかりませんので、ニュースには注目しています。今後については、引き続き情報を得ながら必要があれば、我々もいつでも飛んで行ける体制は作っておかなければいけないと考えていますが、今後の問題です。MRJの試験飛行については、しばらくは国内で行うと聞いておりますが、航空機ですので何かあれば、事故調査にその場所へ行くことになるかと思います。試験飛行の回数が増えてくる時期が来れば、それを見込んだ体制作りを我々もいろんな方面で考えております。MRJの基本的な概要についても、事故調査官のトレーニング等を始めているところですので、順次、対応できる体制を作っていこうと思っております。