平成27年6月23日(火)14:00~14:40
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故調査の進捗状況一覧と、安全勧告に基づき講じられた措置として2件、また、船舶事故ハザードマップ・モバイル版の運用開始についてご報告いたします。
6月3日(水)13時24分ごろ、那覇空港において、全日本空輸機が離陸滑走中、管制官の指示を受けずに航空自衛隊機が前方を横切ったため離陸を中止しました。その際、進入中の日本トランスオーシャン航空機に管制官が着陸のやり直しを指示しましたが、当該機は全日本空輸機が同滑走路を離脱する前に着陸したという、重大インシデントが発生しました。
現在、現地における調査等を踏まえて、
・ANA機、JTA機のFDR及びCVRの記録
・自衛隊機には両レコーダーは未搭載
・各航空機の機長及び管制官等からの口述
・各航空機と管制官との交信内容
等の解析作業を行っております。
本件については、詳細な調査が必要な事案であると考え、慎重に解析作業を進めておりますが、現段階において、その調査内容を公表することは差し控えさせていただきたいと思います。
引き続き、運輸安全委員会において、必要な調査を実施し、早期な原因究明に努めてまいります。
続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させていただきますので、詳細は、資料1をご覧下さい。
次に、安全勧告に基づく措置の状況について、2件ご紹介いたします。
1件目ですが、平成25年1月16日に発生した全日本空輸所属ボーイング式787-8型機JA804Aのメインバッテリーが損傷した重大インシデントについてでございます。資料2をご覧ください。
本重大インシデントは、東京国際空港に向けて山口宇部空港を離陸し、四国上空を上昇中、メインバッテリーの不具合を示す計器表示とともに、操縦室内で異臭が発生したため、目的地を高松空港に変更し、高松空港に着陸したというものです。
本重大インシデントの調査結果につきましては、平成26年9月25日に調査報告書を公表するとともに、関係国である米国連邦航空局(FAA)に対して安全勧告を行いました。
今般、FAAから、安全勧告に基づく措置の状況について、通知を受けました。
回答には、技術基準の改訂や内部短絡の発生メカニズムの研究継続などが示されています。
委員会としては、安全勧告の趣旨も踏まえて787の更なる安全性・信頼性向上を図ることを期待しています。
2件目ですが、平成23年9月6日に発生したエアーニッポン所属ボーイング式737-700型機JA16ANの機体が異常な姿勢になり急降下した重大インシデントについてでございます。資料3をご覧ください。
本重大インシデントは、那覇空港から東京国際空港へ向けて飛行中、機長が操縦室を退室した後、機長を再入室させようとした際、副操縦士がドアロックセレクターを操作するつもりで誤ってラダートリムコントロールを操作したことにより、機体が異常な姿勢になり急降下したというものです。
本重大インシデントの調査結果につきましては、平成26年9月25日に調査報告書を公表するとともに、関係国である米国連邦航空局(FAA)に対して安全勧告を行いました。
今般、FAAから、安全勧告に基づく措置の状況について、通知を受けました。
委員会としては、スイッチの類似性を低減又は解消する必要性の検討がされており、FAAの回答は安全勧告に対し適切に措置されたものだと考えています。
FAAの回答に関する技術的なご質問については、後ほど事務局にお問い合わせ下さい。
次に資料4をご覧ください。
当委員会では、平成25年5月にインターネットサービスとして地図上から船舶事故情報等を検索することができる「船舶事故ハザードマップ」を公開し、昨年4月から諸外国の船舶事故調査機関が公表した調査報告書を世界地図上から検索できる「グローバル版」を公開したところです。
近年、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末によるインターネット利用者が増えていることから、本日、「モバイル版」を公開しましたので、お知らせします。
これは、利用者からモバイル端末で使いやすいようにしてほしいとの要望を受けたもので、タッチパネルに対応して表示ボタンやレイアウトを変更し、操作性を向上させました。また、モバイル端末のGPS機能を利用して、現在地付近の情報を表示することができるようになっています。
従来のパソコン版と同じ内容の事故情報等を閲覧できますので、事故の発生状況等の情報を確認していただき、安全運航に役立てていただきたいと思います。
本日、私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 那覇空港での離着陸のトラブルに関して、途中経過は公表できないという話ですけれど、現時点で分かっている3機の飛行機の距離ですとか、ボイスレコーダーの内容以外のものについて教えていただけるのであればお願いします。
答: 運輸安全委員会においては、本重大インシデントの調査に関して自衛隊機の関与も含め、現在、詳細な調査を進めているところです。飛行機の位置関係についてですが、飛行機はかなりスピードが速いので正確な時間等を解析したうえで位置関係を明らかにする必要がありますので、まだ公表できる段階ではありませんのでご了承ください。
問: ボイスレコーダーの解析が終わっていなくても、飛行記録の部分は途中で公表して頂けるということでしょうか。
答: 確定したものが出ればですね。時間関係の取り扱いは非常に難しく、さきほど申し上げましたとおり、自衛隊機の方はDFDRなど、確定情報をつかむ時間を含んだ記録がないので、映像記録などを使いながらどのように時間関係を確定していくか非常に苦労しています。
問: 今年で1985年に発生した日航機墜落事故から30年を迎えます。当時、アメリカ側から日本における事故調査と刑事責任の追及というものが一体化しているとみなされたという評価もあり、日本の事故調の委員が直接ボーイング社の整備担当者から詳細な話を聞くことができなかったという問題がありました。この事故調査と刑事責任追及との分離というのは、現在もしばし議論されている問題であると思いますが、現状で事故調査が刑事責任の追及のための捜査からの独立について、委員長の考えを聞かせてください。
答: 1974年ごろ大事故がいくつか発生しており、そのころからおっしゃるような問題はあったのですが、刑事責任の追及ではなく、原因を追究し再発防止をはかるために設置されたのが事故調査委員会であります。もちろん死亡者が出た場合警察当局から報告書を求められることはありますので、公表しているものを提出していますけれど、我々は刑事事件を扱うわけではなく再発防止のために何をすべきかが大事で、それをどう公表していくかが我々の念願でありましたので、現在もそのように進んでいると思っております。
問: 報告書がしばしば刑事裁判の証拠に採用されたりですとか、捜査機関が報告書を利用することについて、いかがお考えですか。
答: できるだけ分離をしてもらうといいと思いますが、なかなか難しいところです。警察に航空機事故関係を扱う航空機のスペシャリストが少ない、そういう面から我々の報告書を使うことはあるかもしれませんが、刑事事件に使うということではなくて、どうしてそれが起きたのかということです。それは報告書に記載しているわけですが、その使い方については、我々から何とも言いようがない。前回も説明しましたけれど、警察関係と国土交通省の間で約束ができていますので、一応報告書の提出ということはさせていただいていますけれど、今後、再発防止という点から、我々の調査というのは、捜査ではなく調査でありますから、その観点のものと思っておりますので、いわゆる捜査に役立たせるという意味では我々は消極的でありますし、そういう意味では積極的ではないことをご理解いただきたい。
問: できるだけ使われない方がいいというのは、きっぱりと決して使わないで欲しいということではないのでしょうか。
答: 難しいところです。現在も警察当局との間で話し合いは続いていますので今後おっしゃるような方向に進められればと希望しています。
問: 平成25年1月に発生した全日空の高松空港での緊急着陸事案に関連して、FAAからの回答を大まかに3つに分けて示して頂きましたが、この中でこれまで公表されていなかった、もしくは新しい事項というものはありますか。
答: 調査結果に対する回答なので新しい事項はありません。感想を申し上げれば、FAAは技術基準の見直しに関する安全勧告に対しまして、実運用を適切に模擬されるようにリチウムイオンバッテリーの技術基準を改訂しました。また、航空機開発時の安全性評価に関する安全勧告について、再設計されたバッテリーシステムの認証が新たな安全性評価に基づき行われており、全ての787型機が再設計されたバッテリーシステムに改修されております。さらに、ボーイング社においても、リチウムイオンバッテリーの品質及び信頼性向上に関する安全勧告に対して、内部短絡の発生メカニズムの研究を継続しています。委員会としては、これらの対応により安全勧告の趣旨も踏まえて更なる安全性・信頼性向上が図られることを期待しています。今後、また同じようなことは起こらないと確信しています。
問: 現在も、システムというかバッテリーのセルの設計の見直しにおいて、内部短絡が発生するメカニズムの調査が続いているとか、根本的な原因の調査は続いていますが、その中で委員長が二度とこのような事案は起きないと確信を持つに至った理由というのは、必要な対策はすべてとられたからということでしょうか。
答: 再設計されて、1つのセルに異常がおきても全体に影響を及ぼさない設計になっているので何か起こっても重大な事態にはならないという意味です。
問: FAAからの回答ですが、B787とB737と、それぞれ回答期限からどれ位遅れたのか。大幅に遅れていると思うのですが。
答: 大幅に遅れています。これについては、事務局よりあとで回答したいと思います。
問: 遅れたことに対して、これこれの調査が大変だったとか、何か理由の説明はありましたか。
答: それはありませんでした。
問: けっこう重要な案件ですし、787は難しい案件であったと思うのですが、遅れた理由の説明がないのはどうなんでしょうか。
答: 我々も何回もまだ来ていませんと申し上げていたのですが、やっときたということです。FAAの方はきちんと我々の問に対する回答を作っていたということで時間がかかった理由だと思います。国際的なやり方は、国際民間航空条約の第13附属書に基づいて、報告書の原案をつくり相手国に送って相手国の意見を聞いて最終報告書にまとめるわけです。かつては勧告を出したときに勧告に対する回答に期限はなかったのですが、期限を設けないと出しっぱなしになってしまうので、90日を目処に回答をしてもらうか、遅れるなら理由を教えてくれということが決まっていますが、現実的に安全対策の完了までは年単位になることがほとんどです。B787のバッテリー問題はボストンでも起こっていまして、NTSBが11月に18項目くらいの勧告を行っていますが、現在1つもクローズされていません。大型航空機の勧告に対する措置はだいたい年単位でかかるのが普通ですので、今回FAAとしてもこういうプロセスでこういう考えで進んでいて、B787のリチウムイオンバッテリーの改善は終わったわけではなく今後も継続していくという考え方を示しています。バッテリー問題はアメリカと日本で起きていて、そのあと成田でも起こっているのですけれど、これは品質改善とか相当時間がかかるもので、我々の考えは事故調査の経過や報告書でアメリカ側に示しているのですが、FAAとしては完全にこの問題を解決するまでは相当時間がかかるけれど、NTSBの勧告も踏まえ一応こういう方向で改善を図っていくという回答を得たのが今回の回答であります。MD11の安全勧告のときも時間がかかっていますし、そのときもFAAから回答を得ましたが本当の改善策ができるまでは数年単位でかかるということが通常です。
問: そもそも90日という期限が現実的でないということですか。
答: そうかも知れませんね。FAAから来た手紙を読んでもらうと分かりますが、如何に慎重に検討しているかが分かるかと思います。これくらいの時間はやむを得ないかと思います。その間には遅れるとの内々の通知はもらっていますし、内容の検討に時間がかかったということであります。
問: 先程は適切に対処されたとか、十分なものだとかおっしゃっておりますが、スピード感を含めて回答内容は満足できると。
答: 早いほうが良いに決まっているのですが、1社だけの問題ではなく、バッテリーの問題にしても日本の会社も絡んでおりますし、どういうふうに改善していくのかということについては、ボーイング社だけの問題ではありません。そう言う意味でFAAも取りまとめには苦労しているわけです。時間がかかるということはある程度、了解しなければならない。それにより、この様にある程度、満足できる回答がでてきたと受け取っていただきたい。これを90日でやれとなった場合、おそらくこの様な回答はでてこないと思います。90日との期限はつけていますが、一応の歯止めであって向こうの対処の仕方、内容等を考えて、長くなることはやむを得ないと現在のところは理解しているところです。
問: 今、満足できる回答と言われましたが、感想の部分が重なるかも知れませんが、FAAからの回答を評価されているのか、どういう風にJTSBとして受け止めているのかお聞きしたい。
答: バッテリー事故に関しては設計をし直して、従来のような事故が起きにくくなると同時に、仮に起きてもほかのセルに影響を与えないような改良を施していった。そう言う点に関しては、我々は評価したいと思っています。ただ、今後起きないかというと製造者の問題もありますので、何ともいえません。しかし、起きてもそういう大きな事故になる可能性が少ないと私は、個人的な評価が入るかも知れませんが評価しています。
問: FAAからの回答の件ですが、バッテリーの改修自体は運航再開の際に終わっていて、去年の9月には事故等調査報告書が出され、先月、ようやくこの回答が来ました。この回答に関する委員長としての評価をお聞きしたい。
答: 運航が再開された時には改修はされた、さらに改修及び安全性を高めるための改良は進められている。そういう意味で満足したと言っている訳です。
問: 787も、もう一方の勧告もそうですが、FAAは今回の回答で疑問点や追加の情報が欲しい場合は言ってくださいと書いてありますが、求める予定はあるのでしょうか。
答: 今のところありません。将来、ユーザーの間から疑問が投げかけられてきて、我々のところを通るとすればNTSBを通じてFAAに回答を依頼することはあるかも知れません。現在、我々が理解しているところではこれで十分ということです。あくまでユーザーの立場で考えなくてはいけません。ユーザーがどの様な態度を示すかということが重要となりますので、そういった情報を積極的に掴むように我々は努力していきたいと思います。
問: 4月のアシアナ航空の事故に関し、今、事故機が草地に置いたままになっていますが、それの撤去については許可を出されたのでしょうか。また、アシアナ航空からはどの様な方法で撤去するとの回答がありますか。
答: 誤解のないように申し上げますと、撤去の許可というものは我々はしません。調査のために機体の現状を保管していただく必要があると、そのために機体を場合によっては動かさないでくださいとか、分解しないでくださいとの保全措置をお願いしているところです。この保全につきまして、今月の12日に機体の保全については解除ということをアシアナ航空に伝えているところであります。我々が分析しているフライトレコーダーですとかCVRは分析中ですので、一部の部品については保全がかかっているところです。広島空港にあります機体については、保全は解除しておりますので、いつ移動するとか、場合によっては分解するとかはアシアナ航空が関係機関と調整しながら既に進めているものだと思っております。
問: ボイスレコーダーの解析結果等について、今後、中間報告をされる予定はありますか。
答: 5月13日には、調査の結果を踏まえ、判明した事実情報のうち、裏付けがとれ関係国とも調整のとれたものを公表いたしました。その後も、必要な事実情報の収集及び整理を行い、CVR等の重要なデータの解析作業を進めていますが、当面の間は公表できるものはございません。公表すべき事実関係がありましたら、積極的に公表を行っていくことといたします。
問: 先程、お話のありました船舶事故ハザードマップのモバイル版ですけれど、海上保安庁が提供する沿岸域情報提供システムMICS(ミックス)のモバイル版が出たのですが、こういったものとのリンクはしているのでしょうか。
答: ハザードマップ・モバイル版のリンク先一覧から見ることができるようになっています。直接、画像を重ねて見ることはできませんが、リンク先として表示しています。
問: 海保の方は、現状、ここは風が強いとか、危険区域があるとか、そのような情報がありますが運輸安全委員会さんの方は、過去にここでこんな事故があったとか分かるということですか。画像上でリンクするわけではないが、それはURLでとべるということですか。
答: そのとおりです。リンクを張っています。
問: モバイルの場合はいろんなリンク先があると思うが、利用者のそういった使い方を想定し、使いやすくなっているものなのですか。
答: 今後、利用者の方からのご意見やご要望等をお聞きしながら、より使いやすいものにしていきたいと思います。モバイル端末の小型タッチパネルに対応したことで、見た目で分かるように、なるべく文字を少なくし、操作ボタンや配置などを工夫しました。また、モバイル端末のGPS機能を利用して、現在地付近の情報を表示できるようにして、いろんな特徴を持っていますので、是非、ご利用いただければと思います。プレジャーボートや遊漁船など小型船舶のユーザーには、大変役に立つものです。