平成27年5月26日(火)14:00~14:23
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、5月の月例記者会見を始めさせていただきます。
問: 広島空港のアシアナ航空機事故の件で、先日調査中の状況を説明して頂き、飛行記録のデータについては詳細に示して頂いたのですが、ボイスレコーダーの内容や機長、副操縦士の口述の内容については示して頂けなかったのですが、開示できない理由と少しでも開示してもらえないでしょうか。
答: 事故調査の過程で入手した音声記録や口述等の情報の取り扱いは国際的に特に慎重に取り扱わなければならないとされています。現在ボイスレコーダーの内容は解析作業が慎重に進められているところでありますので公表できる段階ではありません。また公表できるものが出てくるかどうかも今のところわかりません。
問: 広島空港の事故についてですが、今後、調査の経過報告を行う見通しはあるかどうかと、最終調査報告書がいつごろ公表になるか、見通しがわかれば教えていただきたい。
答: 本件は非常に重要な事案であり、詳細な調査が必要であると考えております。13日に事実関係の公表を行いましたが、事故時のフライトレコーダーのデータや事故前後における気象関係など、事故時の状況をご説明しました。これらは、これまでの調査結果を踏まえ、判明した事実情報のうち、裏付けがとれ、関係国とも調整がとれたものを公表しました。
今後の作業としては、CVRデータ、機長等の口述、搭載機器及び機体の損壊状況等の解析作業を進めていくこととしております。また、それら解析した内容の照合作業等を行い、早急な原因究明に向け努めてまいります。いつごろになるかは申し上げられないことをご了解いただきたいと思います。
また警察から鑑定嘱託が4月28日にありました。これは従来通り報告書がでたら渡すということになるかと思いますが、まだ調査中でありますので時期は未定であります。
問: アシアナ機のCVRの内容については慎重に取り扱いたいということですが、管制とのやりとりは英語だと思いますが、パイロット同士の会話はおそらく韓国語だと思いますが、その翻訳はどうするのですか。韓国の事故調査機関も参加しているようですが。
答: 交信に関わった人からは話を聞く、記録されているものを取り寄せて読むと同時に我々が解析したものが間違いないか双方に照合するという作業を続行中です。
問: 双方というのは。
答: 韓国側と日本側です。管制も含めて。
問: 英語については調査官は大丈夫かと思いますが、韓国語についてはどうするのですか。
答: 韓国語が記録されているかどうか確かめていませんが、記録されているなら韓国語の通訳として必要な場合は利用させていただいています。
問: JTSBとして韓国語の通訳を雇って解析するということですか。
答: そのとおりです。
問: 通訳にも技量があると思いますが、韓国当局にCVRの内容を渡して日本語に翻訳してもらって照合するということですか。
答: 国際的なルールで、事故調査は製造国、運航国、発生国がそれぞれ協力しながら行うこととなっています。今回は製造国のフランス、運航国の韓国の事故調査機関のご協力を頂いています。言語的な問題でも協力を頂いています。
問: 協力は得るけれども、基本的には日本の運輸安全委員会が独自の責任で韓国語の通訳を雇うということですか。
答: 独自というか双方の理解がないとできない。合意の上でやっております。詳細については申し上げられないが、韓国の事故調からは全面的な協力を頂いています。
問: 運航国や製造国などには利害関係もあると思うが。
答: 国際的なルールで、例えばアメリカで韓国の航空機が事故をおこした場合は当然韓国の事故調査機関が全面的に協力を行うし、フランスでドイツの航空機が事故を起こした場合はドイツの事故調査機関が全面的に協力をしています。これらは一般的な国際ルールです。我々はその国際的なルールに基づいて今回も同じように調査を行っております。ただし、最終調査報告書ができるまでは独自に検証は行っていきます。
問: 韓国の調査当局にも頼るが独自に通訳を雇っても行うと。
答: リードするのは我々です。
問: 何分間くらいの記録を解析しなければならないのですか。
答: それについても、ここでは詳細な資料がないのですが、一般的にCVRは最大録音時間が、2時間くらいになっています。当然、必要な部分について集中的に解析をしますので、全部、詳細な解析をするかどうかは内容次第だと思います。
問: 2時間全部をやる必要はないことが多いのですか。
答: そうですね。全く事故に関係ない部分もあるかも知れませんので、そこは内容次第だと思います。よく音声データが上書きされて消えていることが多いが、今回の場合はそのまま止まってしまったため、そのようなことはないと思います。
問: 今回は消えていないとのお話だったのではないですか。
答: 消えていないと思います。明らかなことは調査が終わった後でないと分かりません。
問: 発生直後に残っているとの説明をされていませんでしたか。
答: 音声データは残っています。ただ、先ほどから申し上げているように、FDRのような客観データと違いまして、音声記録というものは会話する内容自体が事実そのものを表しているかどうか、いろんなものと突き合わせていかなければいけません。国際的なルールでは音声データのCVRデータとか管制交信記録、あるいは口述については慎重に取り扱うべきと定められています。
問: 慎重に取り扱うのは分かるのですが、今回、何分間くらい集中的に解析する必要があるとお考えですか。
答: それはケースバイケースです。お答えすることが難しいですね。
問: 先週、佐賀で発生したJR九州の重大インシデントについて調査が始まっていると思いますが状況を教えてください。
答: 5月22日12時20分頃、JR九州の長崎線肥前竜王駅構内において、下り特急列車と上り特急列車が同一の線路に進入する事案が発生しました。運輸安全委員会としては、本インシデントの調査を行うため、22日から鉄道事故調査官を関係部署に派遣し、列車の運行状況等を調査するとともに、乗務員等の関係者からの聞き取り調査を実施しました。現在、調査中であり、詳細についてお話できる段階ではありませんが、引き続き、必要な調査を実施し、原因究明を行ってまいりたいと考えております。
問: JR九州のインシデントの件で会社側は、運転士と指令員の間で停止位置をめぐる行き違いで、見解の相違があったことが原因と説明しています。原因究明は今からなのでなかなか何も言えないと承知の上で、もし現段階でその点についてコメントできることがあればお願いします。
答: それは難しいところです。下り特急列車と上り特急列車が同一の線路に進入する事案が発生しました、現在、言えるのはそれだけです。どういうふうにどの様な状態でと言うことは、今から確認をしていかなくてはなりません。
問: 原因については、これからの調査だということですが、同一の線路で閉塞が保たれているはずのところで、向かい合って93mに近づくケースというのは、かなり驚きを持って受け止めているところで、委員長としてはいかがですか。
答: わたしも驚いています。なぜこのようなことが起こるのかと思っています。ATSや信号がどうなっていたのかも問題ですし、そのような状況を全て確かめないといけません。事実関係に対しても我々が全部、把握しているかというと、そうではない状況にあります。
問: 国交省の鉄道局から運輸安全委員会に通知されたインシデント情報だと、信号冒進となっています。運輸安全委員会としても調査官を派遣される際に、この事案は信号冒進事案であるということですが、これは信号に原因があったということですか。
答: いいえ、現状の把握では信号冒進としていますが、調査としては予断をもたずに運転の取扱い、あるいは車両や施設等の関与につきまして調べていきたいと思っています。将来、調査・分析が進んで事実はこうであったとなると、インシデントの種別が変わる可能性もあり得ると思います。
問: B787の髙松事案でFAAに対してなされた勧告での回答は、まだ来ていないのでしょうか。
答: なかなか来ないですね。今年の1月にFAAより現在、検討中という連絡がありました。これは前にもお知らせしたと思いますが、1月15日に進捗状況の確認メールを送信して、1月21日に返信メールをいただいたのですが、それ以来、まだ来ておりません。
問: 進捗状況の確認メールを送ったということは、有り体に言えば催促してみたら、それに対し検討中の一言ということですか。
答: そうですね。検討中ということです。
問: 無視されたり、軽視されている訳ではないのですか。
答: 無視されているわけではないと思います、お互い様ですから。
問: 何か難しいものがある、勧告自体が一朝一夕にできるものではないということでしょうか。
答: その辺を率直に話し合う必要があるかなという感じがしております。出さないのであれば、出さないとの意思を示してくれと言わないといけないですね。
問: 高めのボールを投げすぎたという感じがあるのでしょうか。
答: 向こうの報告書も出ているし、こちらの報告書も出ているわけです。問い合わせは日本側からしているが、向こうは何をすべきかと悩んでいるかと思います。
問: NTSBの報告書で、JTSBに求められていて取組中のものがありますか。
答: なかったと思います。
問: 先々月でしたか警察庁、警察サイドと鑑定嘱託のあり方についての協議を、難しい問題ですが進めていくとお話がありましたが、その後、進捗状況に何か変化がありましたか。
答: その後、警察関係と鑑定嘱託の話をしているわけではありませんので、進展があったかと聞かれると、ないと言わざるを得ません。
問: 話し合いの機会を持ちたいとのことだったと思うのですが、進んでいないのは何故ですか。警察側が消極的なのでしょうか。
答: そう言う問題ではなくて、双方で協議し合う必要があるかどうかというところから検討していかなくてはならない。まだ、その時期に達していないということです。
問: 過去の事務局のご説明とは、食い違っている気がするのですが、今はそっとしておいた方が良いということなのか。
答: 現時点では具体的な結論が得られていないということです。引き続きの検討課題であるとの認識をしていますので、警察とこれまでの調整経緯等を整理、精査しているところであります。
問: 事務レベルではやっているということですか。
答: 事務レベルでは、部内的にどういうやり方ができるか検討をしているところです。