平成26年2月26日(水)14:00~14:23
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、2月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日の資料としましては、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、勧告に基づき講じられた措置として、三重県において発生した三岐鉄道の車両脱線にかかる鉄道重大インシデントに係る勧告に基づく実施計画について、さらに、運輸安全委員会ダイジェスト第12号の発行についてご報告いたします。
はじめに、今月15日(土)00時30分頃、東急電鉄東横線元住吉駅構内で発生しました列車衝突事故調査の進捗状況についてでございますが、調査官を派遣して初動調査を開始し、現在までのところ、車両、信号、当日の運転状況等について関係資料の収集を行うとともに、関係者からの口述聴取を実施し、整理分析を進めているところであります。
また、今月23日(日)01時11分頃、JR東日本京浜東北線川崎駅構内で発生しました列車脱線事故調査の進捗状況につきましても、同日早朝、現地に調査官を派遣し、初動調査に着手しました。現在までのところ、運転状況、車両、工事実施状況等を調査するとともに、関係者からの口述聴取を実施し、目下、収集した資料の整理分析を進めているところです。
従いまして、両事故とも、本日、事故調査に関する資料を提示することができないことをご理解いただきたいと思います。
それでは、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させていただきますが、詳細は資料1をご覧下さい。
次に、勧告に基づき講じられた措置について、ご紹介いたします。
平成24年6月27日に発生した三岐鉄道株式会社三岐線東藤原駅構内における鉄道重大インシデントについてでございます。資料2をご覧下さい。
本インシデントは、18両の入換編成がセメント工場専用線から東藤原駅構内の本線へ向けて走行中に、2両目機関車の前台車第1軸が脱線したというものです。
本調査結果につきましては、平成25年10月25日に調査報告書を公表するとともに、原因関係者である三岐鉄道株式会社に対して勧告を行いました。
同社から提出された実施計画では、発生原因となった三岐線東藤原駅構内の分岐器については、既に分岐付帯曲線の諸元の明確化、大規模曲線改良等の措置を講じております。
また、今後講じる措置として、発生箇所以外の類似箇所について、保守管理上の設計値を把握し、軌道変位の検査を適切に実施し、軌道の整備・維持を確実に行うため、測量による分岐付帯曲線の明確化、測量結果に基づいた曲線改良、軌道の整備・維持等を行うこととしております。
これらについては、勧告の内容を反映したものとなっていると考えております。今後は、実施計画に沿って実行していただくことになりますが、これにより、安全性の一層の向上に努めていただきたいと考えます。措置が完了した段階で、完了報告が提出されましたら改めてお知らせいたします。
次に、運輸安全委員会では、同種事故の再発防止を目的として、事故事例、統計に基づく分析などをまとめた「運輸安全委員会ダイジェスト」を作成しており、隔月で発行しております。
本日、運輸安全委員会ダイジェスト第12号「鉄道・船舶事故分析集 大雨・大雪・強風等に関連する事故の防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しましたので、ご紹介します。
ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料3をお配りしております。
昨年は、台風や集中豪雨などによる災害が多数発生しましたが、本年においても、各地において記録的な大雪が相次いでおり、大雨、大雪、強風等に関連して当委員会の調査対象となる事案の発生も散見されます。
そのような背景を踏まえ、台風や発達した低気圧の影響による大雨、大雪、強風等に関連する鉄道事故及び船舶事故を題材としてダイジェストをとりまとめました。
本号では、初の試みとして複数のモードを対象に共通のテーマを取り扱うこととしました。今後とも、このような取り組みを行うことで、モードを問わず広く関係者の皆様に周知を行うことにより、同種事故の未然防止に資することを期待しています。
ダイジェストの発行については、当委員会ホームページでの公表のほか、当委員会メールマガジンにおいてご案内しております。
私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 先程冒頭で触れられた東急東横線やJR京浜東北線の事故については、詳細についてはまだ調査中ということでしょうが、東急東横線については雪の影響であったり、京浜東北線の事故についてはヒューマンエラーが原因に繋がるのではないかとの指摘がありますが、この点、事故原因についてどのようにお考えなのか、所感をお願いします。
答: まず事実情報から申し上げますと、東横線に関しましては、2月15日(土)0時30分頃、東京急行電鉄(株)東横線元住吉駅において、降雪時に、渋谷駅発元町・中華街駅行きの後続列車が、同駅を約30m過走して停止していた渋谷駅発元町・中華街駅行きの先行列車に衝突し、脱線しました。両列車には合わせて約140名の乗客が乗車しており、多くの乗客が負傷(いずれも軽傷)しました。運輸安全委員会としては、この列車衝突事故の調査のため、15日に鉄道事故調査官3名を現地に派遣し、運転、車両、信号の状況の調査等や関係者からの聞き取り調査を、また、20日には車両の追加調査を実施したところです。今後、調査により収集した各種データ等を詳細に分析し、早期の原因究明に向けて努力してまいります。マスコミ等で報じられていますが、私達が確認した事項は以上です。
次に、京浜東北線の列車脱線事故についてですが、2月23日(日)1時11分頃、JR東日本京浜東北線川崎駅構内において、桜木町駅発蒲田駅行きの回送列車(10両編成)が工事用車両と衝突し脱線しました。列車には、乗務員(運転士と車掌)2名が乗車しており、2名とも負傷しました。運輸安全委員会としては、本列車脱線事故の調査を行うため、23日早朝に鉄道事故調査官を現地に派遣し、運転状況、車両、工事実施状況等を調査するとともに、関係者からの聞き取り調査を実施いたしました。今後、調査により収集した各種データ等を詳細に分析し、早期の原因究明に向けて努力してまいります。調査の途上でありますので、これ以上申し上げることはございません。
問: 本日提出された進捗状況一覧を見ると、京浜東北線の方は列車脱線事故となっていて、東急東横線の方は列車衝突事故となっています。東急は、直後の会見で前後の車両がそれぞれ脱線していたと言っていましたが、これが衝突事故というのはどういうことでしょうか。
答: 鉄道事故報告規則上、衝突・脱線という順番で、衝突があれば衝突事故になるという定義の仕方で、東急東横線の場合は、衝突があったから「衝突事故」、京浜東北線の方は、工事用の車両ですので、事故としては回送列車の方が脱線したということで「脱線事故」という形で取り扱っています。
問: 相手が工事用車両で物だからということですか。
答: 物だからです。
問: この間のJR北海道の大沼駅の場合は事故の後、委員長の会見の中で軌間が39ミリに広がっていたという話しがこの場で明らかにしていただいたかと思いますが、そのように当初の段階で口述以外のある程度の事実情報を、これまで出していただくケースもあったかと思いますが、今回この2件に関して、そういった客観的に明らかな情報がほとんど明らかにされないのはどういった理由なのでしょうか。
答: 細かいデータについては現在整理しているところなので、明らかにできることはないと思います。軌道等については正常であったろうと思われます。各種報じられていることはありますが、そのことが原因になったかどうかということを現在調査中であります。我々の調査が終わった段階で原因を明らかしますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
問: 東急東横線の方は、会社が、かなり断定的に雪の影響だろうと、それもブレーキパッドと車輪の間に雪が挟まったのではないか、ということを言っていますけれども、それが原因だと彼らは事実上断定しているようなところがありますので、運輸安全委員会がそういうことがあったのかどうかを言っていただかないと、彼らの言い分が正しいのかどうかを判断できないのですが、そこはいかがでしょうか。
答: そういうことも含めて調査中ということであります。言っていることが正しいのかもしれません。そういうこともありうるということを含めて調査中であります。
問: JR北海道の告発に踏み切られましたが、その所感と、先日の会見でもあったその他の運輸安全委員会が調査をされているJR北海道管内の改ざんの有無について確認されているとありましたが、これの進捗状況についても伺いたいのですが。
答: まず、2月10日にJR北海道及び関係者(被疑者不詳)を運輸安全委員会設置法違反として刑事告発を行ったわけでありますが、JR函館線列車脱線事故については、多角的・客観的・中立的な観点から、科学的な原因究明及び再発防止を目的して、現在、鋭意、調査を行っているところであります。そのような中で、事故原因に密接に関わると考えられる軌道検査データについて、事故直後に書き換えられ、当委員会に提出されていたことが判明しました。このことは、当委員会が適確な事故調査を行うにあたり必要とされる報告徴収制度の趣旨を根底から覆すものであり、その重大性、深刻性に鑑み、厳正に対処する必要があるため、今般、検査データの改ざんによる虚偽報告という運輸安全委員会設置法に違反する事案として、刑事告発を行ったものであります。当委員会としては、引き続き、原因究明に向けて、厳正かつ慎重な調査を進めて参る所存であります。
現在、7件のJR北関連の調査を実施中でありますが、まだ結果がでておりませんので、もうちょっと時間がかかる予定であります。現在まだ調査が続いておりますので、引き続き情報が来るものとは思いますが、少なくとも事故に関する限りは大沼以外の6件に関しては、直接我々の調査に影響があるものはなかったと承知しております。
問: 自衛艦のおおすみと小型船とびうおとの衝突事故で、先月は関係者への聞き取り調査を進めてらっしゃるということでしたが、その聞き取りは終わったのかどうか、また、とびうおに搭載されていたGPSの記録の解析がどこまでどのように進んでいるのか、というのがわかれば教えて下さい。
答: 先月聞き取り調査を行っていますと報告をさせていただきましたけれど、現在も関係者から口述聴取を行っているところでございますので、本日、この段階で公表できることはございません。ご了解いただきたいと思います。GPSについてですが、先月も申し上げましたけれど、あるなしということを申し上げると、これから話しを聞く方に影響を与えるおそれがあるということを懸念しておりますので、現時点では公表を差し控えたいと考えております。
問: 高松事案について、調査の進捗状況と見通しを伺いたいのですが。
答: 引き続き分析・調査を行っている段階でありまして、特に申し上げることはありません。見通しについてもはっきりしません。アメリカでは、以前は、できれば1月にもと言っていましたが、計画があるように聞いてはいますが、手間取っているようです。私どもの方も、調査をすすめていることと、根本原因が何かということを突き止めるのはたいへんですので、議論を交わしているところです。もうしばらく待っていただきたいと思います。
問: 先月の成田で起きた日航の787ですが、国交省の調査でいろいろ明らかになっていますが、これから得るものはいかがでしょうか。
答: 得るものがあるとは私は期待しておりますが、我々も調査官を派遣して、過去の事象と似たような状況があったかどうか、根本原因として似たようなことがあったかどうか、これらを調査中であります。