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委員長記者会見要旨(平成26年1月29日)

平成26年1月29日(水)14:00~14:28
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 はじめに、今月15日(水)08時ごろ、広島県大竹市阿多田(あたた)島沖で発生しました輸送艦「おおすみ」と小型船「とびうお」との衝突事故につきまして、お亡くなりになられたお二人のご冥福を心からお祈りいたします。
 調査の進捗状況についてでございますが、直ちに調査官を広島市に派遣して初動調査を開始し、現在、現地で入手しました情報を整理すると共に引き続き初動調査を実施しているところであります。
 従いまして、本日、本事故に関する資料を提示することができないことをご理解いただきたいと思います。
 それでは、本日の資料としましては、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、勧告に基づき講じられた施策として、熊本において発生した個人所属機の山腹への衝突事故に係る勧告に基づく通報についてご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

 現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させていただきますが、詳細は資料1をご覧下さい。

2.勧告に基づき講じられた施策

 次に、国土交通大臣から、勧告に基づいて講じた施策についての通報がありましたので、ご紹介いたします。
 平成23年1月3日に発生した個人所属パイパー式PA-46-350P型JA701Mの航空事故についてでございます。資料2をご覧下さい。
 本事故は、レジャー飛行のため熊本空港を離陸し、北九州空港に向け飛行中に熊本空港から北東約14kmの矢護山(やごやま)斜面の山腹に衝突し、搭乗していた機長ほか同乗者1名が死亡したというものです。
 本調査結果につきましては、平成24年9月28日に調査報告書を公表するとともに、国土交通大臣に対して勧告を行いました。
 今般、国土交通大臣から、運輸安全委員会設置法第26条第2項の規定により、勧告を踏まえて、有視界飛行方式での雲中飛行の危険性について、個々の操縦士に再認識を促すパンフレットを作成し、特定操縦技能審査制度等の機会において周知を図ることとした旨の通報を受けました。なお、同パンフレットには、当委員会において雲中飛行の危険性について分析したものが用いられております。
 この通報につきましては、勧告の内容を反映したものになっております。

 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連)

問: 今月で高松空港の白煙トラブルから1年が経過しましたけれども、現在引き続き原因究明をされてらっしゃるかと思いますが、その調査の進捗状況と結論をいつ出せるかという見通しがついていれば教えて下さい。併せて先日成田で出発準備中に、またバッテリーから白煙をあげるというトラブルも発生しましたが、これが高松事案のとりまとめに何らかの影響があるか、教えて下さい。
答: 高松事案についてですが、当委員会は、NTSBと緊密に連携し、原因究明に向け全力で取り組んでいるところであり、今の段階で具体的な目処を申し上げることはできません。高松事案発生から1年が経過しており、また、NTSBが本年秋頃には報告書を公表する予定とのことなので、当委員会としても、これらのことも意識しながら、調査報告書をできる限り早い時期に公表できるよう、全力で取り組んでいるところでございます。
 1月14日に日本航空のB787型機で、バッテリーの損傷が発生しておりますが、これにつきましては、当委員会としても大きな関心を持っておりまして、必要に応じて調査官を立ち合わせるなどして情報を収集しているところです。大きな違いは高松事案が古い型のバッテリー、この前成田で起こりましたのは新しく改良を施したものです。その辺の違いを含めて、現在調査官を派遣して調査に立ち合わせているところです。

問: 先程、787についてバッテリーの改良が有効だったかも含めて調査しているということでしたが、今回は重大インシデント等ではないと思うのですが。
答: 調査というのは言葉としては言い過ぎだったかもしれませんが、国交省が調べていることについて、情報を正確に得ているということでございます。

問: 今回の日本航空の787のトラブルは、比較的バッテリーの損傷が軽微だと言われているのですが、高松事案の解明に向けて今回の調査が役に立つということがあるのではないかということはいかがですか。
答: 高松事案の調査に対して役に立つかどうかということは、にわかには申し上げられませんが、改良された点が各種あるわけで、例えばセルとセルの間が固く守られていて、熱が他に移らないようになっている等々、複数のセルが発熱した高松事案との違いもあるので、調査の結果を我々も聞きたいと思っています。

問: 改良部分がどう効果を発揮したかという側面は、もちろんあると思いますが、それと別にそもそもバッテリーセルがなぜ発火したのかということはいかがでしょうか。
答: そこが大問題なのです。つまり、いわゆるルートコーズ(根本原因)をどう求めるかということに対しては、現在我々はそこまで正確に達したと言えない状態です。いつになったらそれが得られるかということは今のところ申し上げることはできませんが、できるだけ急いで進めたいと思っております。

問: その根本原因の解明のために、成田でのバッテリートラブルの調査が役に立つのではないかということではないのでしょうか。
答: それももちろん一つとしてあるわけです。それ以外に、ボーイングが施した改良が、つまり熱の伝播を防ぐためにどういうふうに効果を発したか、ということもわかればと期待しています。また、根本原因として、80種類くらいの原因をボーイングは言っているわけです。成田のバッテリートラブルの調査から判明したことによって、その中のどういうところに近いかというところまでわかればありがたいと思っているところです。今、調査官を立ち合わせていますので、そこで情報を集めて、どんな状況だったのかということは、ちゃんと見たいと思っています。

問: 先程、委員長は、1月14日の事象を大問題だと言われたように聞こえたのですが、これは、既にボーイング社が対策を打っているにもかかわらず、これがすり抜けられた可能性が高いということを言われたのでしょうか。
答: いいえ、そういうことを言っているのではありません。いろいろなことを施したのに対して、あのようなことが起こったと、二つのことがありまして、一つは、どこから起こったのか、根本原因が分かるかどうか、もう一つは、他のセルへの波及が無かったということは改良が上手に為されたということを示すのではないかということを、複数のセルが発熱した高松事案との比較として知りたい、と申し上げた次第です。

(日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連)

問: 特別保安監査が終わったということで、運輸安全委員会に提出された報告にも改ざんされた数字が入っていたようですが、それについてのご所感と、今後どのように対応されるのか、ということを伺います。
答: ご存じのように我々は昨年12月、JR北海道による改ざん発表を受け、委員長コメントを出したわけですが、その後JR北海道から、反省と謝罪、改ざんに関する一連の事実関係を内容とする報告を受けました。運輸安全委員会としましては、同社に対しては、二度とこのようなことが無いように、社内のチェック体制の強化を図りつつ、引き続き、事故調査の基本となるデータの正確性の確保など、当委員会の行う事故調査に真摯に、誠実に協力していくことを強く要請しているところであります。本件列車脱線事故については、当然のことながら、引き続き、厳正かつ慎重な調査を行っていきたいと考えております。
 なお、本件以外の6件の調査中の事案がありますが、事故調査資料の基となるデータの正確性は、事故原因究明や有効な再発防止を考えるうえで、基本となる重要なものであることは我々も、JR北海道も認識しているところです。そのため、本件以外の6件の調査中の事案に対しても、これまでに提出されたデータについて、JR北海道に改めて改ざんのないものであることの再確認を求めているところであり、現在、JR北海道において精査中であります。

問: JR側から反省と謝罪があったということですが、いつ、どのような形であったのか、その内容と、今のところ運輸安全委員会として把握している改ざん内容について、概要を教えてください。
答: 先般、1月21日にJR北海道から改ざんについての発表と、24日に鉄道局から改善命令等についての発表があったのはご存じのとおりです。今般の軌道検測データ等の改ざんは、函館線列車脱線事故の発生直後に軌道の検測データ等を改ざんし、当委員会に提出したものであります。これは、事故調査の大前提となる事実そのものをゆがめるものでありまして、極めて言語道断であり、誠に遺憾であるといわざるを得ません。今回、JR北海道において、社内調査を行った結果、軌道検測データ等の書き換え等が行われたことが確認されましたが、当委員会としましては、このようなことが二度とないように強く求めていきたいと思っています。その一方で、当委員会としましては、事故原因の速やかな究明に向けて、引き続き、厳正かつ慎重な調査に全力を挙げてまいりたいと思っております。
 具体的な改ざんの報告につきましては、検査データ関係については、トラックマスター関係、それとマヤ車関係、それと、軌道検査の記録につきましては書き換え、軌道補修実績につきましては書き加えが報告されております。

問: 運輸安全委員会設置法には、虚偽の報告をするとか、調査を妨害するような場合には、刑事責任を問える規定がありますが、今後の刑事告発についてのお考えを聞かせてください。
答: 確かにそういう規定があり、現在、北海道警と相談をしておりますが、詳細については控えさせていただきたいと思います。

問: 告発を念頭に相談しているということですか。
答: 告発もあり得るということでの相談です。

問: JR北海道からの反省と謝罪については、いつ、どんなかたちで来たのか、どういう内容だったのか、という先程の質問には回答が無かったと思いますので、あらためてお答えください。
答: 1月21日にJR北海道から運輸安全委員会あてにありました。

問: 1月21日の午後2時にJR北も記者会見をしましたが、その後に運輸安全委員会にあったのですか。
答: 記者会見に合わせてということです。

問: その謝罪というのは、どういう内容で、どういう形式で、どのように来たのですか。例えば、誰かが持って来て述べていったとか。
答: 反省や改ざんの事実関係などを内容とする文書を、委員会に対していただいたということです。

(輸送艦おおすみ小型船とびうお衝突事故関係)

問: 先程、おおすみの事故については初動調査の段階で資料の提示はできないということでしたが、調査の進捗状況についてはいかがでしょうか。
答: 調査の状況ですが、事故発生の情報を受けまして、直ちに調査官を広島市に派遣しております。そこで、現地では、「おおすみ」の船体調査、乗組員に対する口述聴取、関係資料の収集等及び「とびうお」の船体調査を行っております。初動調査段階ですので、これ以上お話しできる状況にないことをご理解いただきたいと考えております。

問: 過去に船舶事故が起きたあとに、AISのデータを公表されたことがあったと思いますが、今回、それができない理由は何ですか。時間的な理由ですか。
答: 輸送艦のデータは得られていますが、小型船のデータが十分に回復できるかどうかを現在も確かめているところであり、一方だけのデータを出すというのは非常に不正確な印象を与えますので、ある程度分析が進んで結論が出た段階でなければということで、従来どおり公表できないということです。
 我々の初動調査においては、関係者から、見たまま、感じたままを率直にお話ししていただくということが重要なことだと考えています。そこに一方だけのデータで示しますと、関係者に予断を与える虞があり、このため、現時点では公表を差し控えさせていただいています。過去の例ですが、皆様のご記憶のなかでは、昨年9月に起きました貨物船JIA HUI(ジィアフイ)と貨物船第十八栄福丸の衝突事故の件があろうかと思いますが、あのときは両船のAISデータがありました。それと関係者からの口述聴取も既に終わっていましたので、予断を与えることはないと判断し、公表しました。

問: 小型船のGPSの記録はある程度残っているのですか。
答: 小型船のGPSデータがあるかないかということについては、これからまだお話しを聴く方がおられるので、あるかないかということについて、この場では控えさせていただきたいと思います。

問: GPSデータが残っているかどうかで口述が変わる可能性があるということでしょうか。
答: 変わるかも知れません。

問: 私の記憶ですが、一昨年の金華山沖のNIKKEI TIGER(ニッケイタイガー)と堀栄丸の事故のときは、NIKKEI TIGERの航跡だけでも公表されたと思いますが、そのときの対応と今回とはどう違うのでしょうか。
答: NIKKEI TIGERと堀栄丸の事故のときは、NIKKEI TIGERのデータのみ公表しておりますが、それは堀栄丸側の当直者が亡くなられており、さらに、データはAISデータのみであること、NIKKEI TIGER側の関係者の口述調査は終わっていたということをもって、公表させていただいたものです。そういう意味ではそのときも今回も考え方は変わっておりません。

問: 口述聴取が終われば出すということですか。
答: 口述聴取が終わって、内容の確認が取れていれば、ということです。

問: そうすると経過報告か最終報告までは公表されないということですか。これまでのところ、少なくとも、NIKKEI TIGERのときは経過報告までいかなくとも航跡データを公表していますが、今回、特に対応を変えるという理由はあるのでしょうか。
答: 対応を変えているつもりはないのです。データを出しても、関係者に予断を与える状況ではないという判断のもとで公表しております。

問: それが終われば、経過報告までいかなくとも公表するという考えはあるのですか。
答: 今回については、そこまでいっていません。主観的なデータと客観的なデータがどのように合っているのかということを確かめなければならないということです。それが十分に合致しているということになれば、公表も早くすることができますが、主観データと客観データに食い違ったものが出て来るという状況になれば、何故そういうことになったのかを解明しなければ、なかなか公表できないということです。ご了解ください。

問: 逆に、今の段階で、そういう食い違いが生じているということですか。
答: 小型船の運航状況等については、関係者から順次お話しを聴いており、この段階で公表しますと、関係者の記憶が変えられてしまう、これは学術的にも、自分が見たことと、あとから入ってきたデータが重なると記憶が変わってしまうということが言われておりますので、それを避けるために、現時点では公表できない、ということです。

資料

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