運輸安全委員会トップページ > 報道・会見 > 委員長記者会見 > 委員長記者会見要旨(平成25年12月18日)

委員長記者会見要旨(平成25年12月18日)

平成25年12月18日(水)16:00~16:57
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 まず、平成25年9月19日発生の函館線大沼駅構内列車脱線事故に関し、JR北海道による軌道検測データの改ざんが明らかになりました件につきまして、すでに12月12日にコメントを公表しておりますが、改めて私から申し上げます。
 JR北海道において、事故直後に軌道の検測データを改ざんし、当委員会に提出したことにつきましては、当委員会が、適確な事故調査を実施し、かつ、効果的な再発防止策を提言するに当たり、大前提となる事実をゆがめるものであり、極めて言語道断であり、誠に遺憾であると言わざるを得ません。
 当委員会といたしましては、本件の重大性・深刻性に鑑み、JR北海道に対し、責任ある説明を求めるとともに、厳正かつ慎重に調査を行うことといたします。
 それでは、本日は、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、11月に委員が出席した国際鉄道事故調査会議の概要、運輸安全委員会ダイジェストの発行についてご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

 はじめに現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させていただきますが、詳細は資料1をご覧下さい。

2.国際鉄道事故調査会議(H25.11.20~21、英国)

 次に、資料2をご覧下さい。
 国際鉄道事故調査会議(International Rail Accident Investigation Conference)は、英国などの鉄道事故調査機関の企画により、英国機械学会(IMechE:Institution of Mechanical Engineers)が開催する会議であり、鉄道事故調査に関する知見の国際的共有を目的に、2007年から、3年ごとにロンドンにおいて開催されております。
 鉄道事故の調査の場合においても、航空、船舶と同様に、類似事故の発生防止のためには、各国の事故調査に関係する機関が調査に関する情報を交換することが必要です。
 当委員会は、第2回目の会議から参加しており、本年11月20日~21日に開催された第3回会議には鉄道部会長の松本委員及び鉄道事故調査官が参加し、鉄道事故調査に関する幅広い専門的分野について意見交換が行われました。
 松本委員からは、わが国で発生した突風、豪雨、地震などの自然災害に起因する事故(羽越線列車脱線事故、京浜急行列車脱線事故、新幹線における地震対策など)についての発表が行われ、各国から高い関心が寄せられました。
 また、会議では、セーフティマネジメント、シミュレーション技術、脱線事故、トンネル火災、踏切事故などについての発表やワークショップが行われました。
 鉄道部門としては、数少ない国際会議でありますが、各国が共通に抱えている問題や国により異なる状況などに関する情報交換は非常に有益であり、今後とも積極的に参加していきたいと考えています。

3.「運輸安全委員会ダイジェスト」の発行

 次に、資料3-1をご覧下さい。
 運輸安全委員会では、同種事故の再発防止を目的として、事故事例、統計に基づく分析などをまとめた「運輸安全委員会ダイジェスト」を作成しており、隔月で発行しております。
 本日、運輸安全委員会ダイジェスト第11号「航空事故分析集 ヘリコプター事故の防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しましたので、ご紹介します。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料3-2をお配りしております。
 ここ数年、ヘリコプターの事故により多くの尊い人命が失われる事案が発生しました。また、中には死亡事故につながりかねない事案もありました。
 今般、ヘリコプターの安全をテーマとして過去のヘリの複数の事故を題材としてダイジェストをとりまとめました。改めてヘリコプターの運航者等をはじめとして航空界の皆様に周知を行うことにより、同種事故の未然防止に資することを期待しています。
 本号では、各種統計資料とともに、当委員会が行ったヘリコプター事故調査事例を6事例紹介しています。
 本号については、当委員会ホームページでの公表のほか、当委員会メールマガジンにおいてご案内しております。
 続いて、本日、「運輸安全委員会ダイジェスト(英語版)船舶事故分析集 酸欠・ガス中毒関連死傷事故の防止に向けて」(英語名称:Digest of Marine Accident Analyses : For prevention of “Fatal and Injury Accidents Caused by Oxygen Deficiency or Gas Poisoning”)を発行し、当委員会の英語版ホームページで公表しましたので、ご紹介します。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料3-3をお配りしております。
 英語版ダイジェストは、当委員会の業務改善アクションプランにおける具体的な取組みとして、海外向けの情報発信を強化することを目的に、昨年から作成を開始したものです。
 本英語版ダイジェストは、今年8月に発行した運輸安全委員会ダイジェスト第9号(日本語版)を元に英訳したもので、日本語版同様、各種統計資料とともに、当委員会が行った同種事故調査事例を4事例、さらには、事故調査の結果、発出した勧告等に対する改善施策等の実施報告、いわゆるフォローアップの状況の紹介を行っています。
 これまで発行した英語版ダイジェストは、国際シンポジウム等の場を通じて随時紹介を行っており、同種事故の再発防止に向けて大変有用な資料である旨の評価を得ております。
 本英語版ダイジェストについては、英語版ホームページでの公表のほか、引き続き、国際会議等の場で紹介を行い、当委員会の活動を海外に向けて積極的に発信してまいります。

4.一年を振り返って

 さて、今年はこれで最後の会見となります。
 特に今年は、運輸安全委員会が平成20年10月に設置されてから5周年を迎え、組織として節目の年となりました。委員並びに職員一同、運輸の安全性の向上のために貢献をするべく、気持ちを新たにしたところです。簡単ではありますが平成25年を振り返ってみたいと思います。
 はじめに、事故等調査の関連ですが、本年の事故等発生件数は、現時点でありますが、航空では10件の事故と8件の重大インシデント、鉄道では14件の事故と2件の重大インシデント、船舶では、東京で取り扱う重大な事故が16件、インシデントが1件発生しております。過去3年の平均と比べてみますと、航空及び鉄道は減少しており、船舶はほぼ同じとなっています。
 また、本年に発生しました主な事故等を各モードごとにみますと、航空では、1月16日に発生した全日空ボーイング787型機の高松空港における重大インシデントが挙げられます。
 当該事象発生の通知を受けた後、直ちに5名の調査官を指名し、現地に派遣致しました。その後、新たに2名の調査官の指名を行い7名に増員し、また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の専門家を専門委員としてお願いしております。その他の調査官も適宜支援にあたっており、当委員会の最重要課題の1つとして取り組んでおります。
 調査は、原因究明に向けて、今までにDFDRデータの取得、損傷したバッテリーのX線撮影及び詳細な分解調査、関連する技術資料の入手、また、バッテリーの充放電試験など各種の実験に取り組んでまいりました。現在、これら大量の調査資料の分析を中心として、原因やプロセスの解明に迫るべく取り組んでいるところです。
 これらの調査には、JAXAの協力をお願いし、また、米国国家運輸安全委員会(NTSB)と密接に連携して行ってきています。これらの機関との協力は、大変上手く機能しており、調査を進める上で大きな助けとなっております。
 年明けには、発生から1年を迎えることとなりますが、NTSBとさらに連携を含め、早期に報告書が公表できるよう全力を尽くしているところです。
 鉄道では、特に印象の強い事案としては、冒頭にコメントさせていただきましたが、9月19日に発生したJR貨物の函館線大沼駅での列車脱線事故がありました。
 この事故につきましては、軌道の検査及び修繕の体制も含めて様々な調査を行っています。
 JR北海道管内においては、このほか、本年8月17日にJR貨物の列車脱線事故が、1月7日及び7月6日にJR北海道の車両障害による重大インシデントが発生しており、昨年2月、4月及び9月に発生した列車脱線事故3件を含めて、現在、7件の事故等調査を行っていますが、鋭意調査を行い、早期に報告書を公表したいと考えています。
 船舶では、9月27日に伊豆大島西方沖において、貨物船JIA HUI(ジィア フイ)と、貨物船第十八栄福丸とが衝突し、第十八栄福丸が転覆、同船の乗組員6人全員が死亡するという痛ましい事故がありました。改めて乗組員の皆様のご冥福をお祈りします。
 本事故発生時に第十八栄福丸の乗組員全員が亡くなられていること、第十八栄福丸の船首方位に関する情報がないこと、船体も行方不明となっていることから、第十八栄福丸側の状況を調査することが困難な状況にはありますが、当委員会では、いままで入手した情報を精査し、衝突に至るまでの両船の状況をできる限り解明して同種事故の再発防止に資することができるよう努力してまいります。
 また、第十八栄福丸が、JIA HUIとの衝突後、比較的短時間で転覆に至っていることから、そのメカニズムを明らかにすることにより、同種事故発生時の被害の軽減に寄与できればと考えております。
 次に、本年、公表した報告書は、今月の公表予定がありますので最終的な数字ではありませんが、11月末までに、航空が21件、鉄道が19件、船舶は東京で扱った重大案件が23件の合計63件であります。そのほか、経過報告を1件(船舶1件)公表しております。
 また、勧告・意見等についてですが、勧告は昨年を上回る9件(航空2件、鉄道3件、船舶4件)、意見は2件(船舶2件)、安全勧告は3件(航空3件)を発出いたしました。本年発出した勧告のうち4件と安全勧告のうち1件については、講じた措置の報告を既に受けております。
 なお、意見につきましては、調査途中段階における意見として、貨物船NIKKEI TIGERと漁船堀栄丸の衝突事故に関し、10月に国土交通大臣と水産庁長官へ意見を述べましたが、両省庁からは船舶自動識別装置(AIS)の漁船への普及に向けた早速のご対応をいただいており、こうした検討の深化により海上安全の向上が実現することを期待しております。
 勧告、意見等については、必要な施策又は措置が確実に実施されることにより安全性の向上につながってまいりますので、しっかりフォローアップを取ってまいりたいと思います。勧告等のフォローアップの状況につきましては、見える化しホームページで公表しているところです。
 次に、業務改善の関連です。ご承知のとおり、私ども運輸安全委員会は、全員野球で業務改善に取り組んでおります。平成24年3月には、組織のミッションを明確化するとともに、「適確な事故調査の実施」、「適時適切な情報発信」、「被害者への配慮」、「組織基盤の充実」といった4つの行動指針を柱とする「業務改善アクションプラン」を策定しました。
 平成25年においても、これらに基づき、国民目線での事故等調査の実現に向け、取り組んでまいりました。
 特に本年は、事故等調査の成果を活用した情報提供に取り組んでおります。5月には、船舶交通のさらなる安全向上に資するため、地図上に過去の事故を表示させるのみならず、その海域が抱える危険性、リスクについて、事故の発生場所に重ねて表示させることができる、「船舶事故ハザードマップ」の運用を開始しました。船員の安全教育にも活用できることから、海運業・水産業に関わる方々など様々な海事関係者より歓迎していただいております。
 また、9月には、英語版も運用を開始しており、国際会議等でご紹介したところ、良い取り組みであるとの評価を頂いております。
 11月に開催した「第5回業務改善有識者会議」では、有識者の方々から、私どもの取り組みについて評価いただくとともに、引き続き、報告書の充実・高度化に努めるようご意見をいただきました。
 今後とも運輸安全委員会では、このアクションプランを着実に実施していくことにより、適確な事故調査の実施、適時適切な情報発信、被害者への配慮などを推進し、さらなる運輸の安全性の向上に貢献してまいりたいと考えております。

 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

5.質疑応答

(日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連)

問: 改ざんされたデータが提出されていたということがわかったわけですけども、調査の進捗ですとか、新たにわかった事実等あれば教えてください。
答: 今回のJR北海道による軌道検測データの改ざんを受けて、改めて私の所感を申し上げます。事故に関連する事業者においては、事故原因の究明及び再発防止に資するため、運輸安全委員会が行う事故調査に真摯に、誠実に協力していただかなければならないことは言うまでもありません。にもかかわらず、JR北海道においては、函館線列車脱線事故の発生直後に軌道の検測データを改ざんし、運輸安全委員会に提出するという行為に及びました。これは、事故調査の大前提となる事実そのものをゆがめるものであり、極めて言語道断であり、誠に遺憾であると言わざるを得ません。JR北海道に対しては、まず第一に、函館線列車脱線事故に関し、改ざんされた軌道検測データを提出したことについて、会社の認識をただすこととしております。また、本件改ざんに関し、一連の事実関係及びその経緯について、正確な説明を求めることといたします。さらに、本件も含め、現在調査中の他の事案においても、同様の事態が生じることの無いよう、JR北海道として、誠実かつ厳正に対処することを求めていきたいと考えております。データにつきましては、11月中旬以降、改ざんがないことの確認を求めているところでありますけども、なお未提出分がいくつかありまして、例えば補修実績や列車動揺検査の結果等について提出頂くよう督促をするとともに、これまでに提出されたデータについて、JR北海道に改めて真正なものであることの再確認を求めていくこととしております。運輸安全委員会としても、より厳正かつ慎重な事故調査に努めて参りたいと考えております。

問: 運輸安全委員会設置法には、調査の妨害に対して罰則規定があると思いますが、今後の対応として先程もご説明頂きましたけども、罰則とかそういったところまで検討されたりはしてないんでしょうか。
答: ご承知のとおり、我々の使命というのは、現時点において最優先すべきは、速やかな事故原因の究明であります。そのため、当委員会においては、JR北海道に対し、責任ある説明を求めるとともに、直ちに真正なデータの再提出を求め、各種資料、データ等の分析を推進するなど、厳正かつ慎重な事故調査に全力を挙げているところであります。このため、JR北海道からの説明を受けた上で、適切に対応してまいりたいと考えております。

問: 説明を求めるというお話ですが、タイミングとしましては早急に求めていくことになると思うんですが、具体的にはいつ頃でしょうか。
答: できるだけ急いでということでありますけども、ただ、当然のことながら正確に回答して頂かなくてはいけませんので、向こうの対応がどの程度になるかということを現在、勘案中でありまして、今すぐというわけには参りませんができるだけ早くお願いしていきたいということは伝えてあります。

問: こちらの方に呼んでということでしょうか。
答: 先日、JR北海道の部長がこういうことがありましたと説明に来られましたが、今後そういうことはあり得るとは思います。

問: 事故原因の調査過程でデータの改ざんが行われたことについても、報告書にまとめるべく調査をしていくことになるのでしょうか。
答: 報告書に入るかということですね。それは難しい話ですね。つまり、事故の後は我々の調査官も行って、計測しているわけですね。事故の前のデータについてはどこで事故が起こるかわからないですから、もちろんそこのデータは我々持っていないわけです。そこで、JR北海道が測ったデータを我々が求めてきたわけですけど、その結果が、今回改ざんされたものが最初は提出されたわけです。その後、正しいものが提出されたと我々は考えておりますが、それを使って今後は、事故の原因と再発防止の手段を考慮していくと、そういうことになるわけですね。その中で、データの改ざんうんぬんについて、報告書に書くかどうか、それは今後の調査の結果を見ないとなかなか言えないことではないかと思います。

問: ある意味、再発防止に向けた取組を無にするような、企業体質を如実に表した事例だというふうに思うんですけど、そういった意味でJR北海道の企業体質とかにも調査をしていくということでしょうか。
答: 調査の一つの結果としてですね、会社の体質まで辿る必要があるということになれば、もちろんそのような調査はしていくことになるかと思います。そういうことになれば、今度のデータはこのような変遷を経て得たものであるということは記述することになると思います。

問: 元々JR北海道から提出されたデータは、軌間が25ミリというもので、それが調査官が現地で調べたところでは37ミリという結果が出て、その37ミリという数字がですね、脱線の衝撃で広がった可能性があるというような話をしてましたけど、今回、39ミリという数字が事故前の数字として出てきたことについてですね、脱線と軌道の広がりとの因果関係というのはどのようにお考えですか。
答: 脱線前にJR北海道が測定した場所と、我々が脱線後に測ったところとの間には、同じ点ではなくて1m誤差があるんですね。同じ点を測っているということではないということはご了解頂きたいと思います。10日の午後にJR北海道の担当部長が来訪し、当委員会に対し、改ざんについての状況報告がありました。当委員会としても、その事実を確認するため、JR北海道から11日の夕刻に生データの提出を受け、どの箇所が改ざんされているのかなど、内容をしっかりと確認した上で、12日の発表となったものです。37ミリという点につきましては、事故後に当委員会がJR北海道に指示し、同社が計測器、トラックマスターですが、それを用いて正確に測定したものであります。このデータにつきましては、生データとの整合性を確認したところ、問題はありませんでした。また、両者の数値は、先程申しましたように1m違った箇所での計測データであります。なお、事故前の39ミリから事故後の37ミリに2ミリ減少していたとしても、一般論を申しますと、レールが元に戻ろうとする挙動により、数ミリであれば軌間拡大が減少する場合も考えられます。それはまた今後検討されていくものと思います。

問: 39ミリと37ミリの違いということも、それはそれで言われるとおりだと思うんですけど、JR北海道が言っている、43ミリに達すると非常に脱線の危険が高いと、これが39ミリというと、元々言っていた25ミリと比べるとかなり脱線の危険が高まるのではないかと思うんですが。
答: 確かにそういう見方はあると思いますが、43ミリという点については、まさに分析している段階でして、色々な数字が出てますが、それが脱線に影響があったかどうか等を調査している段階ですので、もう少しお待ち頂ければと思います。

問: 素人考えで行くと、軌間が広がっていたから脱線したという可能性が非常に高いのではないかと思うんですけどその辺りはどういう風にお考えですか。
答: ご指摘のように、基準値を超えていた、なおかつ、当初の発表されていた数値よりも大きかったということは私どもも確認しております。ただ、実際に脱線に至った経緯、メカニズムにつきましてはもう少し調査を進めていかなければ、現段階では申し上げることはできないというところです。数値を含めて、我々は極めて慎重にあたっているということをご理解頂ければと思います。

問: 鉄道局の監査で改ざんが判明して以降、運輸安全委員会としては説明を求めるというのはわかるんですけど、改めて現地に行かれて調べたり、改ざんの事実がわかってから調査のやり直しを現地に行って行うということはあるのでしょうか。
答: 現地に行って行うものがあるのかどうか、これは今後の調査の過程にもよりますけど、あり得るとしか今は申し上げることができないと思います。軌道のデータにつきましては、生データを提出してもらうという形で確認しておりますので、今後、必要が出てくればそういうことも考えていきたいと思っております。

問: 例えばですね。改ざんする場合もどこのどのパソコンでどのように改ざんしたのか、というのを現地に行って事実確認をするのが普通だと思うのですが、それも含めて説明だけでよろしいのですか。
答: その点については、まず責任ある説明を求めておりますので、その結果を踏まえて、また必要があれば判断をしたいと思います。

問: それはまだ今のところ考えてらっしゃらないということですか。
答: 責任ある回答ぶり如何ということだと思います。納得のいく説明かどうかということです。

問: 改ざんというのは姉歯の事件でもありましたけれども、データがあってどういうソフトで、どのように改ざんするかというのを見られた方がよろしいと思いますが。
答: 改ざんの仕方については、我々もそれなりに承知をしております。従って元データに当たらないと確認ができない、ということもわかっていまして、我々はいわゆる生データを出してくれということで、そこまで求めてですね、それで本当にそうなのかということは確認はしています。ただそれは全てについてではありませんので、必要なものについては同じようなことで確認をしていくということになろうと思います。まずは今回の件を踏まえてJR北海道に対して責任ある説明を求めるということです。今回の事態を踏まえた後での責任ある回答というのは重いと思っています。取れる生データを取り寄せ、我々自身として確認をしたいと考えています。例えばレールの事故前の形状のデータについては、当然要求していくことになると思いますが、それを行かなければ取れないのか、今後の先方からの回答次第だと思います。

問: 先程、委員長から、言語道断でこれまでにない極めて遺憾な事案だと言われましたが、今後の調査のあり方というか方法を変えなければならない、そういう点については、委員会の中でご議論があったのでしょうか。
答: 大変難しいところです。今後は脱線のメカニズムの解明を進めて原因の究明、或いは再発防止策の提案を行っていきたいと考えておりますけれども、その段階で仰るようなことが必要になりましたら、そういうこともありうると思います。一般的に言って、我々は数値があって、つまり工学的なデータがあればその辺の解析はできるわけです。従来は事故を起こした会社が間違った情報を提供するなどはとうてい考えていないことです。今度はそういうことじゃないということがわかりましたので、そのため、現地に出向いて測ることも必要になってくる可能性は否定できません。データの訂正があった場合は従来より深く細かい分析をしているので、訂正後のデータが不自然かどうかは比較的容易にチェックすることは可能です。

問: 今後の話しですね。
答: 今後の話しです。

問: JR大沼の脱線事故で改ざんに関与した3名のことですが、なぜやったのか、ということについて、JR北海道側から聞かれていることがあればお聞かせ願いたいのですが。
答: 今のところはそこまで聞いておりません。今我々が出している質問に対して、そこが回答書に含まれるかどうか、注目しているところではありますけれど、なぜやったかということが、我々の分析に直接効いてくるかどうか、それは何とも言えません。ただ、事実関係の数値データだけはきちんとしたものをもらわないといけない、でなければ我々の解析の立場がなくなるわけですから、事実関係をはっきりさせたい、ということが、まず最初であります。それを我々は求めているわけです。

問: JR北海道の補修の基準値が19ミリということですが、今回改ざんしても25ミリということで、オーバーしていることで、改ざんするにしてもしきれていないというか、中途半端な改ざんという印象を受けるのですが、なんでこんな数字なのかということについてはいかがでしょうか。
答: その辺の事情については、わからないとしか申し上げようがありません。必要があれば、状況について今後の調査の中で聞いていくことはできますが、本当のことがわかるかどうかはわかりません。

問: 先程の質問にもあった、この3名に直接調査官が聞き取りを行うとか、そういうお考えはございますか。
答: それはどうでしょうか、必要があればですけれども、今のところは科学的な数値が得られれば、我々の目的はまずは達成されるのですね。そこをまずは求めていくということですから、会わなければいけないということには、今すぐにはならないと思います。

問: 先程の未提出のデータ、例えば、列車動揺検査結果とかがあると言われましたが、JR側の提出が遅れているのか、何か事情があるのでしょうか。
答: 調査の中で、早い段階に要求したもの、調査の過程の中で段階を追って提出を求めているもの、いろいろで、私どもの依頼が遅れているものについては提出が遅れているものとかがありますので、ものによってです。

問: 今回のJR北海道の改ざん事案が発覚したから改めて求めたというよりは、以前から求めているものということですか。
答: ものによって段階を追ってやっておりますので、改ざんのためというものではなくて、一連の作業の中で調査が深まるのに応じて求めているものです。

問: 確認なのですが、JR北海道は過去に脱線事故を起こしておりまして、そのたびに運輸安全委員会の調査官が現地で調べているのですが、ここに改ざんデータが入っていないのか、過去に入っていないのかということについては如何ですか。
答: その件につきましては、先程申し上げたとおりでありまして、本日の資料1の2枚目を開けていただきますと、今現在調査しているものが、上から、事故では、3番、5番、18番、19番、21番、5件が全部脱線事故です。重大インシデントの中で、1番、2番がJR北海道に関するものです。この7件を現在調査中なわけです。この中にはもちろん、今問題になっている大沼の事故も入っているわけです。こういうのを現在調べているわけですが、この中で、現在調べているものに該当するものがあるかどうかということに関しては、データを全部ではないのですが、見直す必要があるものも出てくるかと思いますので、その点については、現在、照会中であります。

問: 現時点ではJR側は含まれていないという回答なのでしょうか。
答: 報告をもらうのはこれからです。

問: 7件の中に日本貨物が事業者のものもありますけれども、発生がJR北海道管内だということですね。
答: そういうことです。

問: これまでに調査が終了して、報告書にまとまっているJR北海道管内で起きた事故やインシデントの報告書に関して、前回の会見で特段見直すような必要はないだろうというようなお話でしたが、今回具体的に改ざんデータを提出したという、今回のケースを受けてもなお、その認識というのは変わっていないのでしょうか。
答: 運輸安全委員会になってから、JR北海道の関係では9件の報告書を出しております。いろいろ見ましたところ、データを変えた、今回のレール幅を変えたとかですね、そういうものに関するものはないと判断しております。

問: それはレールの問題だけではなくて、今回改ざんしたのはレールですが、何らかのものがあって、軌道の問題で脱線したといったトラブルではなくて、改ざんするというのは別にレールだけを彼らはするわけではなくて改ざんをしたくて改ざんしている可能性もあって、そういうレール以外のデータが改ざんされたり、その影響があるものというものを見直した上でのことなのでしょうか。
答: 前回も、「過去に行った調査について見直す必要はないのか。」、ということについてご指摘いただき、我々は「その必要はないと思っております。」と回答させてもらいました。もう少し詳しく9件、これらは全て報告書ベースですからホームページでご覧いただけますので、皆さんにもご確認をいただければと思います。内訳を見てみますと、9件中2件が信号工事のミスで、2件とも状況は違いますけれど、施工管理に問題があったとか配線が間違っていた、つなぐところが正しくなかったといったような、いわゆる信号工事のミスがらみの重大インシデントです。それから、雪の影響によるものが3件。1件は結果的に脱線事故ということで整理されておりますけれども、雪の関係で、専門的な用語で恐縮ですが、踏切のところで、フランジウェーが雪で押し固められて盛り上がり、そこに乗り上げたという乗り上げ脱線事故です。それから、雪でブレーキの伝達機構が固着してしまって作動しなかった、車両の問題です。それから3点目は、3月ということで少し雪が溶けてきて、融雪の関係で地下水が上昇して斜面が崩落し、それに乗り上げて、結果的に脱線したというのが3件目です。さらに、保守用の車両、具体的には除雪車が、短期間で除雪計画を作ったため、駅側と作業をする側とできっちり情報共有されていなかったことから事故が起きてしまった、という、軌間の拡大ではなくて、作業上の情報伝達の不備というふうに分析がされているものが1件。踏切事故がらみ、つまり直前にダンプが入ってきて、踏切内に停車し、それにぶつかって脱線したというものが1件。それから、走行中のドアが開いたという、これは重大インシデントです。これは車両の問題ということで、具体的にはボタンの接触が悪かったということが判明しています。最後は、皆さんご案内の例の石勝線のトンネルの中での脱線火災事故で、これは車輪の踏面管理が十分でなかったということであります。以上、全て現物に当たって、関係者の口述も得、事実に基づいて原因究明し、必要なものは再発防止の意見を出しているというものです。事故や重大インシデントの態様からして、事故原因究明に当たってデータが決定的な要素として介在することはなかったのではないか、ということでそういう判断をしているということであります。

問: 9件の内容の確認というのはいつ頃されたことになるのですか。
答: JR北海道の問題が出てきて以降ということです。

問: 改ざんの問題が、2段階で明らかになったわけですが、全体的な改ざんと今回の事故情報の改ざんの2段階で、10月末から11月あたりにいろいろな改ざんが出てきましたけれど、それ以降、これまでまとめた報告書を確認したということですか。
答: いえ、今回の事故、従って9月19日になりますが、そういう事故が起こったことを一つの契機としてこれまでの事故調査で終わっているものも現在進行中のものも含めて、関連性なりなんなり意識しながらやっていますので、その中で改めてどういうことが原因だったのか、ということを確認しているということです。

問: 今回、事故直後のデータの改ざんが明らかになったことで、9月19日に事故が起きてから2ヶ月半くらいですか、それまでやってきた調査というのがかなり無駄になったというか、元に戻らなければいけなくなったという、もちろん結果として改ざんが明らかになって真正なデータが届いて最終的な調査には影響はないのかもしれませんが、これまでの作業や労力にかなり無駄や影響があったということはどうでしょうか。
答: 調査官は向こうへ行きまして、事故後のレールの状況をきちんと把握して、それから車両の状態を把握しているんですね。事故前の状態がわからないからJR北海道からデータをもらっているわけです。それが改ざんされたということですね。だから、そこの点の、初期値が変わることによってどういうふうに影響が変わってくるか、これは今からの解析によるものでありまして、脱線そのものの物理的過程に対しての影響はそんなに大きいものではないと思います。ただ時期的に遅れることは確かですけれども。むしろ問題になるのはJR北海道の体制の問題で、なぜ、そういうことになったのか、ということを調査する必要があれば調べないといけないと思います。例えば福知山線の脱線事故がありましたけれど、総合安全対策委員会の内容にまで入って、いろいろ事故に与えた影響も解析してあります。報告書に書いてあるとおりです。そこまでやる必要があるかどうか、今後の問題として、そういう点も頭に入れながら解析を進めていきたいと思っています。

問: 当初事故直後の記者会見では、25だったのが37になっているのかもしれないということで、それが脱線の力によって広がったのか、それとも3ヶ月間急激に広がったのかというのも分析の一つのポイントと思うのですが、調査を進めていく上での推論の建て方というのが、異なってしまったというか、解析までには至ってないのかもしれませんけれども、そういう見立てで調査を進めていくということに影響があったということはありませんか。
答: もちろんそうです。先程言った初期条件というのはそういうことでありまして、どこから始めるかということなんですね。現在起こったことから過去に遡るというやり方ももちろんあるわけです。今回の件は、その初期条件が大きく変わったということです。

資料

このページのトップへ