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委員長記者会見要旨(平成25年10月23日)

平成25年10月23日(水)14:00~14:52
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 事故調査の進捗状況をご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

(1)日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連

 先月19日(木)に発生しましたJR貨物 函館線大沼駅構内 列車脱線事故については、現在、調査を継続しており、特段申し上げられるものはございませんが、できるだけ早期に原因究明を行うように、引き続き、鋭意調査を行って参りたいと考えております。

(2)貨物船JIA HUI貨物船第十八栄福丸衝突事故関連

 続いて、9月27日(金)01時23分ごろ伊豆大島西方沖で発生しました貨物船JIA HUI(ジィア フイ)と貨物船第十八栄福丸の衝突事故について、調査の進捗状況を報告させていただきますが、まず、亡くなられた第十八栄福丸乗組員のご冥福を心からお祈りいたします。
 それでは、資料1をご覧下さい。本事故は、伊豆大島西方沖において、南西進中の貨物船JIA HUIと北東進中の貨物船第十八栄福丸が衝突し、第十八栄福丸が転覆したものです。その結果、第十八栄福丸の乗組員6人全員が死亡し、JIA HUIの船首部外板に破口(はこう)、凹損(おうそん)等を生じました。
 資料の2ページに、JIA HUIと第十八栄福丸の主要目及び写真を示しております。
 資料の3ページに、JIA HUI船首部の損傷写真を示しております。上の写真が正面から、左下の写真が右舷側から、右下の写真が左舷側からそれぞれ撮ったものです。
 当委員会は、本事故発生当日、船舶事故調査官3人を現地に派遣し、JIA HUIの乗組員からの口述聴取、損傷状況等の初動調査を行いました。その後、第十八栄福丸の関係者、事故発生当時に近くを航行していたフェリーの船長等からの口述聴取を行い、現在、入手した情報を整理しながら、追加調査を行っているところです。
 資料の4ページに、船舶自動識別装置(AIS)の情報記録による両船及び近くを航行していたフェリーの運航状況を示しております。ご覧のように、衝突の約8分前(01時15分)にJIA HUIが約10度左転し、ほぼ同じ頃に第十八栄福丸が僅かに右転しております。このときの両船間の距離は、約2.8マイルでした。その結果、両船がより接近する状況となっております。
 当委員会では、両船の操船状況等について、更に必要な調査を行い、できる限り早期に報告書を公表したいと考えております。
 なお、資料の5ページに、船舶事故ハザードマップによる伊豆大島西方沖での衝突事故発生場所を示しております。緑の×印は、当委員会発足後に調査した事故発生場所、赤の×印は、当委員会発足前の事故発生場所です。また、格子状に色づけしたものは、交通量を示しており、青色は交通量の多いところです。ご覧のように、伊豆大島西方沖では衝突事故が多く発生しております。伊豆大島西岸に元町港とありますが、今回の事故はその西方となります。
 なお、今回の事故と過去の事故との類似性についても、調査したいと考えております。

(3)その他の調査の進捗状況

 次に現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させていただきますが詳細は、資料2をご覧下さい。

 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

2.質疑応答

(日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連)

問: 先程、この1ヶ月で特に言えることがないというお話だったのですけど、調査結果として新たにわかったもの、公表できるようなものがなかったとしても、調査はしてらっしゃると思うんですが、この1ヶ月間でどの様な調査を進めてこられたのか、どういう観点に注目されているのか、その辺りいかがでしょうか。
答: その点に関しましては、現在調査継続中でありまして、その内容については今回発言を差し控えさせて頂きたいと思います。ただし、おっしゃるように今回の件は色々なことがありまして、一般論として我々がどういう立場で調査をしているのかということを申し上げたいと思います。ご承知のとおり、私ども運輸安全委員会は、航空・鉄道・船舶の3モードにおいて、事故等の原因究明・再発防止機能を強化し、被害者への情報提供を充実させるため、平成20年に設置されたものでありますが、大臣等関係行政機関や原因関係者に対する勧告・意見を発出する強い権限を与えられております。また、平成24年3月に定めた当委員会のミッション、行動指針及び業務改善アクションプランに従い、これまでも、組織問題といった事故の背景にまで深く掘り下げた、科学的かつ客観的な事故調査を実施するとともに、事故防止や被害軽減に寄与するため、勧告等の提言の発出を積極的に行うとともに、関係者の取組みについてフォローアップしてきているところです。今後とも、事故防止及び被害軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させるため、運輸安全委員会といたしましては、適確な事故調査の実施、適時適切な提言の発出に努めてまいる所存です。このような信念で今後とも進めて参りたいと思っております。

問: 運輸安全委員会がそういう役割を持っていらっしゃるということは重々承知なんですけども、この1ヶ月間で例えばですね、経営側への聞き取りをするだとか、口述内容は最後まで言えないということは承知してますが、どういった項目を調べてきているということは、それぐらいはいかがでしょうか。また、もしこれが差し控えるということであればその理由についてお聞かせください。
答: 運輸安全委員会といたしましては、これまでに入手した資料の取り纏めや、聴取しました口述等の整理を行い、原因究明のための分析を鋭意行いたいと考えております。更に、適時適切に必要な調査を行って参りたい、また、いち早く報告書の取り纏めを行って参りたいと考えておりますが、内容についてはこれまで申し上げたとおりでありまして、現在分析中でありますので、現時点で公表するのは差し控えさせて頂きたいと思いますのでご了承ください。

問: そうすると、新たに例えば現場を調べるとかですね、関係者に聴取をするというのは、それはこの1ヶ月では無いということなのでしょうか。
答: 今後、分析の結果を含めてですね、その結果もっと調査が必要であるということであればそういうことが出てくる可能性はあります。

問: 前回の定例会見では組織的な問題も含めて調査したいとのお考えを示しておられましたが、それについて方針は変わっていないのかということと、調査自体は本社も含めて終えられたんですか。
答: 運輸安全委員会としてはそのようなことも適時適切に必要な調査を行って参りたいと考えております。いずれ、状況次第で必要になればそういうことを行うことはもちろんあり得るということです。

問: 現段階では組織的な問題の観点からは、本社に対しては調査は行っていないと。
答: 今のところ、そういった観点からの本社に対する調査は行っておりません。

問: JR北海道を巡っては、例えば過去に運輸安全委員会の勧告ではないんですけど、報告書の中にこんなことを検討したらいいとか指摘されていた内容を6年間ぐらい放置していて、北海道運輸局にいわれてやっと改善した、雪崩の問題とかそういう事案があったんですけど、いわれたことをやらないとか、運輸安全委員会の調査にも関わってくるレール幅の問題も内規を守っていなかったと、自分のところで会見して認めている訳ですけども、そういう問題について、運輸安全委員会は過去の件についてはどういう風に考えていますか。
答: 今おっしゃったところでですね、運輸安全委員会は平成20年10月に発足したのですが、それ以降にJR北海道が関係した事故及び重大インシデントを何件報告書にまとめているかというと、9件ありまして、それぞれ報告書を発出しておりますので、もしご覧になりたければ我々のホームページで見ることが出来ますので参考にして頂きたいと思います。その中にいくつか勧告も出ておりますし、それに対する回答を受け取っておりまして、例えばですね、平成23年5月27日に列車脱線事故が、石勝線の清風山信号場構内で起こっておりますが、これはJR北海道に勧告を行っております。平成25年8月9日に実施計画書が提出されており、勧告を反映した内容になっておりましたので、これを公表したところであり、それに従ったことが行われるものと考えております。その他にもいくつかありますが、現在までのところ、我々が所見なり勧告を出したものに対しては対応が取られていると考えております。また、現在7件が調査中であります。

問: 例えば過去に出した勧告とか検討とかに対してやっていれば防げたものがあるかどうかについては。
答: その点については十分には確かめておりませんが、それぞれ状況が違うと思います。先程申しました9件とですね、現在調べておりますのは、お配りした資料の2を見て頂きますと、鉄道調査進捗状況というのがありますね。これでJR北海道が関連しているのが、まず事故についてがナンバー1、3、16、17、19、それから重大インシデントが1、2とありまして、事故等のカテゴリーとしては、それぞれ列車脱線事故とか車両障害と呼んではいますが、それが先程申しました9件の過去のものと、事故等の原因や再発防止の観点において密接な関係があるかどうかというのは詳しく検証してみないと何とも言えないということです。

問: 全体を見ていると旅客の中でJR北海道が占める割合が多いような気もするんですけど、そこら辺については何かお考えはありますか。
答: 特にどうしてだということはできませんが、確かに統計上は多いような感じは受けますね、ということしか申し上げられません。

問: 9月19日の脱線によって明らかになったことに、レールの異常放置があったが、それは今ここに書いてある、脱線事故が5件あったと思うのですが、今までの4件というのは、異常放置の関連というのは調べてみたのでしょうか。
答: 今まで、レールの状況については調べておりますが、異常放置との関連で調べたというものではありません。今回の軌間が拡大していたことについても、脱線前に起こったのか、それとも脱線したから広がったのか、それを現在解析中であります。

問: レール異常放置は270カ所で云々とあり、それと今まで起きた4件の脱線事故の関連というのは、調べているのですか。
答: 脱線事故といってもいろいろな原因があり、軌間だけではないということです。従って、必要があれば調べることになるということです。

問: 今はまだ調べていないということですか。
答: 現時点では結論は出せません。

問: 必要があればということは、どういう展開になったら必要になるということでしょうか。
答: 例えば今度の事故を調べていって、ここがこれだけ軌間がずれていた、これが事故前に開いていたとなれば、果たして同じような事故が起こっていたかどうか、それを我々が調べたかどうか、その辺から調べていくことになると思います。基本的には個別に調べておりますので、なかなか相互関係を見つけるというのは難しいと思います。

問: これまでのJR北海道のですね、事故又は重大インシデントについて、それぞれ再発防止のための実施計画書等が提出されていますか。今後、組織問題についても踏み込んで調べていくというような過程の中で、そういった過去のものをちゃんと実施していたかどうかというところも確認していく作業というのはあり得るのかどうかということです。
答: ちょっと難しいですね。フォローアップという、つまり、今まで起きた事故の勧告、意見に対する再発防止策ということについては先程申しましたように、もう出ているものについてはちゃんと我々がチェックしています。相互の関係がどうかということについては、これはなかなか難しいということです。つまり、組織体制の問題等にまで踏み込めるかどうか、それは非常に難しい話だと思います。

問: 本件でということでもないんですけど、冒頭、北海道の調査で1ヶ月間、何があったかわからないというような印象を受けたんですけど、全くわかったことが何もないというか、わかっていても話すことが何もないということの説明がですね、ちょっと信じ難いと。今までの、例えば中間報告とか1年くらい経ってから出すと思うんですけど、それでやったって1ヶ月、色々な動きがあるはずで、それを話すことは何もないというのはですね、ここだけではなく、多くの国民が本当に何もないのかと思ってですね、例えば船舶事故の、警察の話じゃないですけど、捜査機関が出している発信の量と比べると、ここから発信してくる情報というのが、1ヶ月で何もないというのがちょっと国民から逆に不信感をね、何か本当かという不信感を与えて、良いことはないんじゃないかと思うんですけど。
答: 何もないと申し上げているのではなくて、分析中で、その分析の結果が出ていないから、この段階で発表すると誤解を招くおそれがある、従って言えませんということを申し上げているのです。

問: 取りあえず分析中ということなわけですね。
答: はい。そう理解して頂けるといいと思います。

(貨物船JIA HUI貨物船第十八栄福丸衝突事故関連)

問: 先程AISの記録を分析したところ、衝突の8分程前にそれぞれの船が進路を変えているというのがあるということでしたけども、JIA HUI号が左に約10度ずれているということで、どういうきっかけで左にずれたとか、そういうことは調査で明らかになっていますか。
答: JIA HUIには、自動操舵装置がなくて、常時、操舵手が手動で舵を取っておりました。船首の揺れ、つまりYAWING(ヨーイング)でありますが、自動操舵よりも手動操舵の方が大きいと一般的に言われておりますが、資料の2ページに示したJIA HUIの航跡でお分かりのように、特筆するような航跡の蛇行はありません。報道されているような、操船技術が未熟であったということは記録からは認められないという現状でございます。第十八栄福丸の方は皆さん亡くなっておりますけども、JIA HUIの乗組員等から更にいろいろな情報を得て、当時の操船状況について調査をしているところでございます。

問: 状況からすると、向かってくる船を見つけて転舵したのではないかと思慮されるんですけど、その辺りは何か。
答: それはなかなか難しいですね。航法の点からみますと、海上衝突予防法で定める、行会い船又は横切り船ですね、その航法の適用が考えられると思いますが、海上衝突予防法においては、行会い船については、2隻の船が真向かい又はほとんど真向かいに行き会う場合で、衝突するおそれがあるときは、それぞれ針路を右に転じることになっております。また、横切り船については、互いに進路を横切る場合で、衝突するおそれがあるときには、右舷側に相手船を見る船が避けることになっております。夜間においては、真向かい又はほとんど真向かいに行き会う場合か、それとも互いに進路を横切る場合かは、海上衝突予防法で定められた灯火がどのように見えるかによって判断します。今回の事故において、いずれの航法が適用になるかは、両船の相対的位置及び両船の船首方位が重要な情報となりますが、第十八栄福丸のAIS情報に船首方位がありませんので、これは簡易型のAISを積んでおりましたので、船首方位が実は記録されておりません。ということで、風や潮流の状況を調査し、それらの影響を考慮して判断することになります。ということで、現在、難しいそういう判断をする調査中でありますので、現在の段階ではどの航法が適用になるかということを申し上げることはできません。現状としては以上です。

問: 第十八栄福丸は転覆後、下田にえい航された後、台風の影響でえい航中に沈没したということですけど、これが今後の調査に何らかの影響を与えることはあるでしょうか。
答: 第十八栄福丸が引き起こされたところで船体等の調査を行う予定にしていましたが、これまでに行われた船体調査の情報、船体関係の図面等を用いて今後は必要な分析をせざるを得ないということになると思います。それから、乗組員全員が亡くなられておりますので、当直者からお話しを聞くことはできませんが、当直者の認識及び判断の結果としての船舶の動き、即ちAISの航跡がありますので、この情報等から何らかの分析ができればと考えております。結果についてはまだしばらくお待ち頂きたいということです。

問: 一般の方というか国民からすると、この新しい情報でどう受け止めればよいのでしょうか。このAISの情報提供を出して頂いたんですけども、これは即ちどういうことですか。
答: 例えばレーダーを積んでいる船があるわけですね。レーダーは、一定間隔で発射した電波の反射を捉えて他船を探知するものですから、船の動きが激しいとなかなか相手の動きがよくわからないんですね。AIS情報は、どこそこのどういう船がどういう風に航行してますよという情報を交信することが出来るんですね。だから今後そういう意味で非常に有益だと思っておりますので、簡易型にしろ、簡易型だと少し情報量が減りますけど、そういうものを一般的に使っておられるといいかなと思っているんですが、現在のところ確か500トン以上の船しかAIS装置を義務付けられていないんですね。こういう記録がないことがあるということは事実でございます。

問: 新しい話として、隣を航行していたフェリーが何か事故と関係があるかどうか書いてあるんですか。
答: その点については、このフェリーのことについては一部見ていたということはありますけど、現在調査中でありますのでこの件については今のところ触れることは出来ません。

問: 栄福丸の航跡を見るとフェリーと衝突まで併走しているし、栄福丸自体も回避行動をしていなかったということがわかるのですか。
答: それがなんと言えるかですね。先程申しましたように、01時18分あたりからちょっと右に舳先(へさき)を振っていますね。舳先というか進行方向を。これで見ると僅かですけどね。実際の船の動きから見るとどの程度だったかというのはちょっと私も実感が伴わないんですが。JIA HUIの方も、左の方に振っていました。行会い船の場合ですと、それぞれ右の方に避けることになるんですけどね、しかし、今回の場合はそうだったのかという判断も出来ないということで、その辺の状況を解析しているところが現状であります。
 栄福丸の方も少し右に進路を転じていますけれど、それが何故そうなったかというのは、乗組員の皆さんが亡くなっておられますので、現段階では何故かわかりません。これから両方の位置関係等を調査していく段階で、こうであったのではないかということが分かればと思っております。

問: JIA HUIの方は、3分刻みで示されてますけど、若干3分刻みの幅が違うように見えるんですが、これは誤差の範囲なんですか。速度が速くなったり遅くなったりとかそういう状況ではないということですか。
答: 誤差も入っているし、波もありますので。これは直線距離で描いてありますけど、時間はほぼ正確だと思いますが、ただ、通った距離がこのとおりかというと、平面距離に直しますとこうかどうかわからない、そういうことですね。

問: JIA HUIの方は10度避けたというか左に舳先を向けたということですけど、栄福丸の方は何度くらいなのでしょうか。
答: 栄福丸のAIS情報には船首方位がないので、何度切ったかはわかりません。ただ、結果としてこのような航跡であったというところで、数字がわからないものですから、わずかにという表現を使わせて頂いております。

問: 10度というのもわからないと。
答: はい、わかりません。船というのは航跡どおりに船首が向いて走るものではありません。風とか波の影響を受けて少し横に滑るようにして動きますので、何度舵を取ったか、何度針路を転じたか今の段階ではわかりません。

問: JIA HUIの方の10度というのは、上から見て10度傾いてるというのではなくて、実際に舵を切った角度が出ている、それが10度だったということですか。
答: 実際に何度に設定したかというのは、やはり船は振れますので、先程YAWINGという話がありましたけど、そういう状況も考慮して大体約10度左転したということをご理解お願いいたします。

問: これが仮に、JIA HUIが衝突を回避するための回避行動だったとした場合に、この10度というのは角度的に適切であったかどうかというのはいかがですか。
答: それはこれからの分析になります。灯火がどういう風に見えていたか、これから調べるところです。舷灯は、それぞれ正船首から3度くらい反対側でも灯りが見えることになっておりますので。その辺も考慮して、この時どういう風に見えたか、それから栄福丸がどちらを向いていたか、これから調査して行きますので、その結果、最終報告書でその辺りがはっきりと書けるかもしれないと考えております。

問: 左に切るべきだったのか右に切るべきだったのかということはわからないと思うんですが、仮に右に切っていたら衝突を回避できたという航跡になっているのでしょうか。
答: そういうことが結論付けられるかどうか、それは今からの解析だと思います。可能性の一つだと思います。それから、海上衝突予防法で定められている灯火というのはどうなっているのかというと、JIA HUI及び第十八栄福丸の場合、前部及び後部マストにそれぞれ船首方を照らす白色の灯火を、それからブリッジですね、船橋の左舷側に船首方を照らす紅色の灯火を、それから右舷側に船首方を照らす緑色の灯火を、それから船尾に船尾方を照らす白色の灯火を表示することになっております。そういう状況であります。

問: お互いが2.8マイル、だいたい6kmくらいですね、そのくらいでお互いが向かい合ったところからJIA HUIの方が回避行動をとっている、この距離については、何か評価されているのでしょうか。
答: それはこれからの調査事項です。船は、特に大きな船はレスポンスが遅いですよね。大きい方から小さい方の動きは比較的わかりやすいのですが、小さい方から大きい方を見ると、大きい船は舵を取っていても舵のレスポンスが遅いものですから、どう動いているのかわからない、ということが時々ありますので、誤判断を起こすことにも繋がりかねないな、という感じはしております。今後、解析をしていって出てくるかどうか、そういう点も視点の一つとして考えなければならないと思っております。

問: 一般的に言って、もう少し早い段階でどちらか動くかがはっきりすれば。
答: わかれば良かったのですね。灯火が見えていて。先程申しましたように、行会い船になっているのか、横切り船になっているのか、それぞれがどういうふうに判断したのかですね。それを解析・分析・推定していかなければいけないのです。
 船の灯火というのはルール的にどれくらいまで届かないといけないということがございまして、マスト灯が6マイル、緑と紅の舷灯がそれぞれ3マイル届かなければいけないというルールになっております。そういうこところから見ると、事故時の視界は良かったようですので、もう少し先から見えたかと思うのですが、そういう舷灯が見えてきて何らかの判断をされて、こういう結果になったのだろうと、ということは推測できると思います。

問: 第十八栄福丸の船首の向きがわからないということですが、この図を見る限りはどちらかというと行会いではないかと思うのですが、横切りの可能性もありますか。
答: それは解析途中ですので、推定は申し上げることはできません。ひとつ、延長線を延ばしていただくとわかるのですけれど、必ずしも行会いだったかどうかは、先程もいいましたように、船がどちらを向いていたかによってですね、それによって灯火の見え方が変わりますので、場合によってはマスト灯二つと両方の舷灯が見えたかもしれないし、見えなかったかもしれない、ということです。

問: 船首を別の方向に向けて、斜めにすべるように航行していた可能性もあるということですか。
答: そういうことです。

問: 船舶事故ハザードマップによる衝突事故の状況ですが、伊豆大島近くの海域で、例えば何年以降に合計何件の衝突事故が起きていて、これに関する注意喚起みたいなこれについて注意しましょうということを運輸安全委員会からしているのでしょうか。
答: ハザードマップのデータは平成元年からのものでございます。赤い印は委員会発足前、旧海難審判庁時代に調べられたデータで作られております。これだけ多くて、海難審判庁時代に何かやられたかということは記憶にございません。今回、私どもの方でハザードマップを作らせていただいて、データとして出すと、大島沖西方にはこれだけあると、このような状況ですので何か共通点があるのではないか、ということをこれから調べていきたいと思っております。

問: 二つあるのですが、青いところの水路は右側通行ですか。
答: 青い表示は交通量を示しています。

問: いわゆる水路は、狭まれた水路だと思うのですが。
答: ここに水路はありません。どこを走っても良いのです。

問: タンカーでもですか。
答: タンカーもです。どこを走ってもかまいません。ただし、行会いになった時は、右側に、船は通常右側航行していますので、それを守っていれば問題ありません。

問: もう一点は、確か、東京湾を航行する船舶は、あまりにも近づいた時に、海上保安庁の出先で、船舶に危険を知らせるセンターみたいなものがあったと思うのですが、今回機能しなかったのでしょうか。
答: そういうサービスは、ここでは行われていないのではないかと思います。

問: ここでは行われていないのですか。
答: 行われていないのではないかと思います。

問: AISの情報からは、双方の船がどのくらいの速度で走っていたかはわかるものなのでしょうか。
答: それはわかります。方向、対地速度はわかります。

問: 事故当時はそれぞれ何ノットだったのでしょうか。
答: JIA HUIの方が約9ノットくらい、栄福丸の方が11から12ノットくらいの間です。

問: 速度はずっと一定だったのでしょうか。
答: 出しているデータによりますと、それほど大きな減速というのは、衝突直前ぐらいまでなかったようです。ハザードマップについて、コメントを付け加えますと、現在、現時点においてハザードマップから得られた共通の要因がいくつかありまして、このようなところでは、交通量が非常に多くて相当事故が多く発生しているのですが、伊豆大島の西方で発生した事故等の共通要因としては、夜間であること、すれ違う態勢で接近していたことを挙げることができると思います。現在、共通するその他の要因についても調査をしているところであります。先程の夜間という点と、すれ違う態勢というところが割と共通点があるのではないか、というように考えられております。それから、このハザードマップは、平成元年からのデータになります。

問: 第十八栄福丸は498トンですが、AISの情報記録があるということは、簡易型のAISの記録が残っているということですか。
答: そうです。簡易型のAISです。

問: ハザードマップの関係で、先程質問がありましたが、周囲何平米の間で何件と言えますか。数えていくと重なっている部分があって、数え方によって各社によって誤差が出るのではないかと思うのですが。周囲何平米では、平成元年から何件と言えるのですか。または確定的な数字として運輸安全委員会としては何件と出せますか。
答: どうでしょうか。そういう数え方はしておりませんので。

問: 運輸安全委員会の調査なり統計で、この海域何平米においてはこれくらい起きていた、ということがわかった、だから、航行時には気をつけるように、ハザードマップを参照して航行に気をつけて欲しい、というような記事が期待されるわけです。ですが、「見ていただくとおり多く起きています。」ということだと、多く起きていることがわかった、というふうにしか我々書けなくて、それは多分載らないだろうな、となります。出されるのであれば、そういう出し方が望ましいのではないか、ということです。
答: こちらからこの範囲で何件というデータを出させていただきます。

問: 3ページの損傷状況として船首の写真が3枚ありましたけれど、これからわかることはどういうことなのでしょうか。
答: 今のところ、船首がぶつかっている、どういうふうにぶつかったかは、これからAISの衝突までの記録、衝突までの記録、相手船の損傷状況、等々を突き合わせていって、こういうふうになったのではないか、というのをこれから分析していく予定です。現在はここまでわかりましたということで出させていただいたので、他はまだ調査中ということでお願いします。

問: 船首がぶつかったというのは、傷がついているので、誰しも見ればわかることですが、専門家から見ると、この損傷状況というのは、何が今の段階で推測されるものなのか、についてはいかがでしょうか。
答: どこまで分析できているかわかりませんが、どういう角度かということですか。先程の記録に出ていますように、こうぶつかったのか、あるはこっちの船首がそうは向いていなくて、いずれにしろ、ぶつかった時はこういう形でぶつかったに違いない。ということはわかるということです。

問: どうぶつかったということなのでしょうか。これを見る限り。
答: それぞれが来る方向と傷がある方を見ると、栄福丸とJIA HUIが、アンカーが脱落する方向でぶつかったということがわかるのではないかと推定はされます。

問: 栄福丸はJIA HUIの、どちらかというと左舷の方にぶつかったということでよろしいのでしょうか。
答: 左舷ですね。そういうふうに見えますね。でも本当にそうかと、ぶつかったのは確かにそうだと思いますけれど、どこがぶつかったのかは言えないです。今回の事案で難しいのは、両舷に傷があるということです。右側にも傷がありますし、左側にも傷があります。錨がなくなったのは左側がなくなっているのですが、右側の傷はなぜできたのか、ということがまだ分析できていないので、現在はこういう損傷がありましたよということだけで、お許しいただければありがたいなと考えております。どうして右と左に傷ができたかということは、これから分析に入る予定です。

問: JIA HUIの方は、実物があるということで写真が撮れているのですが、栄福丸の調査状況は、現物の方は沈んでしまっていますけれど、その前に例えば海上保安庁の潜水調査があると思うのですが、JTSBとして栄福丸の船体調査がどのような状況かということを教えていただけますか。
答: 現在の状況を申し上げますと、第十八栄福丸が引き起こされたところで船体等の調査を行う予定にしていたのですが、残念ながら流れてしまいましたので、これまでに行われた船体調査の情報、船体関係の図面がありますので、それらを用いてできる限りの分析をすることになると思います。
 ひっくり返っている時にサルベージ会社等はどこに穴があいているということを調査しておりますので、そういうデータをいただく予定でおります。また、この船は2011年に建造されていますので、設計図、図面等が揃っていると思います。そういうものから第十八栄福丸も調査できると考えております。

問: そのサルベージ会社が調べたデータでは、どの辺りにぶつかっているか、例えばJIA HUIだと船首の方にかなり傷がありますけれども、第十八栄福丸のほうは例えば左舷の中央付近に大きな穴があいていたとかですね、その辺りはどうなのでしょうか。
答: まだ、正式にいただいて確認はしておりませんので、今日現在ではわかりません。調査中ということでお願いできればと思います。

問: ハザードマップの件ですが、先程委員長はこの海域で夜間にすれ違う場合での事故が多いとおっしゃいましたが、交通量が多い海域で、夜すれ違いざまに事故が起きるというのは、素人からすると当たり前かなという気がするのですが、ではなぜ夜多いのか、例えば潮の流れがこの時期変わるとか、そういうもう一歩踏み込んだことは。
答: そういう解析を今からしなければいけないのです。これは出来たばかりで、なぜこういう海域で多いのか、他の海域と合わせまして、総合的な検討もしなければいけない、と考えております。

問: 他の海域でも夜間のすれ違い事故は多いのでしょうか。
答: 具体的な数字は確認しておりません。特に数字は出しておりませんが、海域によっては、すれ違いではなくて、追い越しで衝突する場合もあります。一例ですが、例えば来島海峡では追い越しでぶつかっている例も結構あります。伊豆大島西方沖では、どういう訳か、夜間に、しかも向かい合うような形ですれ違うような状態で事故が起きています。今までの報告書を調べるとそういうことがわかってきました。それがなぜかというのは、これからの調査で明らかになればと考えております。

問: この事故の件で、検察庁が両方が右に回避する必要があるということで、起訴をしているのですが、そこからだいぶ後退した内容に聞こえてしまうのですが、見立てとしては同じような見立てなんですか。向こうは行会いだと認定して、起訴をしているのですけど。
答: それを調べるのが、実は、我々の役目です。

問: 起訴をしているわけですよね。
答: そうですか。独立してやっていますので。データは多分同じものだと思いますけれど、その解釈をどのようにされたかはわかりません。

問: 今後、検察庁の認定とは違う形で事故原因ということになる可能性が結構あるということですか。
答: 分析によってはそういうことになり得る可能性はあります。

問: 現在の見立てを伺っているのですが。
答: 可能性はあります。

問: ほぼ、そっちの方向としてやってるということで良いんですか。行会いだと。
答: それはどうでしょうか、結論が出ないと何とも申し上げられません。

問: 現時点ではわからないということですか。わかりました。
答: お互い独立してやっていますので。当委員会としては、今後の分析の結果を待たないといけないということです。

問: そうなんですが、世の中的にはそれで起訴されているという中で、あまりにも中途半端な情報かなと思ったんですけど。
答: 現在、分析中であるということです。

問: そこはまだわからないということですね。
答: 分析中です。

資料

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