平成25年8月28日(水)14:00~14:52
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、8月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、お手元の資料にありますように、事故調査の進捗状況として航空及び鉄道の案件各1件をご報告するとともに、勧告に基づき講じられた措置として8月9日に公表済みの案件3件を改めてご報告させていただきます。
はじめに8月上旬に発生しました航空重大インシデントについての調査状況をご報告いたします。資料1をご覧下さい。大韓航空所属のボーイング式737-900型、写真1に示すHL7599は、大韓航空763便として、本年8月5日、午後6時10分ごろ、乗客106名及び乗務員9名の合計115名が搭乗し、韓国の仁川国際空港を離陸しました。午後7時41分ごろ、目的地である新潟空港の滑走路10に着陸した際オーバーランし、滑走路東側の草地に前脚がはみ出た状態で停止しました。
搭乗者に負傷はありませんでしたが、写真2に示すように、オーバーランして航空機が自ら地上走行できなくなった場合に該当するため、航空重大インシデントとして取り扱われることとなりました。
本重大インシデント発生により滑走路(10/28)が閉鎖されましたが、夜間のうちに機体が移動され、翌6日の朝から同滑走路の運用が再開されました。
現在までの調査の状況ですが、8月6日に航空事故調査官3名を新潟空港に派遣し、初動調査を実施しました。
調査にあたっては、まず、オーバーランの現場を確認し、滑走路に残された痕跡等の調査を行いました。その後、機長、副操縦士、客室乗務員及び航空管制官の口述聴取を実施しました。8月6日夜には韓国の代表と新潟空港で合流しました。翌7日には機体の調査を行いましたが、損傷もなく、不具合は確認されませんでした。他に気象情報等の必要な資料を入手しました。また、本件の発生時間帯に合わせ、夜間に航空灯火の確認を行いました。8日には、当委員会において、飛行記録装置(DFDR)のデータ読み出し及び操縦室用音声記録装置(CVR)の音声再生作業を行い、当該便の離陸前から着陸後までの記録が残っていることを確認しました。CVR音声の再生には韓国の代表が立ち会いました。
次に、これまでの調査により判明した主な事実情報について、お知らせします。
機体の状況は、写真3をご覧下さい。左右の主脚は過走帯の舗装上に残っていました。前脚は草地にはみ出ていましたが、埋もれてはいませんでした。外観上、機体に損傷はなく、スポイラー、スラスト・リバーサー、ブレーキシステム等の不具合は確認されませんでした。
滑走路の状況については、写真4をご覧下さい。当該機が着陸した滑走路10の末端(28側)の約160m手前から、両主脚のタイヤ痕が残されていました。
DFDRデータから、現在までに判明した情報をお知らせします。付図をご覧下さい。
進入中、高度約1,000ftで自動操縦がオフにされました。当該機の総重量は、燃料を多く搭載していたため、約13万5千ポンドとやや重く、対気速度は約150ノットでした。右主脚が先に接地した後、左主脚が接地し、スポイラーが立ち上がって主車輪の自動ブレーキが作動し始めました。その後、スラスト・リバーサーが作動し、ほぼ一定の減速率が継続しました。対気速度80ノット付近からリバース推力が徐々に弱められ、スポイラーが格納されました。その後、一時的に減速率が弱まった後、対気速度60ノット付近(19時41分29秒ごろ)からブレーキ圧力が急激に上昇して減速しました。約8秒後の同37秒ごろ、機首が約4°下がって停止しました。
本件発生当時の新潟空港は、風向040°/風速4ノットで、滑走路10への着陸に支障はありませんでした。低い雲や降水はなく、視程も良い状況でした。
今後の主な調査としては、DFDRデータ及びCVR音声の詳細な解析、着陸の手順等に関する詳細な調査、管制交信記録等の情報収集などを予定しております。また新潟空港は、交差する2本の滑走路を有していますので、滑走路から離脱する際の影響等についても調査する予定です。
本件調査に当たっては、運航者国である韓国の代表及び機体の設計・製造国である米国の代表が指名されました。韓国の代表は、8月6日夜に来日して当委員会の調査に参加しております。それぞれの国の代表から必要な協力を得ながら、今後の調査を進めてまいります。
次に、平成25年8月17日(土)に発生しましたJR貨物 函館線 列車脱線事故の調査状況について報告します。資料2をご覧下さい。
列車脱線事故は、午前1時03分ごろに発生したもので、運転士は、運転中に前方の線路上に木などを発見し、非常ブレーキを使用し、停車後に確認すると、列車は脱線していました。
なお、列車の運転士に怪我はありませんでした。
調査は、事故発生当日の17日から18日に亘り、鉄道事故調査官2名を派遣して、軌道の調査や関係者からの聞き取り調査などを行いました。
6、7ページをご覧下さい。写真のように線路の道床(路盤)が流出していました。流出した箇所は、最大で線路方向に約18mありました。
次に9、10ページをご覧下さい。写真のように、列車は1両目(機関車)の中間台車全2軸並びに3両目及び4両目のそれぞれの前台車第2軸が脱線し、5両目の前台車第2軸がレールから浮き上がって脱線していました。
次に、12ページをご覧ください。機関車の前面の排障器にレール間隔とほぼ同じ間隔の窪みが2箇所ありました。
当委員会といたしましては、引き続き気象状況、事故現場における過去の災害等について情報収集を行うとともに、入手したこれらの資料の取り纏めを行い、原因究明のための分析を行って参りたいと考えております。
次に現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させて頂きますが詳細は、資料3をご覧下さい。
次に、勧告に基づき講じられた措置3件について、既に8月9日に公表したものですが、改めてご報告させていただきます。
資料4-1をご覧下さい。平成23年5月27 日に北海道旅客鉄道株式会社石勝線清風山信号場構内で発生した特急列車の脱線・火災事故については、平成25年5月31日に事故調査報告書の公表を行うとともに、原因関係者である北海道旅客鉄道株式会社に対し、勧告を行いました。
7月31日に同社から提出された実施計画では、既に、仕業検査及び交番検査において、車輪踏面に連続して発生している踏面擦傷・剥離を一つの剥離として扱うこととして検査に反映させており、また、車輪の踏面擦傷・剥離を検知する装置の導入を検討するとしています。
これらについては、勧告の内容を反映したものとなっていると考えており、今後は、実施計画に沿って実行していただくことになりますが、これにより、安全性の一層の向上に努めていただきたいと考えます。措置が完了した段階で、完了報告が提出されましたら改めてお知らせいたします。
資料4-2をご覧下さい。平成24年6月24日及び26日に沖縄で発生した旅客船第三あんえい号及び第三十八あんえい号の旅客負傷事故については、平成25年3月29日に事故調査報告書の公表を行うとともに、原因関係者である有限会社安栄観光に対し、勧告を行いました。
同社から提出された完了報告の内容は、比較的船体動揺の小さい後方座席への旅客の誘導、シートベルトを旅客が適切に着用できるための措置等を講じたものであり、勧告の内容を反映したものとなっていると考えております。
資料4-3をご覧下さい。平成24年2月7日に阪神港で発生したケミカルタンカー第二旭豊丸乗組員死亡事故については、平成25年4月26日に事故調査報告書の公表を行うとともに、原因関係者であるアスト株式会社に対し、勧告を行いました。
同社から提出された実施計画では、貨物タンク内に入る際の酸素濃度及びガス濃度計測などの注意事項について、乗組員に対する教育・指導を徹底させ、また、貨物タンク内に洗浄水が残っていた場合のタンククリーニングに関する作業手順を明確にして乗組員に教育・訓練を実施するなどとしています。
これらについては、勧告の内容を反映したものとなっていると考えており、今後は、実施計画に沿って実行していただくことになりますが、これにより、安全性の一層の向上に努めていただきたいと考えます。措置が完了した段階で、完了報告が提出されましたら改めてお知らせいたします。
私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
問: 今のところDFDRの記録から判明した様々な機能の働き等で、通常の着陸時やその後の停止時までの動作や作動と異なるものというのはありますか。
答: 今は事実情報しか報告できませんが、DFDR記録によりますと、資料を見て頂きたいんですが、41分17秒ごろスポイラーが格納されておりまして、それによりオートブレーキが解除され、マニュアルブレーキになったと考えられます。その後のブレーキ圧力は、パイロットがブレーキペダルをどの様に踏んだかという、踏み加減によります。それから、主脚のタイヤ跡が220メートルしか残ってないのですが、DFDRやCVRの記録と照合しながら、接地後の滑走路上の位置や速度などを推定し、ブレーキ作動と減速の状況を明らかにしたいと考えております。ということで現在はですね、原因を述べるには時期尚早でありまして、パイロットのミスかどうかも含め原因は未確定でありますので、今後は着陸時の操縦操作に焦点を当てつつ予断を持つことなく調査を進めて行きたいと考えております。
問: 資料の「これまでの調査により判明した主な情報」の(3)のですね、速度約80ノットでリバース推力が徐々に弱められた、という記載は、これはどういうことを意味しますか。
答: その辺を含めて解析をしなければいけません。
問: これはDFDRデータだと、何分の段階のどのパラメーターでしょうか。
答: 下から2段目のブレーキ圧力を見て頂きますと、10時40分50秒頃に青線が引っ張ってあります。接地と書いてありますね。ブレーキ圧力が上がって、あるところまで行って10時41分15秒でブレーキ圧力がまた減っていますね。それからずっと減ったままになっていて、10時41分30秒よりちょっと前からぐっと上がって、それからブレーキが強くなって、停止するまで続いていると。そんな状況になっているのですね。これがどうしてこうなったのかというところをパイロットの意見を含めて解析しなければならないと。
問: 通常であればここのブレーキ圧力というのは下がったりするものなのですか。
答: ずっと上がったままで止まってもいいと思うのですけどね。一旦下がったのがよくわからないですね。
問: 先程スポイラーの展開が終わってですね、オートブレーキが解除されてマニュアルになったと考えられるというのは、これは何秒の段階を指すのでしょうか。
答: スポイラーの記録を見て下さい。真ん中辺りにありますね。スポイラーが10時41分15秒頃、上がったり下がったりしていますが、ここのところでスポイラーが解除されているわけですね。それとブレーキ圧力が減っているのがちょうと同じくらいの時刻になっていますね。
問: 通常の着陸から停止時は、オートブレーキの場合マニュアルに切り替える必要はないのが普通でしょうか。
答: おそらくそれで済むと思うんですけどね。
問: なぜ解除に繋がるスポイラーの操作をしたのかということは今後のポイントなのでしょうか。
答: それを含めて今から解析しなければならないと思っております。
問: スポイラーとブレーキの関係ですけど、スポイラーはフットブレーキを踏んだら解除されるのではなくて、スポイラーをたたんだらマニュアルに戻るという理解でよろしいですか。
答: そうです。解除の仕方は色々ありますけれども、今回の場合はスポイラーをたたんだので解除されたということです。
問: それは手動でたたむのですか。
答: フットブレーキで解除するやり方もあります。この場合はスポイラーを格納したのでオートブレーキが解除されたということです。
問: 普通であればそのまま踏み込んで、解除されるのですね。
答: 解除されると今度はマニュアルで、フットブレーキを踏み込んで止めるということになります。
問: データを見ると、ほとんどブレーキ圧力がゼロにみえるんですが、これはブレーキを踏んでいなかったということを意味するのでしょうか。
答: そういうことだと思います。
問: データ的には踏んでいなかったとみられるのでしょうか。
答: パイロットは踏んでいなかった可能性があります。
問: パイロットはブレーキ操作はしてないということですね。
答: はい。してないということですね。最後の段階でブレーキ圧力が立ち上がっているところは明らかに踏み込んでいるということですね。
問: 資料にリバース推力が徐々に弱められたと書いてあるんですが、これはリバーサーを引っ張って手を離したという理解でよろしいですか。
答: スラスト・リバーサーは、下から4本目のグラフに、スラスト・リバーサーが立ち上がっている信号があります。リバーサー自体はずっと展開しているのですが、その下のところに燃料流量のデータがあります。ここは燃料流量が、途中から下げられていますので、スポイラーが展開するのですけど、逆噴射力は燃料流量が下がると同時に下がっていると、そういう結果ですね。
問: 普通だとリバーサーを引っ張ってやりますよね。
答: 10時41分10秒から15秒の間で燃料流量が下がっていますので、その段階でそういう操作をしたのだろうと。
問: 普通は引っ張りっぱなしですよね。
答: それはですね、滑走路の長さなどでパイロットが判断しますし、滑走路が充分長ければ早めにスラスト・リバーサーを下げてしまってもそれはよいわけで、そこはパイロットの判断になるわけです。新潟空港で正規の操作がどうだったかというのは、それを含めて比較しながら進めていきたいと思います。
問: フットブレーキとリバーサーの兼ね合いもあるでしょうけども、表現としては、十分に速度を落とさないうちにリバーサーを緩めたということですか。
答: 速度は、一番上の対地速度を見て頂きたいのですが、ゼロにはなってないですね。かなりスピードは落ちていると。
問: 速度が下がりきらないうちにブレーキ操作を一旦止めてしまったと。
答: 止めてしまったというか、スポイラーが閉じられて自動ブレーキが無くなっているんですね。そこら辺はですね、滑走路の距離とかパイロットの判断とか、システムについて現時点では異常は見つかっておりませんが、更に調査を進めていかなければいけませんし、今の時点で何が原因だったかということは言える段階ではないと。これからパイロットからの意見を聞いたりシステムを調べたりとか、今の段階ではお見せしている範囲のことしかわかってないです。
問: 当時着陸操作を行っていたのは機長なのかコーパイなのかどちらなのでしょうか。
答: 機長ですね。
問: スポイラーを格納した10時41分15秒ぐらいなんですけど、この時点でスポイラーを格納するということは特に異常ではないということでしょうか。
答: どうしてここで格納したかですね。
問: 通常はどうなんでしょうか。
答: 速度がある程度に落ちますとスポイラーが格納される仕組みになっていたのか、あるいは手動でスポイラーを格納したのか、その辺がちょっとよくわからないですね。
問: 自動で格納されたのか、手動なのかわからないと。
答: 手動かもしれないですね。その辺を含めてパイロットの意見を聞かないとと思っております。
問: ボイスレコーダーの内容が今回出ているんですけど、それを聞かれて何かめぼしいものはありますか。
答: ボイスレコーダーの内容については何とも申し上げられません。
問: パイロットの意見をこれから聞くとのおっしゃり方でしたけど、もう聴取はしてらっしゃるのでしょうか。
答: ある程度は聴取しております。
問: スポイラーを手動でやったのか自動なのかはわかりませんか。
答: その点も含めて、今後データの状況と合わせて、パイロットの意見の正確さを確かめないといけませんので。パイロットの意見を聞いてそれが正しいということにはなかなかならないですよね。記録と照合しないといけません。それには時間がかかると思います。
問: 滑走路の状況で、滑走路末端から約160mのところからタイヤ痕が残っているということだったのですが、これは10時41分30秒のブレーキ圧力を高めている、フットブレーキを踏んだと思われるのでしょうか。
答: 思われますね。滑走路上のタイヤ痕とこの記録とはですね、どう対応させたらよいか、それが難しいのです。どの程度の圧力になるとタイヤ痕ができるのかということは、その日の滑走路の状況にもよります。
問: 接地はどのくらいの場所ということはわかりませんか。
答: どこで接地したかということは、推測はできるのですが、まだ確定した段階ではありません。それも含めて検討中であると理解して頂いた方が良いと思います。
問: フットブレーキを踏んで、ブレーキ圧力が高まったのは速度60ノットということですよね。
答: そうですね。
問: ここで急減速を開始したということですね。
答: そうですね。
問: 本来であれば、滑走路末端から約160mで、速度はどれくらいになっていなければならないでしょうか。
答: 少なくとも滑走路の状況を見て、資料を見て頂くと誘導路B1がありますね。下の図を見て頂くと、ここから出なければならないわけです。これまでには止まっておいて欲しいわけです。
問: 通常B737型機で新潟空港の2500mの滑走路に着陸する場合、P3かB1か、それはパイロットによるのですか。
答: どこで着地したかによりますね。この場合は多分、誘導路B1を狙っていたのかなという気がいたしますが、それも含めて、どこで誘導路に出ようとしたのかということも含めて、パイロットの意志を確認しないといけません。
問: 誘導路に出る前に、一旦滑走路で止まる必要があったのでしょうか。惰性でそのまま出るということはありませんか。
答: そのまま出ることもあるようです。高速で出る場合は高速誘導路といって、角度が浅い誘導路がありますが、例えば成田空港のような大空港では、高速で脱出させるために斜めに誘導路がつくってあるのですが、このように直角に滑走路に接している誘導路については、停止するというわけではないですが、かなり速度を落として旋回して誘導路に入ります。
問: いずれにしても、60ノットという速度よりは低いのですよね。
答: 60ノットというと100km/hを超えていますから、ちょっと速すぎますね。
問: スポイラーが41分15秒でたたまれたのは、手動によるのか自動によるのかわからないということでした。その下のスラスト・リバーサーは点いたままで、燃料流量は下がっている、つまり出力が下がっていますが、これはパイロットの操作によるものですか。
答: 基本的には、スポイラーの格納や燃料流量の制御は、パイロットの操作によるものだと思います。
問: スポイラーもそうですか。
答: そうです。
問: ブレーキ圧力が接地から41分15秒くらいまで少し上がっています。つまり、ブレーキがかかっていますが、これは自動ブレーキによるものですか。
答: 多分、自動だろうと思います。ブレーキ圧力は滑走路の凹凸とも関係します。脚が押されたり、伸びたりすることが、恐らくブレーキ圧力に影響していると思います。そのあたりは、自動的にかかっていたブレーキ圧力がどれくらいで、それから滑走路との兼ね合いで考えなければなりません。
問: 手動のブレーキはかけていなかったのですか。
答: このときは恐らく自動だと思います。
問: ブレーキ圧力が40分50秒から55秒まで少し上がっていますが、この上がり具合は、通常より弱すぎるという数値幅ではないのですか。
答: それも含めて解析しなければわかりません。
問: スポイラーが格納されたとほぼ同時に、ブレーキ圧力が下がっていますが、その後は。
答: そのあとは、黄色の矢印がありますが、ここからは明らかにパイロットがブレーキを踏み込んでいるわけです。
問: スポイラーの格納と同時に先程のご説明だと自動ブレーキもかからなくなる。そのあとは、パイロットが手動ブレーキを踏むかどうかの判断で、それが圧力ほぼゼロということは、事実上ブレーキをかけていないということですか。
答: そうだと思います。
問: 急減速開始からぐっと上がっているのは、手動ブレーキを踏んでいるということですか。
答: そうです。
問: スポイラー格納のタイミングですが、通常の速度に減速される前に格納されているということですか。
答: もう少し減速してから格納しても良さそうな気はしますが。滑走路の状況とか機体重量等々、色んな条件でブレーキのかけ方は変わってまいりますので、通常との比較と言っても、一概には言い難い部分があります。そのあたりについては、DFDR等のデータやパイロットの口述、その他収集したデータをもとに、ブレーキのタイミングがどうだったのか、詳細に分析していく必要があると考えます。
問: スポイラーが格納されたときの速度は70ノットぐらいになるのですか。
答: 70ノットくらいありそうな気がしますね。
問: 一概には言いにくいということですが、大体どのくらいまで落ちているときにスポイラーは格納するものなのですか。
答: 機種にもよるかもしれません。
問: 70ノットでも構わないということですか。
答: そうですね。70ノットは禁止されているわけでもないですから。もともとグランドスポイラーの目的は、空気抵抗を増やすという意味もありますが、それよりも、航空機の翼面上の揚力を早く無くして、機体重量を車輪に担わせ、車輪の担っている抗力が大きくなると摩擦力が大きくなりますので、なるべく機体の重量をタイヤに落としてしてやろうということが目的です。
ただ、どこの時点で、グランドスポイラーをおろすのがいいのか、滑走路の距離とか、パイロットの判断ですから、ここで良いとか悪いとかということは、今の時点では言えません。いろんな状況を今後の調査でどうだったかをもって判断するしかないと思います。
滑走路、地上の様子や風など、色んな状況が関わってきますから、ここでこうだとはなかなか言いづらいところです。
問: 冒頭、総重量がやや重めだったというご説明がありましたが、それはどういうことを意味するのですか。
答: 減速がしにくいということだと思います。進入速度が普通よりは速めにする必要があるということです。
問: 今回、進入速度は通常だったのですよね。
答: この重量としては通常でした。
問: やや重めという説明だったが、通常よりどのくらい重かったということになるのでしょうか。
答: 多分、この飛行機は到着してしばらくすると引き返すのです。往復分の燃料を積んでいて重いのです。
問: 重量が重いと進入速度を早めにしないといけないのですか。
答: 重いと速度を早くしないといけないわけです。揚力は速度の関数で、重量を支えないといけないわけで、重量が重くなると、ある程度速度を出してやらないと、上向きの力が大きくならない、つまり空中にとまっていられなくなりますから。
問: 通常、ブレーキをかけたら、そのままずっとかけ続けなければならないものですか。
答: ブレーキの利き方によると思います。それをパイロットがどう判断するかではないでしょうか。どのくらいの速度に下がったから放しても良いとか、揚力が無くなった段階で車と同じになります。
問: 調査の経緯として、夜間に航空灯火の確認を行ったと説明されたが、これは何のために行われたのですか。
答: 滑走路がちゃんと見えていたかどうかを調査したもので、灯火に異常はありませんでした。
問: アメダスのデータがありますが、雨量自体はJR貨物がこれ以上の雨量だったら運休するとか、そういう内規があったかないか、あるとしたら、この雨量というのがどの程度のレベルだったのかということですが。
答: 8月9日にも同様の事象が起きています。どんな関係があるか、現在調査中です。当時の雨量として、運行を規制するという雨量ではございませんでした。
問: この現場ですが、過去にどのようなことがあったのか、今の段階で、聞き取り等で、同じところで土砂が流出したとか、そのような案件はあったのでしょうか。
答: 今回と同様、先ほど申し上げました8月9日と平成22年8月にも発生したと聞いています。
問: 同じ場所ですか。
答: 詳細については、これから調べるところですが、だいたい同じ場所だと聞いております。
問: それに対して何か対策はとられているのですか。
答: 前に起こった事象についてどう対策がとられたのかということは、現在調査中であります。
問: 脱線事故で、11ページと12ページに機関車の損傷状況というのを載せて頂いていますけれど、これを詳しく説明願います。何がどのように損傷しているかということをお願いします。
答: 脱線の状況については、9、10、11とありますが、9ページと10ページをご覧下さい。最後脱線したときの車輪の位置がどの位置にあるかというのを示したものです。実際脱線したものがどうなっているのかということを示したものが9ページです。11ページは4両目台車の下のPCマクラギが割れていたということを示しています。
問: 12ページの機関車の損傷は、写真に基づいて、どのような状況でこのような損傷が起きたのかということはいかがでしょうか。
答: 類推ですので、詳細な検討はこれから調査していくことになりますけれども、12ページにございます機関車の先頭部の石とかをはねる排障器が傷ついておりまして、それが2カ所へこんでいるのがちょうどレール幅であったということです。流木もありましたので、どういう風にしてこういう傷がついたのかということは解析してみないとよくわからないことがあります。排障器のところが凹んでいるのは、多分これはレールに接触したと思われます。これらがどういう風に影響したかは、今後きちんと時系列的に解析していかないとわからないことです。
問: 石勝線の勧告へのJR北海道の対策について報告が出ているのですが、運輸安全委員会としての受け止めがありましたら伺いたいのですが。
答: これは我々もいろいろ検討したのですが、実施計画の公表が出るJR北海道石勝線のみならず、他のところでも対策についてはいろいろ動きがあるかもしれないし、有益なところもあるだろうと思われます。そういう対策については早く公表して、他の事業者の役に立つようにした方が良いのではないか、と判断して会見前に発表しました。提出を受けた実施計画の内容については、我々が考えていることが十分に施される可能性があり、また、措置が完了した段階で改めて公表するということになります。ある程度我々としては満足したということです。