運輸安全委員会トップページ > 報道・会見 > 委員長記者会見 > 委員長記者会見要旨(平成25年7月24日)

委員長記者会見要旨(平成25年7月24日)

平成25年7月24日(水)14:00~14:30
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、7月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、事故調査の進捗状況報告として鉄道の案件を1件、勧告に基づき講じられた施策について船舶の案件を1件、運輸安全委員会年報2013の発行について、船舶事故ハザードマップについて、の順でご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

(1)JR北海道 函館線 重大インシデント(車両障害)

 平成25年7月6日(土)に発生しましたJR北海道 函館線 重大インシデントの調査状況について、報告します。資料1をご覧下さい。
 本重大インシデントは、15時40分ごろに発生したもので、運転士は、運転中に機関の稼働を示す表示が消灯するのを認め、列車を停止させました。その後、車両点検を行ったところ、前から4両目の機関(エンジン)付近で発煙しているのを認め、消火しました。
 なお、列車の乗客200名及び乗務員4名に怪我はありませんでした。
 調査は、重大インシデント発生後の8日から10日に亘り、鉄道事故調査官2名を派遣して、車両の調査や関係者からの聞き取り調査などを行いました。
 7ページをご覧下さい。列車の前から4両目の車両の図ですが、図のように車両中央部付近に機関が搭載されております。機関の破損箇所は、下の中央の写真のような穴が機関ブロックに開いていました。
 また、右の写真のように、この車両の左側面の車体の塗装が一部焦損していました。
 次に8ページをご覧下さい。機関ブロックの破損箇所は、図の赤色部分になります。左の写真では、赤色の丸印の箇所で、機関A列の丸4シリンダ付近の機関ブロックが破損していました。その丸4シリンダの内部におきましては、右の写真及び図の青色部のように、機関AB列のピストンの一部及び連接棒が破損して脱落していました。
 次に9ページをご覧下さい。機関には左の写真のような燃料噴射装置があります。それを分解したところ、右下の写真のスライジングブロック(sliding block)が左下の写真のように破損していました。これが破損しますと、機関への燃料噴射量の制御ができなくなります。
 今後の予定につきましては、スライジングブロックが破損した原因及び機関が破損に至るメカニズムの解明を行う等、調査の深度化を図り、収集した資料の分析を行って参りたいと考えております。

(2)その他の調査の進捗状況

 次に現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させて頂きますが詳細は、資料2をご覧下さい。

2.勧告に基づき講じられた施策

(旅客船第三あんえい号旅客負傷事故及び旅客船第三十八あんえい号旅客負傷事故関係)

 次に、国土交通大臣から、勧告に基づいて講じた施策についての通報がありましたので、ご紹介いたします。
 平成24年6月24日と26日に発生した旅客船第三あんえい号旅客負傷事故及び旅客船第三十八あんえい号旅客負傷事故についてでございます。資料3をご覧ください。
 これらの事故は、荒天時に第三あんえい号及び第三十八あんえい号が、沖縄県竹富町仲間港沖を航行中に船体が動揺した際、前部客室前方に着席していた旅客の身体が浮いて臀部から座席に落下した衝撃で腰椎を圧迫骨折したというものです。
 本調査結果につきましては、平成25年3月29日に調査報告書を公表するとともに、国土交通大臣及び原因関係者である有限会社安栄観光に対して勧告を行いました。
 今般、国土交通大臣から、運輸安全委員会設置法第26条第2項の規定により、勧告を踏まえて「小型高速船の安全対策の徹底について」の通達を発出し、関係地方運輸局等において、関係する事業者に対して周知指導を徹底し、訪船指導を行うこととした旨の通報を受けました。
 この通報につきましては、勧告の内容を反映したものになっております。

3.運輸安全委員会年報2013の発行について

 本日、「運輸安全委員会年報2013」を発行しましたので、ご案内いたします。
 お手元に年報を配付させて頂きましたのでご参照下さい。
 本年報は、昨年1年間の当委員会の活動状況をコンパクトに取りまとめたものでございます。国民の皆様には、当委員会のホームページから、全文ダウンロードできますので、各方面でご活用いただければ幸いでございます。
 2013年版の内容でございますが、当委員会も今年の10月に設立5年を迎えることとなり、当委員会業務改善有識者会議座長の関西大学安部教授から寄稿をいただき、掲載しております。
 寄稿文のほか、平成24年に発生した航空、鉄道、船舶の事故等の調査状況や公表した報告書の概要を紹介しております。
 24年に新たに調査対象となった事故、インシデントについて、
 航空分野では、航空事故が前年比4件増の18件、航空重大インシデントが前年比4件増の10件でありました。
 鉄道分野では、鉄道事故が前年比6件増の20件、鉄道重大インシデントが前年比3件増の5件でありました。
 船舶分野では、船舶事故が前年比17件減の981件、船舶インシデントが前年比23件増の165件でありました。
 これらの事故等につきましては、報道で大きく取り上げられたもの、すでに経過報告を公表したものもありますが、報告書作成に向けて、現在、鋭意、調査を進めているところでございます。
 事故防止の観点から、本年報もそうですが、事例などを紹介する「運輸安全委員会ダイジェスト」、地域の特色をテーマに絞って分析を行う「地方版分析集」などについて紹介しております。
 また、後ほどご紹介します「船舶事故ハザードマップ」についても掲載しております。
 続きまして、運輸関係の事故調査の分野は、国際的な調査協力や情報交換が進んでいます。国際機関である国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)の取組みと我が国の関わり、各国事故調査機関との協力や意見交換、海外研修への参加などについて紹介しております。
 このほか、昨年からコラム欄を設け、事故調査官の日頃の調査活動の苦労話などを紹介しております。是非、ご一読して頂ければと存じます。
 以上、概略をご紹介いたしましたが、本年報に関するご質問等がございましたら、当委員会事務局までお寄せください。
 なお、本年報の英語版を昨年から作成し、ホームページで公表することとしております。作成まで今しばらく時間がかかりますので、よろしくお願いいたします。

4. 船舶事故ハザードマップについて

 事故の再発防止に資するツールを社会に提供する取組みの一つとして、私どものホームページで、「船舶事故ハザードマップ」の運用を開始して約二ヶ月が経過しました。
 「地図から探せる事故とリスクと安全情報」をキャッチフレーズに、どこでどんな船舶事故が起こっているか、ひとめで分かるというもので、出航前の航路確認や船員の安全教育などに活用していただきたいと考えておりますが、より多くの方々に知っていただくため、このたび、ポスターを作成しました。資料4-1をご覧ください。
 地方運輸局の本局・支局・事務所、日本小型船舶検査機構の都道府県各支部などで掲示していただこうと考えております。
  また、これまでに、全国で行われている海難防止活動の会議などで、地方事務所が主体となってハザードマップの紹介をさせていただいておりますが、今般、公益財団法人九州運輸振興センター主催の海事振興セミナーが、来週の7月29日(月)、福岡市で開催され、「九州地区における船舶事故について~船舶事故ハザードマップから見る船舶事故発生状況~」と題し、海事関係者約100人の方々に対し、事務局長ほかが講演させていただくことになりました。資料4-2をご覧ください。
 ハザードマップを使って九州地方における船舶事故の状況やマップの活用方法などについてご説明する予定です。是非とも取材をしていただければと思います。
 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

5.質疑応答

(JR北海道函館線重大インシデント関連)

問: 今考えられる火災の原因なんですけど、どの様にお考えか説明してもらっていいですか。
答: 現在までに確認しました状況はですね、列車の前から4両目の機関が破損しており、機関ブロックに約95mm×約100mmの穴が開いており、潤滑油等が線路上に漏れていました。また、機関の12あるシリンダーのうち、AB列の4番目のシリンダー内にあるピストンの一部及び連接棒、コンロッドというものですが、それが破損してオイルパンに落下しており、ピストンヘッドが連接棒から外れてシリンダー内に残っていました。それから、機関に燃料を供給する燃料噴射ポンプにある燃料の噴射量を調節するための装置の部品であるスライジングブロックが破損していました。なお、列車が停止した山崎駅の約2km手前から同駅までの線路上に、潤滑油等の漏れた痕跡がありました。そのようなことがわかっておりますが、現在解析中でありますので、今後、調査により収集した各種データを分析して詳細な原因の究明を行って参りたいと考えているところであります。

問: JR北海道では他にもトラブルが多発してますけど、関連についてはどの様にお考えですか。
答: 現在、当委員会では、7月6日に函館線で発生しました機関付近から発煙する重大インシデントと、今年の1月7日に根室線で発生しました走行中の列車のドアが開いた重大インシデントについて調査を行っているところです。当委員会としましては、現在調査を行っています重大インシデント等について、鋭意調査を進め、原因の究明と再発防止策の検討を行って参ります。また、これ以外のインシデントについても、JR北海道において防止対策が着実に実施されることを期待しております。調査にかからないものでも必要があれば関連した情報を収集して参りたいと思っております。現在のところ申し上げられることは以上です。

問: 先程、今回の調査に関係ないものも関連して調査を進めていくという話ですが、4月にも同じようなスライジングブロックに関係する事故がありまして、そちらとの関連性について今どの程度調べられているのかということと、今回の安全対策についてのJR北海道への勧告等についてご検討されていますでしょうか。
答: 今おっしゃったように、今回と同様な機関の破損により出火する事象が昨年9月と本年4月に発生しておりますが、JR北海道からの情報によれば、今回の状況と似ているものと考えられます。ただ、この2件については現在我々調査をしておりませんが、必要があれば先程申しましたように、関連した情報を収集して今回の調査に役立てていきたいと考えております。

問: 勧告についてはいかがでしょうか。
答: それは調査が進んでいないと勧告が出来るものかどうか、あるいは前に起きたものと関連があるのかどうか、はっきり申し上げられませんので、まだ少し先になると思います。

問: スライジングブロックが破損して燃料が過剰に供給されて、それで回転数が上がったことによってピストンの破損に繋がって、さらにそのピストンが機関のカバーに当たって穴が開いたと、そういう理解でよろしいですか。
答: そのような理解でよろしいですね。資料の8ページをご覧頂ければわかると思いますが、スライジングブロックがですね、はめ合いの部分が破損していましたが、その原因につきましては今後、破断面の詳細な調査等を行い、原因を究明して参りたいと考えております。それから、スライジングブロックは、調速機の部品で、調速機は、機関が最高回転を超えないように、また、アイドリングを円滑に継続するために燃料噴射ポンプの噴射量を調節するものです。今回の機関の場合、スライジングブロックが破損すると、燃料を多く機関に供給するようになり、機関の回転数が高くなります。機関が過回転の状態になりまして、何らかの影響があって、このような事象が生じたものと考えられますが、現在そういうことを含めて、つまり、破損に至ったメカニズムを含めて調査を行っているところでありますので、今明確に申し上げることは出来ません。

問: 先程の関連で、スライジングブロック、今回の車両については、前回の事故を受けて新しく新品に取り替えたということですが、エンジンの内部の外壁といいますか、それが摩耗して薄くなっていたという見方をする専門家も一部いますが、そういった外壁についての調査みたいなものはいかがでしょうか。
答: それも含めて現在調査しているところであります。視野を広くしてですね、いろいろな面から調査をしたいと考えております。現在のところどの様な関係になっているかということは明確に申し上げることはできません。

問: 運輸安全委員会の調査の項目の中に、組織の問題点というところにまで踏み込んで調査をすることがありますが、今回頻発しているJR北海道の組織的問題点についても調べていく予定がありますか。
答: 調査の結果、JR北海道がいろいろなところで修理あるいは点検をして、それが組織の問題なのかどうか、検討をしてみないと判らないと思います。必要があればそういうこともあるとは思います。基本的には我々は、機械的な側面から見ていきますので、組織まで関連するかどうか、いろいろなところでの修理の過程、あるいは製造過程等々を含めて検討をしなければわかりませんので、おっしゃるようなことが検討できるか、仮に検討すると少し時間がかかると思います。

問: 昨年9月のトラブルでは、JR北海道が、原因究明のためにメーカーへ送ったスライジングブロックが行方不明になったということですが、今般の7月6日の事象については、部品や車両は運輸安全委員会の管理下に保全されたままでしょうか。
答: そうです。

問: 部品が無くなったとかそういうことはないですね。
答: 我々の手元にある限りは大丈夫だと思います。

問: 原因究明のための管理体制という点では杜撰かと思いますが、どのように思われますか。
答: いろいろと調べていくなかで過去に遡って調べてみることもあるでしょうが、現在のところは、そこまでいくかどうかはわからないとしか申しあげられません。

(全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連)

問: ボーイング787の高松の件ですが、調査の進捗状況と今後の見通しをお聞かせ下さい。
答: 現在、米国のNTSBと一緒にいろいろなことで協力していたのですが、現在はそれぞれの立場で調べるということで調査にかかっている段階です。ただ、明確にこういうことが判りましたということは、まだ、申し上げる段階ではありません。もう少し時間がかかると思います。

問: 現在はどういったことを中心に調査を進めてらっしゃるのでしょうか。
答: もちろん、例の電池がどうなったか、80項目のものがボーイングの方でまとめられて、我々の検討結果もその中から出るものではありませんけれど、果たしてどれが本当の根本原因になるものなのか、ということを現在調べている最中であります。

問: 先月もバッテリーそのものの問題というよりも、充電器との相性に関心を持ってらっしゃるという話がありましたけれども、そのあたりは。
答: そうです。それも調査の対象になると思います。調べているところでありますので、これがわかったということを今は申し上げられません。

問: 充電器との相性に問題があるとみて進めておられるのでしょうか。
答: 可能性はあるということです。

問: 見通しについてはいかがでしょうか。
答: そうですね。ちょっと時間がかかるかなという気がいたしております。NTSBも年内にという話がありましたが、その辺もどうなるかわかりませんので。我々もできるだけ早くと思っておりますが、もう少し時間がかかるのではないかという気がいたしております。

(エチオピア航空所属B787出火事案関連)

問: 英国のヒースロー空港でエチオピア航空の787が出火した案件ですけれど、イギリスの事故調査当局が、ELTの使用中止の勧告を出されましたけれども、まだFAAや日本の国交省は具体的に動き出そうかというところだと思うのですが。
答: FAAがELTについて、点検をした方がいいというか、すべきだというか、勧める内容を示しているということは、報道で聞いておりますが、FAAから我々には情報が来ておりません。今後、成り行きを見守っていきたいと思っています。ELTと申しますのは、emergency locator transmitter といいまして、遭難時などの際、振動のGをとらえてオンとなり信号を出すわけですね。緊急状態が起こりましたよという。それに使ってある電池系統との干渉等、あるいは配線の問題ということも言われておりますが、我々報道で聞いただけですので、実際にどういう内容になっているのかよくわかりません。日本では、垂直尾翼の根元に、胴体の中につけてあるものは外すが、もう一つ手動のものがありますので、それを積んでいれば運航して良いというふうなことも報道で聞いております。ただ、前のリチウムイオンバッテリーとの関連は多分ないと、これは個人的にですが、思っております。

問: 衝撃を感知して自動的に発信するELTというものは、そもそも新しい装置で、すべてついている航空機ばかりではないと。
答: 最近は広く使われていて、ヘリコプターにも使われています。

問: 航空法では設置が義務づけられていると聞いていますが。
答: 機体へ取り付ける自動式ELTは、平成20年に航空法が改正され、一定のものには付けるようになりました。どのような機体にどのようなタイプのELTの搭載が要求されるかの詳細については、運輸安全委員会が所管しているわけではないので、航空局にお問い合わせ願います。

問: 運輸安全委員会も外国の当局に勧告を出されることがあると思います。その場合、当局が、 必ずしも勧告どおりに措置を行うことはないと思うのですが、今回の英国航空事故調査局の勧告 と、FAAや国土交通省の反応をどのようにみておられますか。
答: 我々は事故自体を調査するのが役目であり、報道でそのようなことを聞いている限りですので、航空局にお尋ねいただくことが適当かと思います。英国の航空事故調査局がB787の製造国である米国の連邦航空局であるFAAに対して勧告をしており、FAAが何らかの措置をとりますと、FAAから全世界の航空当局に対していろんな指示が出てくるわけです。日本においては、そういう指示が航空局に対して出されるわけですが、それに関して運輸安全委員会は関与していません。

問: 手動のELTがあるとしても、尾翼の根元の自動のELTを止めた状態で飛行することについて、安全性についてはどのように考えますか。
答: ELTについては、航空機が製造年月日や型式などによって搭載するものが2個であったり1個であったり、或いは自動型であったりとか、いろいろ分かれています。それらは基本的にはICAOが決めており、それを受けて各国が判断して基準を決めています。日本は概ねICAOの基準のとおりですが、例えば、米国では定期便についてはELTを必ずしも搭載しなくていいということになっています。このため、詳細については航空局に確かめていただくことが適当かと思います。

資料

このページのトップへ