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委員長記者会見要旨(平成25年2月20日)

平成25年2月20日(水)14:00~14:55
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、2月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、事故調査の進捗状況報告として、航空の案件を1件、勧告に基づき講じられた措置として、カッター転覆事故に係る完了報告、北海道旅客鉄道(株)石勝線重大インシデントに係る実施計画について、ご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

(1)全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連

 はじめに、先月の1月16日に発生しました全日空の高松空港における重大インシデントについて、2月5日以降現在までに判明した状況をご報告します。資料1をご覧下さい。
 1ページ目は事案の概要です。2ページ目はバッテリーセルの説明です。
 3ページ目に2月5日の会見で説明した事項をまとめております。全てのセルに損傷が見られ、特に、3と6のセルの損傷が激しいこと、熱暴走が見られること、6つのセルの正極集電体に溶断が見られることなどを申し上げました。
 4ページ目に、セルの構成を示しております。セルの箱の内部は右図のようになっており、1つのセルの中に巻物になったセル・エレメントが3つ入り、その両端に正負の集電体が図のように配置されております。
 また、下の写真はセル・エレメントの様子を示しております。合成樹脂製で白く半透明のセパレーター2枚と、アルミ箔と銅箔それぞれの表面に薬剤を塗布した正極板、負極板の4層構造になっております。
 5ページ目にセル・エレメントの調査状況を示しております。1個約10メートルのセル・エレメントが合計24枚あり、これらの両面を一枚一枚専門家による見解を得ながら丹念に記録しています。
 6ページ目に、特に損傷の大きいセル3の分解調査の様子を示しております。上段右の写真ですが、セル3とセル6のステンレス製の箱が側面で溶着してしまったため、セル3の箱を切断して分解しました。上段中央の写真は正極端子部が欠落している様子を示しております。下段の3つの写真は内部の損傷も大きいことが分かります。
 7ページ目に、セル3のエレメントの様子を示しております。写真は、損傷の大きかった正極端子付近のエレメントの状況です。点線で囲まれた部分は、エレメントが欠損しています。また、矢印部分に白い帯状のものが見えます。いずれも高温により大きく損傷したものと考えられます。
 8ページ目に各セルの集電体と安全弁の状況を示しております。セル1、2、3と6、7、8の安全弁が開放していました。安全弁はセル内部の圧力が上昇したときに開き内部の圧力を解放するために各セルに設けられています。また、赤いバツ印は集電体の溶断のあった箇所を示しています。セル3、セル6では全ての正極集電体で溶断が見られ、セル1、セル2、セル7、セル8はそれぞれ2カ所で正極集電体の溶断が見られます。
 9ページ目に前回説明しました、セル5のケースにあいた穴の分析状況を示しております。電子顕微鏡により穴を観察したところ、セルの外側から内側に向けて穴があいた可能性が高いことが分かりました。右の写真に穴の位置に対応したエレメントを示します。小さな丸が穴の位置に対応します。この穴から扇状に熱が広がってエレメントが損傷した跡が見られます。現在、なぜ、このような穴があき、そこから熱損傷が広がったか調べているところです。
 次に各機器の調査状況を説明します。10ページ目に、バッテリーシステムの概念図を示しましたので、次のページからの各機器の調査状況の説明とあわせてご覧下さい。
 11ページ目にバッテリー充電器の調査状況を示しております。2月上旬に米国の製造者において、機能試験を行いましたが、特段の問題は認められませんでした。その後、16日、17日にアメリカのボーイング社においてバッテリー充電器と健全なバッテリーとの接続試験を行いました。いくつか動作条件を変えて、電圧、電流などの各パラメーターを計測したところです。試験結果については現在分析中です。
 12ページ目にバッテリー・モニタリング・ユニット(BMU)の調査状況を示します。1月26日、27日に藤沢の製造者でメインバッテリーに取り付けられていたBMUの調査を行いました。BMUは基板の損傷が激しく、動作試験を行うことが出来ませんでした。損傷状況を記録しましたが、損傷が大きいこともあり、これ以上調査を進めることは困難なところがあります。
 13ページ目ですが、フランスの会社が製造したコンタクターとバッテリー・ダイオード・モジュール(BDM)の調査をフランスの事故調査当局であるBEAに依頼しました。コンタクターは熱損傷があり動作試験は行えませんでした。分解調査を実施しましたが特段の所見は発見されていません。また、BDMについては、機能試験を実施しましたが特段の問題は報告されておりません。
 現在までの状況をまとめますと次の通りです。14ページ目です。まず、セル3の電極の損傷については、高温になったことにより生じたと考えられます。なぜ損傷したかは引き続き調査が必要です。
 次に、集電体の溶断についてですが、いずれもアルミ製の正極集電体に見られており、アルミが溶けるほどの高温にさらされたことが考えられます。高温になった理由として、集電体に大きな電流が流れたこと、セル内の熱暴走によって集電体が加熱されたことなどの可能性が考えられます。
 また、バッテリー外箱のアース線の溶断ですが、同機には落雷の履歴はありませんでした。アース線の溶断は外箱に電流が流れた可能性が考えられますが、なぜ、アース線を溶断させるほどの電流が流れたのかは引き続き調べる必要があります。
 次にDFDRの記録についてです。15ページにまとめてあります。メインバッテリーの電圧は31ボルトで推移していたものが、操縦室で異臭を感じた頃に、約10秒で11ボルトまで低下し、その後、上下を繰り返し最終的には10ボルトとなりました。DFDRの記録精度については、1ボルト単位で2秒ごととなっています。
 記録データの評価についてですが、BDMを通ることで約1ボルト低く計測されるため、バッテリーの電圧は32ボルトで、ほぼ満充電状態であったと考えられます。電圧が低下した後のDFDRのデータについては、次に示すように損傷したバッテリーの電圧を正しく示していたか慎重に検討する必要があります。
 16ページをご覧下さい。機体の調査時に、全てのスイッチが切ってあるにもかかわらず、ナビゲーションライトが点灯し続けるということがありました。APUバッテリーの電源コネクターを外したところ消灯しました。右の図を見て頂きたいのですがナビゲーションライトは、翼の両端と尾部にある灯火です。
 通常と異なり、メインバッテリーの母線にAPUバッテリーが回路を経由して繋がっていたことによるものと考えられ、このこととDFDRの記録との関係について更に調査分析を行う必要があります。
 最後に今後の調査について申し上げます。
 まず、バッテリーセルの分解調査を継続します。セル3の正極端子等の損傷状況の分析及び電子顕微鏡による観察や成分分析を進めていきます。また、アース断線と今回事案との関連性の調査を行います。
 次に、資料収集の分析を進めます。バッテリーの分解調査結果のほか、構成機器の調査結果が集まってきておりますし、DFDR等のデータや技術情報が集まってきておりますのでこれらの分析を行っていきます。また、バッテリーに適用された技術基準や実施された試験内容についても、今後、調査を行って参ります。
 さらに、条件をいくつか設定するなどしたバッテリーシステムの組み合わせ試験や事象の再現実験を検討します。
 これらを通じて根本原因の分析、検討を進め、出来るだけ早い原因究明に努めたいと考えています。

(2)その他の調査の進捗状況

 現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させて頂きますが詳細は、資料2をご覧下さい。

2.勧告に基づき講じられた措置

 続きまして、勧告に基づく措置の状況について、2件報告がありましたので、ご紹介いたします。

(1)カッター(船名なし)転覆事故に係る完了報告

 はじめに、平成22年6月18日に静岡県浜松市浜名湖北部で発生したカッターの転覆事故についてでございます。資料3をご覧ください。
 本事故は、静岡県三ヶ日青年の家における中学校の野外活動授業として生徒18人及び教諭2人が乗船したカッターが、風波が強くなってとう漕困難となり、モーターボートにえい航されて帰航中、左舷側に転覆し、船内に閉じ込められた生徒1人が死亡したというものです。
 本調査結果につきましては、平成24年1月27日に調査報告書を公表するとともに、原因関係者である静岡県教育委員会、(株)小学館集英社プロダクションに対して勧告を行いました。これを受けまして昨年7月の会見でもご紹介しましたとおり、両原因関係者から勧告に基づく実施計画について報告を受けたところです。
 今般、静岡県教育委員会から、実施計画に基づく措置の状況として、指定管理者である(株)小学館集英社プロダクションに対して、外部有識者や専門家等の意見を基にしたマニュアルを策定させ、その内容を県の安全対策委員会において確認するとともに、外部有識者や地元救助機関等の立会いの下、カッターのえい航訓練を行わせた旨の完了報告がありました。
 また、(株)小学館集英社プロダクションからは、海洋活動安全対策マニュアル等の策定、地元救助機関等との合同水難救助訓練の実施など、実施計画に基づいた対策を実施した旨の完了報告がありました。
 これらの完了報告につきましては、勧告の内容を反映したものになっておりますが、静岡県教育委員会及び(株)小学館集英社プロダクションにおいては、今後とも引き続き、より一層の安全性向上に努めて頂きたいと思います。

(2)北海道旅客鉄道(株)石勝線に係る実施計画

 次に、平成23年6月に北海道旅客鉄道株式会社の石勝線追分駅構内において発生した鉄道重大インシデントについてです。資料4をご覧下さい。
 まず、本重大インシデントについてですが、列車が駅から出発した際に、停止信号を表示すべき信号機が、進行を指示する表示のままだったインシデントが、平成23年6月14日から16日までの間に複数回発生したものです。
 本調査結果につきましては、平成24年11月30日に調査報告書を公表するとともに、同社に対して、輸送の安全を確保するために講ずべき措置を勧告したところですが、今般、勧告に基づく講ずべき措置の実施計画が提出されました。
 実施計画の内容については、関係社員に対する再発防止策を含んだ継続的な訓練教育の実施、工事施工に関する再点検などとなっており、勧告の内容を反映したものとなっております。
 今後は、実施計画に沿って実行して頂くことになりますが、これにより、安全性の一層の向上に努めて頂きたいと考えます。なお、措置が完了した段階で、完了報告が提出されましたら改めてお知らせいたします。
 以上、勧告に基づく措置状況について2件ご紹介しましたが、原因関係者への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施され、安全性の向上につながっていくことが肝要であると考えております。
 今後とも、当委員会としてはこのような取組みを重ねてまいりたいと思っております。
 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連)

問: 787の件でまとめて3つお伺いしたいんですが、まず1つ目が、エレメントの展開をされているとのことですけれど、例えばボストンの事案のように、内部ショートと思わしき、確定はしてないかもしれませんが、そういうような欠損とか痕跡があるのかというのが1つ目ですね。DFDRのメインバッテリーの電圧降下が10秒間起きていた、この10秒間というのはどういう風なことが分かるのかというのが2つ目です。3つ目は、APUの件で、DFDRは今解析中だとお伺いしているんですけど、電圧が下がっていたとかそういうのがなかったとか、誤配線とか、そういう目で見て分かるような不具合とか特異事象があったのか、まとめて3つですがお願いします。
答: まず第1番目の、本事案の原因は内部短絡ではないのかということでありますけれど、これはまだ分かっておりません。現時点では結論を出すことはなかなか難しいと思っております。しばらくお待ち頂きたい。

問: 痕跡も一切無いんですか。それともある程度怪しいのは見つかっているのでしょうか。
答: はっきりしていません。

問: はっきりしないということは、何か見つかっているのはあるということですか。
答: エレメントに変色痕があったということはあります。高温になって変色した可能性が考えられますけども、熱暴走の熱で変色したのか、あるいは内部短絡で変色したのか、また、セパレーターが損傷して電極同士が接触し変色したのか、まだ結論が出せないということです。

問: それはどこのエレメントになりますか。セル何番になりますか。
答: 変色痕は全てのエレメントで認められています。

問: 穴とかは見つかっていないですか。
答: セルの5番の外側から内側に向けて穴があいたというのがあります。穴がどういう風にあいたかについて、現在解析中であります。
DFDRの記録から、電圧が降下して11ボルトになっていますが、それが何を示すかというのは慎重に調査をしないといけないと思っています。事案の発生後、31ボルトから11ボルトへ約10秒で低下していますが、その落ち方も調査の対象になると思います。メインバッテリーの母線がAPUバッテリーの回路を経由して繋がっていたということが分かりましたので、DFDRの記録についてはその点も含めて慎重に検討をしていきたいと考えております。
それから、APUバッテリーのCTスキャンデータを詳細に調べた結果、画像上で2つのセルにわずかに膨らみのあることが認められたため、セルを取り出して調べることにしました。調査は、実際に膨らみがあるのかどうか、また、それが通常の状態と異なるのかどうか確認をすることから始めたいと思っています。APUバッテリーにはその他特段の損傷や異常は認められておりません。

問: APUバッテリーに関しては、なぜ繋がっているのかというのを今調べていらっしゃると思うんですけど、パッと見て分かるような誤配線とかそういう回路上の不具合とか、そういうのは無かったという理解でよろしいでしょうか。
答: 本来は繋がっていないはずです。10ページの概念図で、本件のバッテリーがありダイオードで止められています。これは逆流を防止するものです。こちら側にAPUバッテリーがあり、これからこう電流が流れてきたのではないかと考える。しかしダイオードがあるからこちらには電流が流れない。どうしてそういう配線になったのかということを調査しなければいけないということです。

問: これはホットバッテリーバスまでAPUの電流がきていたということですか。
答: ホットバッテリーバスは、HBBのことで、ここにはきていました。

問: メインバッテリーのDFDRの結果は、このホットバッテリーバスのところで測っているんですよね。
答: ちょっと先ですので、APUのところからきた電圧を測っていた可能性はあります。

問: APUから来ているものを含めてDFDRで測っていたかもしれないと。
答: おっしゃるとおりです。10ページの一番上にあるホットバッテリーバスに、APUは通常の配線では繋がってないんですが、この機体では繋がっていました。従って、DFDRの記録値がAPUバッテリーバスの電圧の影響を受けた可能性があるので、それを調査するということです。

問: 繋がっていたというのは、先程のAPUバッテリーを切ったらライトが消えたからということですか。それとも回路的なということですか。
答:スイッチを全部消しても翼端灯が点灯していた訳です。これはスイッチを切れば点灯しないはずのものが点灯していたと。点灯していたということはどこからか電流が供給されていたと。その電流の供給先は通常の配線ではない、繋がっていたAPUからの可能性があるということです。飛行中、ライトは点いています。その電源はエンジンの発電機によるもので、バッテリーによるものでないはずです。地上において、止まった時にこれが点いているのが発見された。本来こういう配線があっていいのかというところも含めて検討しているということであります。

問: 人為的な痕跡は無いということですか。回路の仕組み上、そうなっているということですか。APUを繋ぐときに配線ミスがあったとか、そういうことではないんですか。
答: なぜそういう配線があったのかということを含めて調べているということです。本来あるべき配線なのかどうか、その辺も含めて検討する必要があるということであります。

問: その関連ですが、そういう配線になったことについては、例えばボーイングとか全日空の方からの見解というのは何か。
答: このような配線になっていたということを通知しました。その配線についてはボーイングも認識しておりまして、それで対応措置というのも連絡されていると思います。

問: 対応措置というのはボーイングがそれを調べると言っていると、そういうことですか。
答: 通常運用されている機体の配線とは異なっているということを、全日空に対してもボーイングに対しても通知は行っています。

問: 今回トラブルが起きた機体がそうなっている、例えば他のトラブルが起きてない機体との比較で違うというところまで確認はされてないと。
答: それを含めて今から調査しなければいけないということです。

問: 通常の配線と違うということは、いつの段階で分かっていたんですか。
答: ライトが点いているということは高松の初動調査で分かったことですが、配線が通常と異なっていることに確信を持ったのは10日ぐらい前です。

問: 重大インシデント発生から1か月以上経過して、かなり調査の項目というのも多岐に渡ってきたように思えるんですけど、振り返って今後の調査の見通しというのを、改めてどういうご見解だということを伺えますか。
答: 色々調査してきて電流の流れは大体分かっては来たんですが、なぜそうなったのかというところはこれからです。今は本当に何が起こったのかということを調べています。いつまでにどうかということはなかなか難しいものであります。しかも調査する場所が日本だけではありませんし、これを造った製造会社もありますし、色々な国が関係しております。それを総合的に組み合わせて分析していかないとなかなか分からないところもあるのではないかと思っております。色々なところの情報を取り上げると同時に、その辺の設計の全般を見た上で、我々なりの判断を下していかないといけないと思っております。時間がかかるということはひとつご了解頂きたいと思います。それのために我々は全力を尽くしております。

問: バッテリーシステムの組み合わせ実験、再現実験を行いたいと。先程言っていたように色々な国が関係していると思うんですが、どのように。
答: バッテリーの本体がありますので、それを持ってきて接続条件等を変えながら実際に電流を流してみるということが考えられます。

問: 実際、テストフライトも行うんですか。
答: 地上で出来ること、飛ばしてみないと分からないことが出てくればアメリカでやったようにテスト飛行などを検討していくことになります。今後のやり方については、NTSBの委員長とも緊密に連絡を取ろうと思います。

問: 先程配線の話をおっしゃられていたのは、787の配線が通常と異なっていたという理解でよかったですか。
答: そう私は理解していますがなぜかということを調べているわけです。

問: 再現実験もそのような配線にして行うということもあり得るわけですか。
答: あり得ると思います。

問: 今日新たに発表した事実の中で、委員長が最も重要だと考えていらっしゃること、あるいは優先して調査を進めるべきだと思われることはどの部分でしょうか。
答: 煙が出たのは確認されたわけで、それがなぜそういう風になったのかということを理解するのが我々の使命です。今のところ我々が持っている色々な事象あるいは測定データからは、まだ、どうだったかという仮説も出せない段階であるということです。NTSBはいくつか仮説を出していますが、本当にそれでいいのかということも含めて、これから検討しなければならないと思っています。

問: 火が出たと思っていると。
答: 煙が出ました。銅やアルミニウム、真鍮が溶けています。アルミニウムの溶けるのは摂氏660℃です。銅の融点は1,100℃、銅は溶けておりませんでした。真鍮は、約900℃強です。だから相当な高温が出たことは確かであろうと。それに伴って、黒い煙が出たりしており、その辺の経過を掴むことは今ある程度出来てきましたが、しかしなぜそうなったかは分かりません。

問:通常の配線でなかったというのは、ボストンのJAL機の方ではどうだったのかという情報はあるのか。
答:特段入ってきておりません。787型機は、日本の航空会社を含めて、何十機か使っていましたが、今はすべて止まっている。それぞれがどういう配線になっているか、そこを調べる必要があると思います。

問:通常の配線というのは、設計上のということですか。
答:そういうことです。

問:ただ、設計について他の機体は調べたわけではないんですよね。
答:本重大インシデントを起こした機体が、日本に導入されるまでどういうテストを繰り返してきたか、そういうのも含めて調べなければいけないと思っています。
こういう配線になっていたことと今回の煙が出たこととはあまり関連がないと思っています。APUバッテリーから繋がった配線とメインバッテリーにつながるまでは電流の逆流を防止するダイオードが入っていますので、今回の煙が出たことと配線のこととは関連はないと思っています。ただ、関連があると思うのは、DFDRのメインバッテリーの電圧の測定値がですね、ちょうど逆流を防止するダイオードの先にありまして、その先のところまではAPUバッテリーの電圧が来ていますので、計測されたデータには影響があった可能性があるということです。

問: もう一度確認ですけれど、配線の異常とバッテリーの不具合は直接関係ないということですか。
答: 今回のバッテリーの異常と先ほどの配線の異常とは直接は関係ないと思っています。ただ危惧しているのは、似たようなことが他にないのかどうかを確かめなければいけない、そういうことです。

問: 似たようなこととは、他に配線のミスがないということですか。
答: ミスといっていいのかどうか、そこは確認中です。

問: 配線が通常と異なっていたということですか。
答: はい、そのとおりです。

問: これから高松にある機体の配線を調べるということですか。
答: そういうことです。

問: その配線を調べると言うのは、どれ位の重要度があるとお考えですか。
答: 分かりません。

問: ある程度他のものを差し置いてでも配線を見ていかなければいけないというぐらいのものなのか。
答: この機体について調べた結果をもってそういうことがあるとすれば、他にないかどうか、それは確認する必要性はあると思います。
今回の事例で言いますと最終的にDFDRの記録に10ボルトぐらい残っていたわけですけれど、10ボルトの電圧が仮にAPUからのバッテリーの電圧が影響したとすれば、最終的なメインバッテリーの電圧が11ボルトではなかった可能性は当然あると思いますから、そういう観点から調べる必要があります。

問: 9ページのセル5の穴について、対面するセル6のケースを調査予定とあるのですが、これはセル5のケースのセル6側に穴があいている、そして外側から内側にあいたと見られると。
答: そうなんです。隣にあるのがセル6ですから。

問: そこに何らかの異常があったのですか。
答: あるのかどうかということです。

問: 現段階では分かっていないのですか。
答: まだ分かっていません。

問: 当然見ていらっしゃるのでしょう。
答: 穴そのものは、私は見ておりません。

問: セル6側をご覧になって、すぐにこうだと言えるものはありませんか。
答: 言えるものはありません。

問: 明らかに対応する場所に穴はあいていないと。
答: もともとバッテリーのセルの外側というのは、帯電していない、電荷を帯びていないような設計になっています。ところがセル5に対面しているセル6の外側についていうと、中で熱暴走が起きていますので、内部でのエレメントと外側についての絶縁が破壊されていた可能性があります。そうするとセル6の外側が帯電していた可能性があります。そういう観点から調査を進めています。この側壁はステンレス製でした。

問: 前回もおっしゃられているかもしれませんが、結局電気飛行機と言われている複雑な回路を持っていて、今回高松空港でトラブルのあった機体の電気回路を全部調べなければならなくなるかもしれないというところで、そういう電気回路の複雑さというのが大変だと。
答: それはあると思います。例えば、この飛行機ではないけれど、スイス航空で電気発火を起こしたことがあり、あけてみたらもう配線が複雑で分からないことがありました。いわゆる電気飛行機と言われない飛行機でさえもそうなので、これはもっと複雑であります。配線の関係で今一番調査をしなければいけないというのは、DFDRの数字にどう影響しているのかというところを念頭においてやることと思っています。

問: 配線が通常と異なっていたと言うだけでも一般の人間からすると、そういうことがありうるということが分かっただけでも、他にもあるのではないかという疑いを。
答: 実際に、ANAに納入される前に色々なテスト飛行をやっているはずです。そのとき、どういうテスト飛行をやっていたのか、その辺の経緯も調べてみる必要があるということです。

問: 委員長、これは誤配線という言葉を使ってもよいとお考えですか。
答: 分かりません。今のところは何かの必要性があって、それを繋いだはずです。それをたまたま取り忘れたのか、その辺を含めて調べなければいけないと思っています。

問: ボーイング側に通知した後、ボーイング側の説明とか見解とか、何か得たものはあるのですか。
答: 情報は色々頂いてますけれど、ボーイングもきちんと調べていると思います。いずれ答えが頂けるか、もしもらえなければなぜそういう配線になったのかなど、NTSBを通じて要求する必要があるかもしれません。

問: 配線の件も含めて、NTSBは独自の色々な見解を出していますけれども、NTSBからJTSBに対して求められていることであるとか、それからスケジュール的に何かもっと急げとか、向こうの方から要請されることはあるのか。
答: 基本的な態度は一緒に調べようということです。もちろん京都でも、NTSBの調査官が一緒に調べています。ボストンの情報も全部こちらに入ってきます。協力して調べようとする態度を貫きましょうということを、向こうの委員長からも申し出がありました。

問: さきほど、NTSBが仮説を立てている、それが正しいかどうかも調べなければいけないと。それはNTSBのどの部分を指されているのか。
答: 詳しいことはまだ公表されていませんが、月末に何か発表があると聞いています。

問: 前回のNTSBの会見で30日以内に次回の会見を行うと。その段階で何が起きて、それがどういう風にして起こったのかも説明したいという発言でしたが。
答: そうです。

問: 今の状況では今月末ですか。
答: 月末と聞いております。

問: 委員長、改めて確認させて下さい。誤配線の可能性もバッテリー損傷の可能性の一つとして検討して調査をしていると、そういう理解でよろしいですか。
答: 今回の発煙事例とAPUが標準的な仕様の違う配線となっていたことは関係がないと思っています。

問: 正常でない配線があって影響を与えたかもしれない、もちろん分からないですけれど、そういう可能性があるということで調べると。
答: そういうことも頭に置きながら調べなければならないということで、調査範囲が広がったということです。

(カッター(船名なし)転覆事故関連)

問: 浜名湖のカッターの完了報告書の件でですね、勧告内容を反映した内容だが、より一層の安全性向上に努めて欲しいという委員長の話だったんですけれど、報告書の内容を実行する以外にどんなことが具体的に求められるのかということと、県教委と指定管理者双方からカッター訓練事業の再開については何か話は出ているのでしょうか。
答: 今日の資料に、完了報告がついていますけれど、その中でいろんな実施した措置が書かれております。それは我々が出した勧告と密接に結びついています。そういうこと申し上げました。

問: それ以外にこんなことを求めているものはないのですか。
答: 特にそれはありません

問: 再開については、何か聞かれていますか。
答: 何とも申し上げられませんが、向こうが静岡県の教育委員会と話し合って決められることだと思っています。

資料

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