平成24年12月19日(水)14:00~14:17
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、個別の事故調査の進捗状況についてご報告する案件はございませんので、最初に現在の調査の進捗状況を報告し、運輸安全委員会英語版年報2012の発行についてご報告いたします。
はじめに現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。詳細は、資料1をご覧下さい。
続いて、本日、英語版運輸安全委員会年報2012(英語名称:Japan Transport Safety Board Annual Report 2012)を発行し、当委員会の英語版ホームページで公表しましたので、ご紹介します。
本英語版年報つきましては、当委員会の策定している業務改善アクションプランにおいて、海外向け情報発信ツールとして作成を検討しておりましたもので、2008年10月の運輸安全委員会発足以降、初の発行となります。
本英語版年報は、今年8月に発行した日本語版年報を元に英訳したもので、日本語版同様、業務改善アクションプランの策定について、その概要や、航空・鉄道・船舶の事故等の調査状況や公表した報告書の概要、事故統計等を紹介しており、全体約210ページで構成されております。
ご参考に、本英語版年報の表紙及び私の巻頭メッセージの日本語文を抜粋した資料をお配りしております。当該資料には、本英語版年報の公表アドレスも記載しております。
本英語版年報の発行にあたりましては、英語版ホームページでの公表のほか、各種国際会議等を通じて周知を図ってまいります。
なお、英語版年報につきましては、来年以降も引き続き発行を予定しております。
さて、今年はこれで最後の会見となりますので、簡単ですが平成24年を振り返ってみたいと思います。
はじめに、事故等調査の関連ですが、本年の事故等発生件数は、現時点でありますが、航空では18件の事故と9件の重大インシデント、鉄道では20件の事故と5件の重大インシデント、船舶では、東京で取り扱う重大な船舶事故は20件発生しております。過去3年の平均と比べてみますと、3モードとも増加しております。参考ですが平成21年から平成23年までの過去3年の事故とインシデントを合わせた発生件数の平均ですが、航空が24.6件、鉄道が15.6件、船舶が13.3件となっております。
また、24年に発生しました主な事故等を各モード挙げてみますと、航空事故では、6月20日に、全日空機が北京首都国際空港を離陸し、成田国際空港に着陸した際にハードランディングとなり、胴体の上部が変形する事故がありました。また、着陸時に機体が滑走路に接触するという同様な事故が、2月に仙台空港で、3月に東京国際空港で発生しております。
鉄道事故では、9月24日に京浜急行電鉄の追浜駅から京急田浦駅間において、線路内に崩落していた土砂に特急列車が乗り上げ、8両編成のうち3両が脱線し、乗客等55名が負傷する事故がありました。
船舶事故では、9月24日に鹿児島県志布志湾からカナダのバンクーバーへ向けて航行中のパナマ船籍NIKKEI TIGERと、南下中の漁船堀栄丸とが、金華山東方沖において衝突し、漁船乗組員13人が行方不明となる事故がありました。
これらについては、報道で大きく取り上げられたところでもあります。現在、鋭意、調査を進めているところでございます。
次に、本年、公表した報告書は、今月の公表予定がありますので、最終的な数字ではありませんが、11月末までに、航空が21件、鉄道が14件、船舶は東京で扱った重大案件が40件の合計75件であります。そのほか、経過報告を6件公表しております。内訳は、航空が1件、鉄道が1件、船舶が4件となっております。
また、勧告・意見等については、勧告8件、意見5件、安全勧告3件を発出いたしました。なお、意見につきましては、調査途中段階における意見を船舶で2件述べております。
勧告、意見等については、必要な施策又は措置が確実に実施されることにより安全性の向上につながってまいりますので、しっかりフォローアップを取ってまいりたいと思います。勧告等のフォローアップの状況につきましては、見える化しホームページで公表しているところです。
次に、業務改善の関係ですが、ご承知のとおり、福知山事故調査の検証を契機としまして、検証メンバーの皆さまの提言を受けまして、昨年7月、「業務改善有識者会議」を設置し、有識者の皆さまよりご意見を頂きながら、本年3月に組織のミッション及び4つの行動指針並びにこれらを具体化した「業務改善アクションプラン」を決定いたしました。
現在、「適確な事故調査の実施」、「適時適切な情報発信」、「被害者への配慮」、「組織基盤の充実」という4つの行動指針の内容に沿って、分かりやすい報告書の作成、委員長記者会見の実施、メールマガジンやダイジェストの発行、事故被害者情報連絡室の設置、地方版分析集の充実などに取り組んでおります。
運輸安全委員会としましては、業務改善アクションプランを踏まえ、組織一体となって業務の改善を進め、事故の再発防止及び運輸の安全の実現のために努力してまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
私からご説明するものは、以上です。
何か質問等があればお受けします。
(全日本空輸(株)所属ボーイング式737-800型着陸時滑走路逸脱関係)
問: 先日起きた庄内空港でのオーバーランの件ですが、進捗状況はいかがでしょうか。
答: 初動の調査では乗務員及び空港関係者からの口述聴取、それから現場、空港施設及び機体の調査などを行いました。今後の調査予定については、本重大インシデントに関連する気象や機体の整備状況等の情報を収集し、フライト・レコーダーの情報とともに解析を進めていきたいと思っております。また、庄内空港には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、研究用の気象観測用レーダーやライダーを設置していました。レーダーは電波を、ライダーはレーザー光を使って観測するわけですが、その観測データの提供も依頼しようと考えているところであります。現在報告できるのはその程度です。
問: 調査の初動段階だと思いますが、オーバーランは、当初の全日空の公表では、着陸時の速度、着陸した地点、着陸時の角度などは、簡易の記録装置のデータを解析した結果では通常の範囲内だといっています。空港では着陸の前にも除雪をしていて、雪が降っていたけどもそれほど激しく降っていたわけではないということのようですけども、そういう中でオーバーランをしてしまう原因として考えられるのはどのようなことでしょうか。逆にそういう状態でオーバーランをしてしまうと、少しの雪や雨の時には常にオーバーランをする危険性があるということになってしまいかねないと思います。その辺はいかがでしょうか。
答: 大変難しいご質問でありますが、それを現在解析中であります。過去に類似のものがあり、平成15年に2件発生しております。1件目は、平成15年1月に雨の降る成田空港で発生したものでありまして、エアージャパン所属のボーイング式767-300型機が、着陸する際に着陸した場所が大きく前方に伸びて滑走路内に停止することが出来なかったものです。2件目も同じ平成15年2月ですが、雪で覆われた青森空港で発生したものでありまして、日本エアシステム所属のエアバス・インダストリー式A300B4-622R型機が、これも着陸する際に着陸した場所が大きく前方に伸びて滑走路内に停止することが出来なかったものです。今回のは非常に珍しい事故だという風に考えておりますので、どうしてこういうことが起こったか、ご質問の意味はよくわかりますが、現在解析中だということをご了解頂ければと思います。
問: 次回の会見の時にはDFDRの、初期における解析結果などをご提示頂けそうですか。
答: DFDRのデータ等につきましては、提供できるものは提供したいと思いますけれども、最終報告書になるかも知れません。また、機体そのものについては、調査を行いまして、特段の問題は見つからなかったことから、12月12日に一部の機器を除いて機体の保全を解除いたしました。一部の機器というのは、ブレーキのコントロールを行うコンピュータの一つでありまして、Antiskid、それからAutobrake Control Unitでありますが、所定の点検を行って異常はないという結果が出ておりますが、念のため詳細な調査を行いたいと思っております。もちろんDFDRとCVRは両方ともデータを確認しております。内容は既にこちらで保存しております。そういうことで、今後、着陸の状態及び、もちろんなぜオーバーランしたか、二度とこのようなことが起こらないためにはどういう風な改善を施すべきかということについて、調査を進めていきたいと思います。
(旅客船銀河乗揚事故関連)
問: 前回の会見の時に伺った瀬戸内海での事故の件は、その後の状況はいかがでしょうか。
答: 旅客船銀河の乗揚の件ですね。これは現在調査中で、まだ発表できるものは残念ながらありません。ご了解頂きたいと思います。