平成24年6月27日(水)14:00~14:51
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会 委員長の後藤でございます。ただいまより、6月の定例記者会見を始めさせて頂きます。
それでは、本日はお手元の資料にありますように、事故調査の進捗状況として、鉄道、船舶、航空の案件をそれぞれ1件、旅客船第九十八あんえい号旅客負傷事故及び長崎電気軌道株式会社大浦支線における重大インシデントに係る勧告に基づき講じられた措置、業務改善アクションプランの実施状況の順にご報告いたします。
まず最初に、6月4日(月)に発生しましたJR東日本 磐越東線 鉄道重大インシデントについて、調査の状況を、ご報告いたします。資料1をご覧下さい。
本インシデントは、16時58分ごろ、郡山~舞木駅間を約85km/hで走行中に、運転席にあるドア開閉確認用の表示灯が消灯した。運転士が直ちに非常ブレーキを使用して列車を停止させ、停止後、車掌がドアの状況を確認したところ、3両目の右側後ろのドア1箇所が開いていることが分かったものです。
調査は、事故発生の翌日(5日)から8日に亘り、鉄道事故調査官3名を派遣して、事故現場の調査、車両の調査や関係者からの聞き取り調査などを行っています。
これまでの調査で、3両目右側後ドアの制御配線の被覆が摩耗し、内部の導線が露出していることがわかりました。
この事実を含め、予断を持たずに調査を行って参ります。
今後の予定につきましては、事故発生当時の運転状況や車両及び施設調査の深度化を図るとともに、収集した資料の分析を行うこととしております。
次に、昨年7月に発生しました「水上オートバイの噴流等による事故」について、現時点での調査の状況を報告いたします。資料2をご覧下さい。
事故は、平成23年7月に、兵庫県明石市と大阪府泉南市の両箇所において発生しました。それぞれの事故の経過は、ほぼ同じで、水上オートバイが加速又は発進する際、乗船中の同乗者が落水し、ウォータージェット推進装置の噴流等により体腔内に水が入り、内臓を損傷して死傷した可能性があります。
水上オートバイの噴流等による事故は、水上オートバイ利用者にもあまり知られていない事故だと考えております。
現在、調査の取り纏めを行っておりますが、公表まで更に時間を要しますので、マリンレジャーの季節が本格的に始まる前に関係者に情報を周知したほうがよいと判断いたしました。
利用者の皆様におかれましては、これから本格的なシーズンを迎えますので、噴流による事故防止のため、ウォータージェットの噴流付近や高速航行時に落水しないよう、同乗者が手摺等にしっかりつかまっていることを確認し、加速等行うことを同乗者に伝えることなどに注意して、事故を起こさないよう、マリンレジャーを楽しんでいただきたいと思います。
皆様にもご協力頂いて、その点を周知徹底していただきたいので、よろしくお願い致します。
なお、国土交通省海事局に対しても、これらの情報を提供することとしております。
次に、先週の6月20日に発生しました全日空の成田国際空港での事故について、調査の進捗状況をご報告いたします。資料3をご覧下さい。
はじめに1ページ目に概要をまとめております。全日本空輸株式会社所属のボーイング式767-300型JA610Aは、平成24年6月20日、日本時間の午前10時26分、北京首都国際空港を離陸し、13時23分、成田国際空港に着陸した際に、ハードランディングとなりました。
2ページ目ですが、到着後の点検の結果、胴体の一部に変形が認められ、当該損傷の程度が大修理相当であったため、航空事故となりました。
当該機には乗員10名、乗客183名の搭乗者がいました。全日本空輸株式会社によると、客室乗務員4名、乗客5名が軽傷を負ったとのことです。
現在までの調査状況ですが、6月20日及び21日の2日間、航空事故調査官3名を東京国際空港及び成田国際空港に派遣し、初動の調査を実施しました。3ページ目に調査の実施状況をまとめてあります。
調査内容は、初日に機長及び副操縦士の口述聴取を行い、2日目に客室乗務員及び管制官の口述聴取、事故機の損傷調査を行いました。
4ページ目です。また、5ページ目の写真2も合わせてご覧下さい。これまでの調査で判明した主な情報として、主翼前方の胴体上部外板に、長さ約9mにわたり、幅50cmのシワのような変形が2本確認されました。さらに、その変形に伴う亀裂が認められました。写真2の赤丸の部分です。亀裂の主なものとして、約10cmのものが4カ所に見つかっております。その他にも、軽微な亀裂が数カ所ありました。また、内装のパネルが外れた箇所も2カ所ありました。
DFDRから判明した情報をご説明いたします。一番最後のページの付図を参照して下さい。
(1)のポイントで、初めに右主脚が接地しましたが、その後右主脚が浮き上がり、(2)のポイントの前後で前輪から接地し、その後、右主脚、左主脚の順に接地しております。その後、再び前輪が一度浮き上がった後、再び前輪が接地してバウンドが収まっております。
接地時の加速度は、初めに右主脚が接地した(1)のタイミングで約1.6G、(2)のタイミングの右主脚の2回目の接地により約1.7G、最後に前輪が接地した(3)のタイミングに最大の加速度である約1.8Gを記録しています。
4ページ目に戻り、(3)ですが、気象の状況についてです。13時30分における定時飛行場実況気象によると、風向はほぼ南西、平均風速は16ノット、瞬間最大29ノット/最小6ノットでした。右からの強い突風を伴う横風の状況であったと考えられます。
次に、6ページ目の今後の主な調査の予定ですが、DFDRデータ及びCVR音声の詳細調査、損傷部位に関しては明らかになったものの詳細と、その他に損傷した箇所がないか調査を引き続き行う予定です。
これら損傷調査に続き、構造及び運動解析による飛行状況の詳細調査、操縦操作に関する詳細調査、その他、さらに詳しい気象データや管制交信記録などの情報を収集する予定です。
海外の関係国との協力につきましては、機体の設計・製造国として米国の航空事故調査機関(NTSB)から代表の指名がありました。
次に、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させて頂きますが、詳細は資料4をご覧下さい。
次に、勧告に基づく措置の状況について、2件報告がありましたので、ご紹介いたします。
まず、1件目は、平成21年4月30日に沖縄県西表島北東方沖で発生した旅客船第九十八あんえい号の旅客負傷事故です。資料5をご覧下さい。
本件は、旅客28人を乗せ航行中、船体が縦に動揺した際に旅客2人が負傷したもので、船長が大波の接近に直前まで気付かずに航行していたことや、同社が乗組員に対し運航基準等について、適切な安全教育を行っていなかったことが本事故の発生に関与した可能性があると考えられます。
本調査結果につきましては、平成23年3月25日に調査報告書を公表するとともに、船舶所有者である有限会社安栄観光に対し、旅客の安全を確保するために講ずべき措置について勧告し、昨年12月の会見でも紹介しましたとおり、12月1日に、同社から実施計画について報告を受けていたところです。
今般、同社から実施計画に沿った措置の状況として、安全運航等についての安全教育、荒天時安全運航マニュアルの作成と教育、安全運航に関するアンケート等の対策を実施した旨の報告がありました。
これについては、勧告の内容を反映したものとなっておりますが、今後も引き続き、より一層の安全向上に努めていただきたいと思います。
続きまして、2件目は、平成22年10月21日に長崎電気軌道株式会社の大浦支線において発生した鉄道重大インシデントです。資料6をご覧下さい。
本件は、単線区間に対向車が存在しているにもかかわらず、運転士が通票を確認しないまま車両を進入させたことにより発生したもので、関係社員に対する教育の内容や方法及び現場での作業実態の把握が十分でなかったことが本事故の発生に関与した可能性があると考えられます。
本調査結果につきましては、平成23年9月30日に調査報告書を公表するとともに、同社に対して、輸送の安全確保をするために講ずべき措置について勧告し、昨年12月の会見でもご紹介しましたとおり、11月30日に、同社から実施計画について報告を受けていたところです。
今般、同社から実施計画に沿った措置の状況として、作業基準を補足するマニュアルの作成と社員への周知、運転取り扱い変更についての個人教育の実施、車両の有無を確認するための停留所へのモニターの設置などの対策を実施した旨の報告がありました。
これについては、勧告の内容を反映したものとなっております。
今回の報告は、実施計画の一部について実施した中間報告でありますので、あらためて対応が完了した際には、再度、報告を受けることとしておりますので、その際には、あらためてお知らせいたします。
以上、2件についてご報告いたしましたように、原因関係者への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施されるように、私どももしっかりフォローアップしていくこととしています。こうした業務サイクルを経て安全性の向上につながっていくことが重要であると考えております。
今後とも、当委員会としてはこのような取組みを重ねていきたいと思っております。
運輸安全委員会の業務改善アクションプランの実施状況といたしまして、「提言等に係るフォローアップ」につきましてご紹介させていただきます。
「提言等に係るフォローアップ」につきましては、業務改善アクションプランにおいて、勧告、安全勧告、意見に係るフォローアップの状況を可能な限りホームページを用いて紹介し、当委員会の業務サイクルを「見える化」することとしております。
資料7の2ページをご覧下さい。当委員会では、調査結果に基づき、国土交通大臣や原因関係者に対して勧告、国土交通大臣や関係行政機関の長に対して意見、海外の関係機関等に対して安全勧告を発出して、事故等の再発防止並びに被害の軽減のため講じるべき施策又は措置を求めております。
また、意見と安全勧告については、調査の途中段階でも発出することができます。
これらの勧告等に基づく改善が確実に実施されるため、勧告を受けた原因関係者から、まず、勧告を踏まえてどのような改善を実施していくのかについての実施計画の報告を受け、次に、この実施計画に基づき具体的な対応をとった場合に、完了報告を受けるというフォローアップを行っております。
なお、先ほど「勧告に基づき講じられた措置」でご報告したとおり、これらの報告を受けた際には、当委員会で勧告の内容が反映されているかどうかを確認しております。
また、意見及び安全勧告についても、再発防止のためには、その実効性の確保が重要ですので、可能な限り、執った措置によって改善が実施された旨の報告をお願いしております。
以上申し上げましたように、勧告等から改善までの一連の業務のプロセスがわかるよう、一覧表にしてホームページに掲載することとしております。
5ページの一覧表の赤枠部分をご覧下さい。一例として、本日、ご紹介しました「旅客船第九十八あんえい号旅客負傷事故」について、フォローアップの状況をご説明いたします。
左から、事故等発生年月日、件名、報告書、勧告等の提出日と相手方、フォローアップの順に記載しており、フォローアップの欄には、実施計画と実施報告の報告日が記載されています。
≪報告書≫の欄をクリックしますと報告書が、≪勧告等の相手方≫欄をクリックしますと勧告等をした文書が、≪フォローアップ≫欄をクリックしますと、報告された文書等を閲覧できます。
さらに委員会からの情報発信につきましては、報告書の公表のほか、この定例会見においても、調査の進捗状況や事故防止に関する安全情報等を提供しておりますが、調査途中でも有益な情報をタイムリーかつ積極的に提供することとしております。
6ページをご覧下さい。これらの委員会の業務サイクルをまとめたもので、ホームページに掲載することとしております。
以上申し上げましたように、ホームページについては改善に努めておりますが、今後も、さらに見やすいものとするため、皆様のご協力をお願いいたしたいと存じます。
そこで私からお願いがございます。
資料8をご覧下さい。現在、当委員会ではホームページのコンテンツ等を見直すため、ホームページ上で、アンケートを実施しております。
つきましては、ご多忙とは存じますが、今日お集まりの記者の皆様にも、アンケートにご協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
私からご報告するものは、以上です。
何か質問等がございましたらお受けします。
(全日本空輸(株)所属ボーイング767-300型 事故関連)
問: 全日空機の事故の関係ですが、機体にシワのような変形があったということで、こういう現象は珍しかったと聞いていますし、今回DFDRから、一番最後にGがかかったのが、最後に前輪が着いたところだということもあって、この事故はポーポイズ現象というのでしょうか。どの様にお考えか教えて頂ければと思います。
答: まだ分析が始まったところですので確定的なことは申し上げられませんが、ポーポイズというのは学問的な定義がありません。イルカが海面を跳躍する運動に似た現象で、そう呼んでいます。ポーポイズらしき現象が起きていたことは確かです。
問: シワの変形というものはかなり珍しいという話もあります。全日空は初めてだという話だったのですが如何でしょうか。
答: 国内ではあまり聞いたことはありませんが、私どもも類似の事案がないかと言うことで、色々情報を探しているところですが、その中では2009年のアメリカのニューヨークのJFK空港でモロッコ航空の機体が現象として同じような事例がありました。
問: このシワは、最後まで分析されてないということですけども、どうしてこう付いたのかという、見立てとしては如何でしょうか。
答: 前輪が着いて跳ね上がってくると、胴体が多分しなったんじゃないかと思います。ある意味でバックリング(座屈現象)じゃないかと思われますが、その辺の解析はこれからであります。
問: 今回、ポーポイズのような現象が起こって、1.8Gとかいう数値も出ていますけど、これは一般市民の目から見て、非常に危険な状況だったのかどうかということを知りたいのですが。
答: これから解析していきますが、1.8Gとか1.6Gとか出ています。計測器が付いているところは、ほとんど重心位置辺り、真ん中よりの脚の上辺りです。実際に変形した位置はもっと前方になりまして、その辺にどういう力がかかったのかは現時点では分かりません。
問: 機体に大きな損傷を及ぼす手前かどうかというのはまだ分からないということですか。
答: まだそこまで数値的に分析した段階ではありません。
問: アメリカでのモロッコ航空ですけど、それも同じような現象だったのですか。
答: 同じようなシワが胴体の前方に出来ています。
問: 着陸時のポーポイズ現象的なものですか。
答: 同じような損傷のようです。
問: 要するに機体が着陸時に2回バウンドしたことで、1.6G、1.7G、1.8Gの衝撃が3回発生したということですか。
答: 付図のDFDRのデータは垂直方向の加速度を表しております。最初着いたときが1.6G、それから1.7G、1.8G、を示しております。このデータから見ると、3回の衝撃があったように見受けられます。お客様はその時、座席に押しつけられたと思います。
問: この数字がどれくらいの衝撃なのか、通常の着陸の場合は何G位なのでしょうか。
答: 重力が1Gですから、理想的なことを申せば1G近くになります。
問: 平均的というか一般的な着地は何G位でしょうか。
答: なかなかそれは申し上げることは出来ません。先程申しました様に、計測器の付いている位置がほとんど重心付近ですので、実際にお客様がいたところ、あるいは機体が変形を受けたところがどの程度のGを受けたのかということは、解析しないと分かりません。もっと大きなGを受けている可能性もあります。
問: 例えば何G位になるとギアが壊れることが多いとか、1.8Gがどの程度の衝撃なのか知りたいのですが。
答: この辺は保たれるように規定がありますが、かなり強いGまで耐えられる様に脚はできています。
問: 例えば、1.8Gというのは通常よりかなり強い衝撃でしょうか。
答: 通常よりかなり強いと思います。
問: 乗客が、自分の体重が約2倍の重さを感じるくらいの衝撃があったわけでしょうか。
答: 平均してはそう思います。前の方にいた人は、その着地の衝撃と、主脚が降りたときに1.8Gを加えて落ちていくGが加わりますので、もっと大きいGを受けている可能性はあります。
問: 同じ成田空港で、向きも機首も違いますけど、2009年のフェデックスの航空事故が起きましたが如何でしょうか。
答: 似たような現象だと思います。もっと規模は大きい事態でありました。
問: あの事故との類似点とかはどのようにお考えでしょうか。
答: そこまではまだ解析が進んでおりませんし、フェデックスの事故についても現在審議を続けているところで、関連点までは分かりません。共通して言えることは、一つは風が強かったことです。それがどの程度の風なのか、まだ気象データとの対照を行っておりません。また、降りるときに操作に問題があったかどうかというような所を今から解析していくということです。
問: 両方とも共通するポーポイズらしき現象が起きた可能性もあると考えて調べているということですか。
答: ポーポイズの定義にもよりますが、フェデックスも確かに同様の事態で最後に裏返しになりました。
問: DFDRデータで、ロールとピッチがかなり大きく動いていますが問題があったのでしょうか。
答: 風の影響かもしれません。ただ、詳しい風のデータはここでは分かりません。それも含めて、今後の解析の課題であります。
問: 大きく、左右と上下に揺さぶられているということでしょうか。
答: そういうことと思います。一点補足ですけど、バウンドは1回だけです。滑走路に主脚が着地して、バウンドして、1回だけ着地して。それから前脚が上がって降りていきました。
問: つまり、全部の脚が離れている状況が1回ということでしょうか。
答: はい。DFDRのデータをご覧頂くと分かるのですが、付図の一番下のデータが右の主脚が接地したデータを示しています。これを見ると右主脚は、1回接地したあとすぐに浮き上がっています。その間左主脚は浮いています。その直後に前脚が接地しそのまま続いて右主脚、左主脚が接地(全ての脚が接地)しています。さらに前脚のみ1回浮いて接地しています。したがって、全ての脚が離れたという意味ではバウンドは1回でした。
問: ノーズギアがバウンドしたのはいつの時点でしょうか。
答: ノーズギアが最後です。ノーズギアのWOWと書いてありますが、これはウェイト オン ウィール、つまり、車輪に、どれだけウェイトがかかったということです。機体全体が上がってバウンドしたのが1回、両主脚が接地したままノーズが1回バウンドしている、ということです。
問: DFDRのロールアングルの件で、着陸の前に10度くらい傾いていますが、この10度というのは大きいのでしょうか。
答: そうですね。着陸状態ですから、本来水平にして通るべきもので、10度なら大きいと思います。
問: 通常の着陸の時にはあり得ないですか。
答: 風があるとか、何かの影響がない限り無いと思います。
問: 全日空によると乗客5人と客室乗務員4人が軽傷という風に書いてありますが、全日空の話では、怪我人は客室乗務員だけと発表されていますが、如何ですか。
答: 我々も全日空からの情報なのですが、この資料を作成したときに、全日空から聞いたときはこういうことであったということです。乗客の方については、後日不調の申し出があったと聞いております。
問: 最初にメインギアの右側が着いた時が、1.6Gということですよね。(2)、(3)はどの段階でしょうか。
答: (2)はノーズギアが1回目に接地したときです。ノーズギア自体も1回跳ね上がっています。1回跳ね上がって戻ったときが(3)ということです。
問: これは、重心の辺りのセンサーによるものということでしょうか。ノーズの付近にもセンサーはあるのでしょうか。
答: 機体前方にはありません。
問: 機体全体の衝撃はわかるのでしょうか。
答: 機体の運動を仮定しながら、どの程度のGが加わったか推算していくこととなります。
問: 羽田で何年か前にあったもので、タイヤが破裂したケースがあったと思いますが、当時の事故と比べて如何ですか。
答: 当時の事案は今回より遙かに大きいです。3G位です。1.8G自体はいわゆるハードランディングではそんなに大きいGではなくて、1.8Gは念のために構造検査しようかというものですが、フェデックスとかも先程言われた羽田の事案も3Gを超えるGがかかっています。ただその3Gも羽田の報告書でも重心位置でのGです。ですから、今回の事案は計算してみないと分かりません。
問: それは計算で出すことは可能なのでしょうか。
答: 推算してみたいと思いますが、構造が、弾性振動なら比較的簡単ですが、シワがよっていますので多分座屈が起こっている可能性があります。そうなりますと、その辺がどういう力を受けたか非常に複雑になりますので、正しい推測が出来るかどうかは、それは分かりません。
問: 座屈という状況をもう少し詳しく教えてください。
答: 棒を曲げますとボキッとどこかで折れたり、しなったりします。また、棒を圧縮していくとぐにゃっと曲がります。そういうのが座屈です。
問: Vの字のようになるわけでしょうか。
答: 今回損傷を受けたのは圧縮側の、座屈による可能性が高いと思います。
問: Vの字にしなったのは、バウンドの影響でなったということでしょうか。
答: そう思います。普通外板は引っ張る力を受けている訳ですが、シワが寄るということは圧縮の力が働いたと、まだ調べている段階ですが、構造部材の影響を受けている場合もあると思いますが、相当の力を受けたことは確かです。その辺はどういう力がどういうふうにかかったのかこれから確認していきます。
問: 変形の程度と、Gの数値が一致しないように思えるのですが、1.8Gですとハードランディングとしてはそれほどの強いものではないということですが、3Gを超えているケースがある中で、1.8Gでそこまでしなるような形で曲がるということが分からないのですが如何でしょうか。
答: つまり、重心付近に計測器があるわけです。この場所は上下によるGが加わるだけですが、前方や後方の場合は、曲げる力がかかっております。それがどの程度であったかというのが、まあ座屈を起こすくらいですから相当掛かったに違いないと思いますが、そこまでまだ、数値的には判明できていないということです。
問: ギアの方に損傷があったわけではないのにでしょうか。
答: ギアも調べてみないと分かりません。動けない程度ではありませんでしたが、詳しく調べてみれば損傷があるかもしれません。その調査はこれから行います。
問: ポーポイズみたいな現象になったから、胴体が損傷したということでしょうか。
答: おそらくそうだと思います。飛行機の胴体は、結構柔らかいです。そんなに固いものじゃないです。
問: 胴体の、シワがよった、損傷した部分なのですけども、何Gぐらいまでは我慢できるのでしょうか。
答: 胴体の強度自体はGで計算するわけではなくて、応力というもので計算しているわけです。それで、構造強度を計算しなくてはいけないのですが、今回は、測定されたGから、前脚、両主脚にどれくらいの力が加わったかを計算して、それで今度は胴体全体をどのような曲げモーメントが加わったか、曲げモーメントによってその構造部材にどういうよう応力がかかったかで判定していきますので、Gはひとつの目安であります。
問: 調べて見ると、構造上、応力の限界にどれくらい迫ったのか、また充分な余裕があったのかというのがわかるのでしょうか。
答: 座屈らしきものが起きていますので設計荷重以上に力がかかったのではないかと考えます。
問: N1とはエンジンのことでしょうか。
答: N1はエンジンの回転数を表しています。
問: 着陸した後回転数が上がっているのは、ふかしている状態になると思うのですが、これは操作上なんか不可解であるとかそういうことではないのでしょうか。
答: これは停止するためのリバーサーがかかったものだと思います。不可解な現象ではありません。
(水上オートバイの事故防止関連)
問: 水上オートバイの事故ですが、噴流の水が口から入るということでしょうか。
答: いいえ、今回の事故は下半身です。落ちた方向によりますが、この場合は、臀部に噴流が当たって体内に入ったということです。
問: それで、体腔内が損傷したということでしょうか。
答: そういうことです。
問: こういった事例が立て続けに起きていますが、他に確認されているのでしょうか。
答: あまり聞いてはおりません。
問: たまたまこの時は相次いだということでしょうか。
答: そうです。ですから落水しないよう充分気をつけて頂きたいと思います。
問: 艇体そのものないしは説明書の書きぶりとか、そういったところに問題があるということではないという理解でよろしいでしょうか。つまり、艇体の作りに問題があるとか、説明の仕方がまずいとか、この事故固有の話ではなくて、全体的に一般化できるような内容があるのかどうか教えてください。
答: それらも検討の課題に入っていますが、メーカーさんが出しているマニュアルの中には、落水した場合を想定してウェットスーツを必ず着用し、水着では十分に保護できませんと書いてあります。水上オートバイとは、このような構造の乗り物です。
問: ウェットスーツを着用していればまあ基本的には防げるであろうということはいえるのでしょうか。
答: 定かに言えるところではありません。
問: 体腔内に入った水の量と、この2人がウェットスーツを着用していたかどうか教えてください。
答: ウェットスーツは着用しておりませんでした。水の量は分かりません。
問: 通常の水着だったということでしょうか。
答: そう確認しております。
問: どれくらい水が入ると内臓損傷だったり、それがさらに死亡に至ったりということは分かるのでしょうか。
答: 水の量と言うよりは水圧、勢いだと思います。
(東日本旅客鉄道(株)磐越東線車両障害関係)
問: 磐越東線ですが、今日の段階で分かったのは、導線が出ていましたということですが、これが原因で開いてしまったということでしょうか。
答: 接触して漏電し、信号が流れたという、そういうことだろうと思っておりますが、現在解析中です。
問: 同様の列車はたぶん他にも走っているのだろうと思いますが、他で例えばこういう事例があるとか、同じような事例が他でも起きているのでしょうか。
答: 去年の2月に何件か、複数件の今までの事例集を出しております。詳しくは去年の2月にニュースレターという形でドアが開いたインシデントの事例をまとめたものを、発行しております。それはホームページにありますので、それを見て頂けると、今までの事例についてわかると思います。大きく分けると機械的な不具合によるものと、電気的な不具合によるものがあり、機械的というのは締めるボルトが壊れた等の事例を紹介しております。
問:そこで書かれているのを読めばいいのでしょうが、そこで書かれているものと今回の例と関連性はありそうですか。
答: 事象は少し違います。
問: 個別の事案としてこういうことがありましたという方向で理解しておいた方がよいということですか。
答: 電気的な不具合による可能性はかなり高いと思いますが、そういう面で共通性はあるかもしれません。
問: 配線の摩耗や露出によって、同じ様な原因で実は起こりやすいみたいな、過去にもこんなことがありましたみたいな感じとは少し違うのでしょうか。
答: 配線が剥がれて起きた事例というのは過去にもありますが、単独では起きないので、おそらくこれ以外に何らかの原因があると思われますので、それを調査しているということです。
問: 現象としては似ているけども、個別の原因みたいな所はそれぞれやはり異なるのかなと考えているわけですか。
答: 今後の調査が進捗しないと分かりません。
以上