−冬の海難特集−

(貨物船M丸火災事件から)
発生日時、場所 : 11年4月26日14時30分 島根県隠岐諸島東方沖合
気象、潮汐    : 晴、北西風、風力3、波高約1.5メートル
海難の概要
 M丸(18総トン)は、いか一本つり漁業に従事するFRP製漁船で、25日14時頃、船長ほか1人が乗り組み、操業の目的で、鳥取県境港を発し、隠岐諸島東方沖合に向かい、18時30分漁場に至り、パラシュートアンカーを投入して操業を開始した。
 船長は、翌26日05時30分操業を終え、操舵室内の電気ストーブを暖房のため使用し、座椅子に座りテレビを観たのち、06時30分電気ストーブの電源スイッチを切ることを失念したまま、主機を停止し、主機直結発電機停止により船内電源の供給を止めて操舵室後部にある寝台で就寝した。なお、船長が就寝のため立ち上がったとき、固定されないまま使用されていた座椅子の背もたれがストーブ前面近くに移動し、電熱管が座椅子に隠れて見えにくくなっていた。
 ところで、電気ストーブは、操舵室の舵輪下部に船尾を向けて移動しないようひもで固縛し、電源コードのプラグをコンセントに差し込んだまま、同ストーブの電源スイッチで操作していた。
 13時50分起床した船長は、漁場の移動準備のため主機を始動して船内電源を復旧したとき、電気ストーブが入電の状態となったが、そのことに気付かず、14時20分パラシュートアンカー揚収作業のため、操舵室を無人として船首に赴く際、平素は、電源スイッチを切っていたのでストーブは消えているものと思い、ストーブの使用状況を確認しなかった。
こうして、パラシュートアンカーが巻き揚げられ、船体が大きく動揺したため、座椅子がストーブに接触し、過熱され発火するとともにカーペットや塗料に引火して、14時30分操舵室のドアから煙が噴き出した。
 船長及び甲板員は、直ちに粉末消化器で消火活動を行ったが、操舵室内がほぼ全焼した。
海難原因
 本件火災は、漁場で漂泊中、パラシュートアンカーの揚収作業を行うに当たり、操舵室を無人とする際、火気の使用状態の確認が不十分で、船体の動揺に伴い固定されずに置かれていた座椅子が、電源の入ったままの電気ストーブに接触し、過熱・発火したことによって発生したものである。
すべてが人的要因によって発生
 事故原因にどのような要素がからみあって発生したのかを分析することにより、はじめて有効な教訓と対策を打ちだすことができる。

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