東京湾炎上の危機から32年
 海上交通安全法の施行から1年4か月後の昭和49年11月9日,東京湾中ノ瀬航路北口付近で危険物を積載した巨大船第拾雄洋丸(43,723トン)とリベリア船籍の貨物船パシフィック アレス(10,874トン)が衝突,第拾雄洋丸の積荷のナフサに引火して両船が炎上し,多くの乗組員が死亡しました。
 官民が総力を上げて消火活動を行い,パ号は,翌日に鎮火したものの,第拾雄洋丸は,大量の危険物を積載したまま爆発・炎上を続けながら漂流し,横須賀港に接近して沿岸地域への二次災害の危険が発生しました。そのため,第拾雄洋丸は,東京湾外に引き出され,衝突から20日目に水深約6,000mの海底に沈められました。今回は,東京湾における航行安全対策強化の契機となった32年前の大海難を振り返るとともに,最近における航路出入口付近での衝突事例を紹介します。
   
航路内での衝突は減少
 平成8〜17年までの10年間に裁決された海上交通安全法の11航路内で発生した衝突事件は,79件となっており,平成8〜12年までの5年間が46件で,最近の5年間が33件と減少しています。
 航路別では,深夜にラッシュを迎える備讃瀬戸東・南・北航路と来島海峡航路が62件と全体の8割を占めています。
 また,巨大船関連は,浦賀水道航路で操船不適切な外国船に衝突された1件だけとなっています。
南流時の来島海峡航路西口付近
は要注意!
 平成13〜17年の5年間に裁決された航路入出航時の衝突は,13件となっています。
 このうち,来島海峡航路西口付近での衝突が6件(46%)で,南流時に中水道に向かう東行船と西水道を通過した西行船との衝突が目立っています。また,この航路では外国船が関係するものも多くなっています。
 この13件の衝突は,次ページの衝突地点図に両船の航跡を掲載しています。

(注)対象の海難は,航路入出航の際に衝突したもので,「航路内」では入航後5分又は1海里を,「航路外」では出航後15分又は3海里を目安とした。
 
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