平成16年3月,(財)海難審判協会から,『ヒューマンファクター概念に基づく海難・危険情報の調査活用等に関する調査研究』と題する最終報告書が出されました。
 同報告書は,「ヒューマンファクター概念に基づく海難調査手法の開発」及び「インシデント等の危険情報を共有化し,活用するために必要な環境の整備・開発」について調査・研究することを目的に,自動車の安全工学,航空分野のヒューマンファクターの専門家及び海運・漁業界,学界,法曹界の各代表並びに当庁職員を委員として,2年間にわたり審議検討され,今般の取りまとめとなったものです。
 近年では,あらゆる産業分野において,人的要因による事故を防止する手法の一つとしてヒューマンファクター概念に基づく事故調査が行われており,船舶分野においても国内外を問わず,その必要性が認識されています。このため,特に海難調査の中軸をはたす当庁に対して,個々の裁決においては,事故に至った背景の調査に加え,潜在的な不安全な行動・意思決定を特定し,再発防止につながる有効な安全勧告を行うこと,また,過去の裁決からは,同種海難について多角的,かつ深度化した分析・研究を行い,現場の海技従事者等に具体的な対策の提供を行うことが,それぞれ重要であるとして,その取り組むべき課題が提言されています。
 また,当庁は,海難審判法第2条第3項の規定に基づき,重大な海上インシデント(安全・運航阻害事件)の原因究明に当たっていますが,いわゆるヒヤリハットのようなインシデント情報の収集には解決すべき多くの条件があることから,これらの報告制度を確立し,第三者機関に委託して積極的な予防安全に貢献することが望ましいと提言され,具体的な検討事項が掲げられています。
 
 
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