仏国耐空性管理当局に対する安全勧告
(1996.7.19安全勧告)
(B1816 名古屋空港 H6.4.26発生事故)
仏国耐空性管理当局は、エアバス・インダストリー社が以下の事項を行うよう検討を行うこと。
  1. A300−600型機のAFSの機構の改善
    1. APのディスコネクト機能及びオーバーライド機能の改善
       飛行高度及びフライト・フェーズにかかわらず、一定以上の力を操縦輪に加えた場合、安全に対応できるようなAPディスコネクト機能及びマニュアル・オーバーライド機能のあり方について検討を行うこと。
    2. アウト・オブ・トリム防止機能の付加
       操縦輪でピッチ方向のオーバーライド操作を行った場合に、APによりTHSがエレベータの動きと反対方向に動き、異常なアウト・オブ・トリム状態になることを防止できる機能の付加について検討を行うこと。
       その際、アルファ・フロア機能との関連についても検討を行うこと。
    3. THSの作動の警報・認識機能の改善  APのON、OFFにかかわらず、THSがアウト・オブ・トリム状態になった場合、及び、これに接近した場合、若しくは、一定時間以上連続して作動した場合に、操縦士に直接的かつ積極的に当該状況を認識させることができる警報・認識機能のあり方について、検討を行うこと。

  2. A300−600型機のFCOMの記述の改善
    1. APのマニュアル・オーバーライド機能
      1. 本機能の目的
      2. システムの技術的説明
      3. スーパーバイザリー・オーバーライド機能との区別
      4. あり得る状況の例示とそれに対応する確認・操作手順
    2. ゴー・アラウンド・モードの解除
      1. ゴー・アラウンド・モードの解除方法
      2. 他のモードの選択方法
      3. FMA上の表示の変更と実質的機能の変更の対比
    3. アウト・オブ・トリムからの回復操作
      1. あり得る状況の例示と検知方法
      2. APエンゲージ/ディスエンゲージ別の回復操作手順
  3. 運航者に対する技術情報の積極的提供
     事故や重大なインシデントが発生した場合に、速やかに各運航者に対し、それらに係る技術的背景を体系付けて説明するとともに、再発防止のための技術改修の開発、技術通報(SB)の提示、FCOMの改訂等を積極的かつ速やかに行うこと。
仏国耐空性管理当局は、エアバス・インダストリー社と、以下の事項について検討を行うこと。
 緊急時、異常時における操縦士の対応を考慮したAFSの検討
 航空機のAFSは、多くの条件を考慮に入れて設計されており、その機能は複雑なものになっている。したがって、操縦士はAFSの作動状況の把握や、モード変更が飛行に及ぼす影響の予測を的確に行うことが困難な場合がある。
 また、日常の運用の範囲で使用することの少ない機能については、その使用時に的確な対応が取れない可能性もある。特に緊急時・異常時のストレスの高い条件下においては人間の思考力が制限されるため、限られた時間内での対応の困難性は一層増すものと考えられる。これらは通常の教育訓練で対処してゆくにも一定の限界があるものと考えられる。
 したがって、緊急時・異常時における操縦士の対応や人間の認知過程を考慮したAFS(機能、モード表示方式、警報・認識機能)のあり方について検討を行うこと。