JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2022-8
発生年月日 2021年02月08日
事故等種類 衝突
事故等名 貨物船OCEAN ARTEMIS潜水艦そうりゅう衝突
発生場所 高知県土佐清水市足摺岬南南東方沖 足摺岬灯台から真方位163°28.0海里付近
管轄部署 事務局
人の死傷 負傷
船舶種類 貨物船:公用船
総トン数 30000t以上:1600~3000t未満
報告書(PDF) 公表説明資料
公表年月日 2022年08月25日
概要  貨物船OCEAN ARTEMISは、船長ほか20人が乗り組み、岡山県倉敷市水島港に向けて北東進中、また、潜水艦そうりゅうは、艦長含め約90人が乗り組み、船体の全てが海面下に没した状態から潜望鏡等の一部を海面上に露出することのできる深度まで上昇しながら南南東進中、令和3年2月8日10時58分ごろ、高知県土佐清水市足摺岬南南東方沖において、両船が衝突した。
 そうりゅうは、乗組員3人が負傷するとともに右舷潜舵(セイル(艦橋等が設けられた船体上部構造物)の両舷に装備された1枚舵)の曲損等を生じ、OCEAN ARTEMISは、球状船首部右舷外板に亀裂を伴う凹損等を生じた。
原因  本事故は、足摺岬南南東方沖において、OCEAN ARTEMISが北東進中、そうりゅうが全没した状態で潜航中、そうりゅうの艦長及び哨戒長が、パッシブソーナー(ソーナー)で探知した船舶までの距離が十分にあり、露頂(潜望鏡等の一部を水面上に露出して潜航すること)に支障となる船舶はいないと判断し、海面下のそうりゅうに気付かずに航行を続けるOCEAN ARTEMISの針路上の海面に向かって南南東進し露頂作業(露頂深度まで深度変換する作業)を開始したため、そうりゅうがOCEAN ARTEMISに衝突したものと考えられる。
 そうりゅうの艦長及び哨戒長が、ソーナーで探知した船舶までの距離が十分にあり、露頂に支障となる船舶はいないと判断したのは、西南西進していたコンテナ船の方位線(音源からの放射音の方位がソーナー画面に経時的に連続表示されることにより描かれる線)とOCEAN ARTEMISの方位線とが組み合わされた方位線をコンテナ船のみの方位線として評価したことによるものと考えられる。
 そうりゅうの艦長及び哨戒長が、コンテナ船の方位線とOCEAN ARTEMISの方位線とが組み合わされた方位線をコンテナ船のみの方位線として評価したのは、次のことによるものと考えられる。
 (1) OCEAN ARTEMISの方位線とコンテナ船の方位線がほぼ同じ方位となって重なる以前にOCEAN ARTEMISの方位線が探知されておらず、OCEAN ARTEMISの方位線を船舶以外の音源によるものと解釈し船舶として認識していなかったこと。
 (2) コンテナ船の方位線付近の聴音が変化したことの報告を受けておらず、別の船舶の航走音を聴知した可能性に気付くことができなかったこと。
 (3) OCEAN ARTEMISの方位線がコンテナ船の方位線として再び自動探知されたこと。
 そうりゅうのソーナー当直員長が、OCEAN ARTEMISの方位線の探知操作を行わず、また、コンテナ船の方位線付近の聴音が変化したことの報告を行わず、OCEAN ARTEMISの方位線をコンテナ船の方位線として再び自動探知したのは、次の要因が複合して発生したことによるものと考えられる。
 (1) OCEAN ARTEMISの方位線とコンテナ船の方位線がほぼ同じ方位となって重なる以前、OCEAN ARTEMISの方位線付近における映像の感度が高いものではなく、船舶の航走音が聴こえなかったことにより、OCEAN ARTEMISの方位線を船舶によるものとは認識していなかったこと。
 (2) 上記(1)により、OCEAN ARTEMISの方位線とコンテナ船の方位線がほぼ同じ方位となって重なったのち、1隻の船舶の方位線が表示され続けている中、その方位付近にはコンテナ船1隻しかおらず、引き続きコンテナ船の方位線が表示されていると認識していたこと。
 (3) コンテナ船の方位線付近の聴音の変化に気付いた際、上記(2)の認識及び自艦が変針した後であったことから、自艦変針等による対勢の変化でコンテナ船の聴音が変化したと解釈し、緊急性及び重大性のある状況の変化ではないと判定したこと。
 なお、そうりゅうのソーナー当直員長が、OCEAN ARTEMISの方位線の探知操作を行わず、また、探知した船舶の聴音変化の報告を行わなかったことについては、海上自衛隊において、ソーナーにおける方位線の探知操作、及び探知した船舶の聴音の変化を認めた場合における報告の要否が、いずれも個々の隊員の裁量に委ねられていたことが関与した可能性があると考えられる。
死傷者数 負傷:乗組員3人(潜水艦そうりゅう)
勧告・意見 意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。