JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2010-4
発生年月日 2009年01月11日
事故等種類 死傷等
事故等名 旅客船さかもと3旅客負傷
発生場所 岡山県笠岡市真鍋島南西沖 六島灯台から真方位030°4,530m付近
管轄部署 事務局
人の死傷 負傷
船舶種類 旅客船
総トン数 5~20t未満
報告書(PDF) 公表
公表年月日 2010年04月23日
概要  旅客船さかもと3は、船長ほか甲板員1人が乗り組み、旅客28人が乗船し、岡山県笠岡市(かさおかし)真鍋島(まなべしま)から笠岡市六島(むしま)に向けて航行中、平成21年1月11日(日)10時17分ごろ、真鍋島南西沖において船体が縦に動揺した際に旅客2人が重傷を負った。
原因  本事故は、A船が、波高約1mの西南西からの波が連続して発生している真鍋島南西沖を前浦港に向けて航行中、右舷前方から波を受けながら針路約210°、機関回転数約1,500rpmを保持していたため、本件大波に遭遇して船首が波の頂きを越えて波間に落ち、それまでの縦の動揺に比べて船体が、さらに大きく縦に動揺した際、前部客室の右舷側最前部に座っていた旅客2人が慣性によりいすから浮いて離れた後、いすに自由落下した衝撃で腰椎を圧迫骨折したことにより発生したものと考えられる。
 A船が右舷前方からの波を受けながら針路約210°、機関回転数約1,500rpmを保持していたのは、船長Aが、この針路及び機関回転数に定めた際に波高約1.0mの西南西からの波を右舷前方に受けるようになり、船体が縦に動揺し始めたが、大きく縦に動揺することはないと思い込んだことによるものと考えられる。
 A船が本件大波に遭遇したのは、波高約1.0mの波が連続して発生している海域を航行していたが、この海域では波高約1.0m以上の本件大波を含む波が一定の割合で発生していたことによる可能性があると考えられる。
 船長Aは、復路は往路に比較して機関回転数を100rpm下げて航行したが、船体が縦に動揺し始めた際、動揺を低減することができる機関回転数又は針路を選択していれば、本事故の発生を防止できた可能性があると考えられる。
 船長A及び甲板員Aは、旅客に対し、縦に動揺する度合いが少ない前部客室の後方又は中央部客室及び後部客室への移動を促すアナウンスを行うことにより、旅客の負傷リスクを低減することができた可能性があると考えられる。
 また、前部客室に、座席から天井まで届く手すりが装備されていれば、旅客がいすから浮いた際に、手すりにつかまることにより身体を支え、負傷リスクを低減することができた可能性があると考えられる。
 B社は、A社の旅客船を20年以上用船しており、A社が本件航路の航行経験が豊富でその間に事故がなかったことから、今回の用船に際しても、これまでと同様に運航基準を変更しなかった。しかしながら、A船を荒天による欠航が発生する傾向がある1月に用船したのは、初めてのことであり、大きさの異なるA船を1月に用船する際に安全管理規程を見直さなかったことが、事故の発生に関与した可能性があると考えられる。
死傷者数 負傷:旅客2人
勧告・意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。